12月の頭ですが、DALFというフランス語の検定試験のC1という級を受けて来ました。受けようと思い本を買ったのが2年前、レッスンを受け始めたのが1年前と、かなりだらだら準備してしまいましたが、よし受けるぞ、と本気で決めてからは1ヶ月半ほどでなんとか合格までたどり着くことができました。
今回は、試験を振り返りつつ、DALF C1の勉強法などをまとめてみたいと思います。
前置きですが、こちらは全て私がベルギーで受けたレッスンのまとめですので、必ずしも世界中で通用するかどうかというところまでは責任を持てません。また、DALF公式の採点基準などは非公開になっているので、これらが必ず高得点につながる方法かということも実際はわかりませんのでご了承ください。
まず、DALF C1を取得するには、4つのカテゴリーに分かれた試験を受ける必要があります。このあたりの情報は調べると他のサイトに書いてあると思うので、割愛します。今回はこれらの試験の中でも特に難易度が高いと言われる production orale (以下 exposé) と production écrite のコツについてお話ししたいと思います。
まず、合格への1番の近道は、良い先生を探すことです。DALFは独学で挑戦することも不可能ではないと思いますが、良い先生に習うことが何よりもの近道だと思います。
まず、その先生がネイティブであることは大前提です。ただし、ネイティブであれば誰もがフランス語をきちんと話せる訳ではないので、その中でもきちんと信頼できる人を選びます。
ここで注意したいのは、添削とはただ綴りの間違いを直したり、文法ミスを指摘したりしてもらうことではないということです。よって、格安の文章添削システムやlang-8などの添削サイトはあまり使えません。もちろんミスをなくすのも大切ですが、何よりも大事なのは、作文の書き方や構成の作り方、現地の人の考え方、意見の述べ方などを習うことです。自分の作文のどこが文法的に間違っているかではなく、どうしたらより完成されたフランス語の作文に近づくか、を指摘してもらったり、アドバイスしてもらうことが大切です。
もうひとつ大切なのは、先生の一般常識の知識です。DALFではひとつの社会問題に対して意見を述べることを求められるのですが、私たち日本人とは違う世界に生きているヨーロッパ人の一般的な考え方を、先生が説明できる必要があります。日本の小論文では誰も気に留めないような発言が、ヨーロッパではタブーになっていたりします。その辺りの知識がない先生だと、考察に深みのある作文を学ぶことができません。
この試験で求められるのは、完璧なフランス語運用能力ではなく、フランス語を使って、自分の意見を正しい方法で論理的に述べる能力です。
文法ミスを指摘してくれる先生ではなくて、作文の書き方を教えてくれる先生を選ぶことがまず重要です。
まずは、Ecrite と orale どちらにも共通して言えるポイントから、まとめていきます。
Production orale et production écrite
・形式を守る
DALFでは、どの場合においても、introduction-corps-conclusion の三部形式を求められます。
Introductionでは、テーマをはっきり述べたり、具体的な問題をあげたり、それに対する自分の意見を簡単に述べたりします。
Corpsでは、何故そう思うのか、どんな具体例が挙げられるのか、もしくはそれぞれの良い点悪い点をあげたり、アンチテーゼを展開したりします。
Conclusionで結論をまとめます。
また、Corpsの中ではPremièrement, deuxièmement や d'abord, ensuite などの言葉を使って細かく段落を分け、形式を作っていきます。
これらは日本の小論文とあまり変わらないと思いますが、自分の考えをまとめることに必死になっていると忘れがちです。exposéの場合もdissertationの場合も、形式をきちんとまとめることは採点の大きな基準となるので、絶対に守るようにします。
・タイトルにしっかり目を通す
文章を読んで行けば、その記事が何について話しているのかは大体わかると思いますが、結局何が言いたいのかという1番大切な部分はタイトルに書いてあることが多いです。例えば、同じ捕鯨について話している記事でも、タイトルが「捕鯨をやめるべきか?」なのと「どうしたら捕鯨はやめられるか?」では書くべき内容が違ってきます。またexpression écriteでは何について論ずるべきか指定されるので、そういうところのチェックを忘れずにするようにします。
・出典に目を通す
特にexposéやdissertationのときは、文章を手短にまとめることがあると思います。その時は、必ず出典を明記します。D'après やselon を使って、人物名や新聞名、雑誌名を明記すると、ポイントupです。
・自分の意見(=考え方)を無闇に述べたり、自分の経験を例えに出さない
ここが、日本語の小論文と大きく異なる点だと思います。フランス語の小論文では、自分の意見を前面に出すことを嫌います。あくまで客観的に事実を述べて、そこからこう考えるのが妥当ではないかと結論づけることを求められているのです。日本人は特に自分の意見を言うのが苦手なため、小論文では自分の意見(=自分の思いや考え方)をはっきり書くように習ってきたと思います。ですが、その書き方だと絶対に主張が強すぎると言われてしまいます。自分がどう考えるかは具体的に述べずに、客観的に事実を述べていきます。
私はこれこれはこうだと思います、なぜなら…✖️
こういうことが起きているので、こう考えるのが自然だと思います ○
具体例を出す場合は、自分の経験ではなく、誰もが周知の事実を述べるほうが良いとされます。例えば「私の両親は離婚しましたが今でも連絡を取り合っています」と書くのではなく、「世の中には離婚しても頻繁に連絡を取り合う夫婦もいます」という書き方に改めます。
Dissertationの第2段落においてひとつ有効なテクニックに、主語をje ではなくnousにする、というものがあります。
Je pense que = Nous pourrons dire que
J'ai déjà entendu que = Nous pouvons remarquer que
のように、主語をnousにして一般的な話を客観的に書いていくと、論文の信憑性が高まると言われます。
・テーマについて
出題されるテーマですが、いくつか問題集などをやっていると、ある程度傾向が見えてくると思います。(私は人文科学選択だったので、そちらのお話しかできません…)
私の経験上、最頻出のテーマはnumériqueです。実際、今回の試験でも出題されました。numériqueが今後の教育、読者層にどのような影響を与えるか。世界から紙の本は消えるのか、ジャーナリストの地位は下がるのか。また転じてréseaux sociaux も多く出されると思います。この辺りはざっと自分の考えをまとめておくと、いつ出題されても安心して答えることができます。
次に多かったのは、教育についてです。教育の平等や男女共学について、先生と生徒の関係について、道徳の授業の有無について、多言語習得についてetc。この辺りは母国との比較が効果的になることもあるので、日本の教育の現場を知っておくことも大切です。
3番目に多いのは、環境問題です。私が今回受けた試験で出たのは、都市部における農作についてでしたが、他にも捕鯨の話やエネルギーに関する話などは出てもおかしくないと思います。
反対に、絶対に出ないであろうテーマもいくつか挙げることができます。例えば、外国人向けの試験なので、移民問題などは絶対に出題されません。ポジティブな側面の話であったとしても、レイシスト、宗教や政治に関わる話も出題されることはないでしょう。
また、私の問題集にはフランスの歴史に熟知していないと答えられないような問題もいくつか見られましたが、本番ではそのようなことが起きないよう配慮して文章を選んでいるように思いました。例えば、問題集にはMai68(1968年にフランスで起きた学生運動)やbeur(アラブ人を指す隠語)などを知らないと解けないような問題が多くありましたが、本番ではそのような単語は見られなかったり、注釈がつけられていました。
ここからは、それぞれの書き方について詳しくまとめてみたいと思います。
Production écrite
Synthèse
synthèseは日本語にすると記事の要約のことで、当たり前ですが自分の考えなどは盛り込んではいけません。また、元の文章と全く同じフレーズを書いてもいけません。これは、幾らかの単語を別の単語に置き換えたり、幾つかの文章をひとつにまとめたりすることによって避けることができます。
Synthèseのやり方はいくつかあると思いますが、ここでは私のやり方を紹介したいと思います。
私は必ず直接書かずに、以下のような下書きをしてからまとめていました。下書きは確かに時間を取られますが、全体の構成をバランスよくまとめるためには欠かせない大事な部分だと思います。
①まず記事を読んで、ひと段落あたり一文を目安に、短くまとめます。この時点で、なるべく元の文章と同じにならないように、単語や文章に変化を与えておきます。記事は複数ありますが、全て一度に行います。複数の記事にまたがって全く同じ内容がある場合は二つ目以降を省略します。
②全ての記事に通し番号をふります。
③synthèseの中にどう組み込んだら流れが良くなるかを考えていきます。三部形式や第2段落もいくつかに分けられるような構成でまとめられることを意識しながら、通し番号を振ったこれらの文章を書く順番を決めます。
④順番が決まり、構成ができたところで、文章が自然になるように接続語を足したり、言葉を補ったりします。
⑤文字数を数え、多ければいらない単語を削り、少なければ足していきます。(足すのも引くのも、副詞から始めるのが良いです。vraiment, effectivementなどはあってもなくても意味が変わらないので。その次に調節しやすいのは、出典です。研究者の名前や肩書きを長くしたり短くしたりで調節します。20字以上誤差がある場合は文章単位で調節します。)
⑥最後にもう一度読み返して、自然な文章かチェックします。
(特に同じ言葉が繰り返されてないか、接続語は正しいか等をよく見ます。)
ここまでを1時間以内で仕上げるのが理想です。その後、15分で書き写し(清書)できると、余裕を持って仕上げることができます。
参考画像です…汚いし間違いだらけですが
字の数え方ですが、10字ごとに鉛筆で小さく数を書きながら数えていくのがオススメです。文字のカウントの仕方にも決まりがあるのですが、公式に発表されているのでここでは省略します。
Dissertation
次に、Dissertationのお話です。
次に、Dissertationのお話です。
流れとしては、
①構想を決めます。下書きの紙に、三部形式を意識しながら大まかな流れや大体何を書くかをまとめます。
②実際に書いていきます。
③文字数を数えて調節します。
④自然な文章かチェックします。
ここまでが1時間でできると、清書に15分、余裕を持って終えることができます。
Dissertationでは特に、上記にあげた、自分の意見を前面に押し出さないことを意識します。
構想
①テーマの提示
②記事の要約(selon〜などと出典を明記して始め、一文以内に収める)
③自分の意見 (je suis pour /je suis contre etc)
の3つを入れるようにしています。
Corpsではpremièrement, deuxièmement を使いながら、客観的に事柄を述べていきます。アンチテーゼもかならず述べます。
Conclusionは簡単な結論なので、私はいつも下記のようにまとめていました。
D'après ces (数) points mentionnés ci-dessus, nous pourrons conclure que 〜
またdissertation では Mise en page がとても大切になって来ます。DALFでは、インターネットサイトへの投稿だったり、何か団体へのメッセージだったり、講演会の準備だったりと、どのような立場から意見を述べるのか指定されるので、それを守ることがとても重要です。特に注意したいのは、手紙を書くという指示があったときです。丁寧な手紙の場合はMadame, Monsieur で始めて、l'expression de mes sentiments distingués で終わらなければならないなどと細かい決まりがあるので、そちらもきちんと調べておく必要があります。
また稀に、pour か contre どちらの視点から書かなければならないか指定されていることもあります
Production orale
préparation
préparation
次に production orale のポイントについてまとめていきたいと思います。まず、準備段階のお話です。注意事項はほとんどdissertation と同じです。
・両方の記事のタイトルをよく見る
何について語るべきなのをかをしっかり読み取るためです。記事から大まかなテーマを読み取ることも大事ですが、タイトルには1番大切なテーマが提示されており、それを見逃してはいけません。
何について語るべきなのをかをしっかり読み取るためです。記事から大まかなテーマを読み取ることも大事ですが、タイトルには1番大切なテーマが提示されており、それを見逃してはいけません。
・出典を見る
Exposéの途中で出典や記事の内容を語る人物を交えると、情報に関する信憑性が増します。必ず〜の記事によると〜、〜大学教授の〜さんの話によると〜などと出典をはっきり述べましょう。
・必ず三部形式で
Production écriteの時と同じように、必ずintroduction-corps-conclusionの三部形式でまとめます。
Introduction
①何について話すのか②テキストには何が書いてあったのか③それについて自分は一言でどう思うか、の3点を必ず伝えます。例えば、
①Je vais vous parler de~
②D'après ces textes, ~
③Personnellement, je suis tout à fait (d'accord / contre)...
のような感じです。
Corps
Exposéでは長い間話さなければならないので、自分の体験談などを入れても良いと思います。なるべく多くの例を交えて話します。
Conclusion
Dissertationの時と同様に、以下の方法でまとめます。
D'après ces points-là, vais conclure que ~
さて、ここまではdissertationと大体同じ方法でしたが、exposéの準備に当たってひとつ注意することがあります。それは、準備のメモに長い文章を書かないということです。
準備のメモには、自分が伝えたい内容を思い出せるだけの最低限の言葉を書いておきます。Exposé本番で、自分が周到に用意した文章を丸読みすることは減点対象です。あくまでどんな流れにするか、何について話すかを決めて、それを思い出すための『地図』であって、決して『台本』であってはなりません。
メモはなるべく短く、簡潔に、できれば単語で済ませます。長ければ長いほど、本番で読むのに時間を取られ、混乱します。
これでもまだメモが長いです…
これでもまだメモが長いです…
次に、実際に話す時の注意です。
・まず、なるべく審査員の目を見て話すようにします。メモは忘れた時や、流れを確認するためだけに見るようにします。あくまで、文章を作るのはその場の自分です。その場で思いついた体験談や、付け足したいと思ったことは、迷わずに言ってしまって良いと思います。
・学校で何度かした経験からもわかるのですがexposéの当日はきれい目な格好で行きます。身だしなみを整えていくのは、点数に直接関係ないかもしれませんが、礼儀としてとても大切です。審査員の印象をよくするためにも、少しおしゃれをして行きましょう。
・身振り手振りを交えて話します。まるで講演会をするように、遠いところにいる人に話すようにせず、今目の前にいる審査員に訴えかけるように、おしゃべりをしているかのように話しましょう。たとえば、途中で Vous voyez, と相槌を求めるのもひとつのテクニックです。あなたに話してますよアピールできます。
・もし途中で言葉に詰まったら、Attendez... や comment dire... などと間を取っても大丈夫です。
・言葉遣いは、そんなに気にしなくても普段通りで大丈夫です。たとえば私は普段ほとんどneを入れて話さないのですが、無理に入れてぎこちなくなるよりは、いつも通り省略して自然体で話す方が良いと思われます。ですが、もちろんtuで話してはいけませんし、gros mots も反射的に言わないように気をつけます。間違えたり、うまくいかなかったときは、punaise やpurée はもちろん、zutなども避けて、attendez や euh… などで代用します。
・質疑応答などで、質問の意味がわからなかったり、知らない単語があったりしても、焦らずに聞き返します。そこで止まってしまうと減点されてしまうので、会話のキャッチボールを目標に、落ち着いて対応します。
・とにかく笑顔で、感じ良く、落ち着いて、を心がけます。
試験を終えて
試験を終えてみて、始めに思ったのは「もう2度と受けたくない」でした(笑) 何時間もの集中力を求められ、おまけに室内が暑くて喉は渇くし、水飲めばトイレに行きたくなるし…と悪循環で、終わったときはヘトヘトで、これでたとえ受かってなくても2度とC1は受けないぞと誓いましたw
C1は仏仏辞書が持ち込めるという話も出ており、私も持参していたのですが、結局使わせてもらえませんでした。幸い試験そのものはそんなに難しくなかったと感じたので、必要なかったし、たとえ使えたとしても引く時間はなかっただろうと思いました。
準備に私はこちらの本を使って勉強したのですが、こちらの本が難し目に設定されていたためか、試験はかなり簡単に感じました。
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余談なのですが、こちらの本も持っていたのですが、練習問題が試験の形式に即しておらず、使いにくい印象を受けました。出版年も古いので、上記の本をお勧めします。
https://www.amazon.fr/Nouveau-DALF-C1-1CD-audio/dp/2090352337/ref=sr_1_5?ie=UTF8&qid=1487286881&sr=8-5&keywords=dalf
試験本番では、文章題は答えやすい質問が多く、選択問題も"複数回答あり"のものがなくて、かなり助かりました。また答えをjustifierする問題も、全て抜き出しでOKだったので、時間にも余裕がありました。
https://www.amazon.fr/ABC-DALF-Niveaux-C1-Livre/dp/2090381795/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1487286881&sr=8-1&keywords=dalf
余談なのですが、こちらの本も持っていたのですが、練習問題が試験の形式に即しておらず、使いにくい印象を受けました。出版年も古いので、上記の本をお勧めします。
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試験本番では、文章題は答えやすい質問が多く、選択問題も"複数回答あり"のものがなくて、かなり助かりました。また答えをjustifierする問題も、全て抜き出しでOKだったので、時間にも余裕がありました。
Exposéの準備時間は1時間のはずだったのですが、部屋に入ってから数えたら1時間ほどありましたが、問題を受け取ってからは45分しかなかったような気がしました。また、30分のexposéだったはずなのですが、気づいたら40分以上話していました。この辺りは会場によって曖昧なのかもしれません。
Exposéのテーマはくじ引きで引いた2つの中から、さらに自分で選ぶことができました。
結果は点数がでているだけで講評がなく、どこが良くてどこが悪かったのかは全くわかりませんでした。ぜひこの記事を読んで、自分の時はこうだった、自分はこう勉強した、これはやらない方が良いと思う、などありましたら、コメントやメールなどいただけたら嬉しいです。
長くなってしまいましたが、いつかDALFを受ける方の参考になれば嬉しいです。
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