彼女が発したとは思えない単語に一瞬思考が止まるが、すぐさま己の勘違いに気付き一人納得する。
「…ああ、AV機器のこと?持って帰るのは大変だからここで見たらいいよ」
すると今度は彼女の動きが何故か固まる。
「ほぇ・・?・・・ち、違いますっ!・・・はっ、もしかして敦賀さんわざとそんな事言って…っ」
こんなに恥ずかしい思いをして言ったのに!とテーブルに突っ伏す彼女。
「・・・・・・」
再度フリーズした。
機器の方でないとなると、彼女が貸してくれと言うのはやはり俺が初めに浮かんだアレで…
・・・・ん?
——ちょっと待て。
「最上さん。君は俺がAVを持ってるとでも?」
そして夜毎それを頼りに一人己を慰める行為に耽っているとでも?
想像しただけで侮辱されたに近い気分になった。
俺の感情の起伏に敏い彼女は「ひぃっ」と小さく悲鳴を上げるがもう遅い。
「お、男の人なら誰でも持ってるってモー子さんが…っ」
「馬鹿馬鹿しい。あんなわざとらしい演技を見て悦ぶ奴は童貞だけだ」
演じる側の人間から見れば——否、一般人でも気付くだろう——女優のフリなんて白々しいほどわかる。
アメリカで一度見た事があるが、女優のただ出しているだけの喘ぎ声とあからさまに見せつけてくる部位にうんざりして逆に萎えた。
あの映像でどう興奮するのかわからない。
あんなモノに頼るくらいなら、行きずりの女とした方がマシだ。
それに頼らなくても一人で吐き出すことくらい出来る。
不快感と一緒に言い捨てると、彼女はようやく自分の得た情報が間違っていることに気付いたらしい。
「も、申し訳ございません!敦賀さんともあろう御方があんなモノを所持していると思うなんてどうかしておりましたっ!!今の戯言は忘れて下さい!!」
平伏する彼女に、誤解が解けたらそれでいい俺は深く息を吸い気分を落ち着かせる。
こんな話はさっさと終わらせようと彼女にも優しく声を掛けようとして…
はたとまた止まる。
——待て。
そもそも何故彼女はAVを必要としている?
思考を巡らせ、ある可能性に辿り着いた。
「最上さん」
「はっ、はい!ごめんなさい!」
「いや、その話はもういい。ねぇ…もしかして今撮影中の映画でベッドシーンでもある?」
「…っ、はい…そうなんです。それで、参考になればと思って…」
ハリウッドの恋愛映画も見たけれど、ベッドシーンに時間をそう長くは割いていないのでよくわからなかったらしい。
そもそも行為自体をよく知らない彼女は、フリですら演じることが出来ない。
「それでAVね……」
はぁ…と盛大な溜息をつきながらソファ深く沈み込んでしまった。
(複雑…)
今の顔を見られたくなくて、右腕を眼の上に置き表情を読まれないようにする。
彼女ももう二十歳になった。
最近色んな役どころのオファーが舞い込んできていて先輩としては可愛い後輩の活躍が嬉しく思う。
ベッドシーンも女優をしていればいつかはあるだろうと思っていたし、あったところでたかだか演技、そのシーン自体をとやかく言うような狭い男にはなりたくない。
だが彼女が自分以外の男に肌を見せるだけでなく触れられるということがたまらなく嫌だと思う自分も正直いて…けれど彼女の仕事に文句を言う権利など誰にもない。
まして自分はその身勝手な胸の内を彼女に伝える権利もない。
俺と彼女はあくまで先輩後輩で、それ以外の関係は何もない。
せめて今回、一番に俺に相談してきてくれたことに安堵した。
喜びよりむしろ安心の方が大きい。
先輩として彼女が仕事のことで最初に相談する相手は俺でい続けたかった。
他の男に相談することだけは許せない。
何故なら——
ソファの背凭れから上半身を起こし床に正座している彼女を膝に頬杖をつきながら上から覗き込む。
「最上さん。こういうのは結局知識だけあっても演じることは出来ないだろうね。だって君には想像つかないだろう?天国が見えるほどの快楽、とか」
「で、でも、どんな役でも知らないから出来ないとは言えないんです」
「うん、そうだね。だから…実技で教えてあげようか?」
「…えっ」
「巧く教えてあげられると思うよ。もっとも、君が結婚するまで純潔を守るだとか恋人でもない男と寝るなんて、と思うなら止めた方がいいけどね」
そう、俺が最初に聞いて良かった。
彼女の悩みは自分で体験すれば何ら問題なくクリアになるからだ。
他の男ならすぐさま上にのし掛かられていただろう。
彼女は男にこんな相談をすることが如何に自分の身を危うくさせているかまるでわかっていない。
——他には相談させない。
俺以外の男に教わろうとするくらいなら俺が教える。
例え彼女を知ることで一層手離したくない欲望に苦悩するのだとしても。
それに俺は、この話に彼女は乗らないだろうと頭の隅で高を括っていた。
唇を合わせる行為とはレベルが違う。
結構です!と引いて逃げると…予測していたのに。
彼女はいつも俺の予想を超える。
—————
今回、会社の男性陣がAVへの持論を熱く語ってて(そしてそれに嬉々として混ざるオヤジ社員ハヅキ)、それを話にしたらこんなモノが…。
社会人になりある程度金を持つと、AVなんて見向きもせず店に豪遊傾向にあるようです(ちなみに会社のとある男性陣は水曜か金曜が店通いの日)
しかし、店に行く敦賀氏は色んな面から考えられないのでそこは不採用(^_^;)
敦賀氏としては店に行かなくても生身の女に困らないだろうし…あら、となると敦賀氏の発言は単なるモテ男の傲慢発言になっちゃうのかしら(笑)
…しかしこのネタ、【共犯】の設定で使えばよかったと今更後悔orz
「…ああ、AV機器のこと?持って帰るのは大変だからここで見たらいいよ」
すると今度は彼女の動きが何故か固まる。
「ほぇ・・?・・・ち、違いますっ!・・・はっ、もしかして敦賀さんわざとそんな事言って…っ」
こんなに恥ずかしい思いをして言ったのに!とテーブルに突っ伏す彼女。
「・・・・・・」
再度フリーズした。
機器の方でないとなると、彼女が貸してくれと言うのはやはり俺が初めに浮かんだアレで…
・・・・ん?
——ちょっと待て。
「最上さん。君は俺がAVを持ってるとでも?」
そして夜毎それを頼りに一人己を慰める行為に耽っているとでも?
想像しただけで侮辱されたに近い気分になった。
俺の感情の起伏に敏い彼女は「ひぃっ」と小さく悲鳴を上げるがもう遅い。
「お、男の人なら誰でも持ってるってモー子さんが…っ」
「馬鹿馬鹿しい。あんなわざとらしい演技を見て悦ぶ奴は童貞だけだ」
演じる側の人間から見れば——否、一般人でも気付くだろう——女優のフリなんて白々しいほどわかる。
アメリカで一度見た事があるが、女優のただ出しているだけの喘ぎ声とあからさまに見せつけてくる部位にうんざりして逆に萎えた。
あの映像でどう興奮するのかわからない。
あんなモノに頼るくらいなら、行きずりの女とした方がマシだ。
それに頼らなくても一人で吐き出すことくらい出来る。
不快感と一緒に言い捨てると、彼女はようやく自分の得た情報が間違っていることに気付いたらしい。
「も、申し訳ございません!敦賀さんともあろう御方があんなモノを所持していると思うなんてどうかしておりましたっ!!今の戯言は忘れて下さい!!」
平伏する彼女に、誤解が解けたらそれでいい俺は深く息を吸い気分を落ち着かせる。
こんな話はさっさと終わらせようと彼女にも優しく声を掛けようとして…
はたとまた止まる。
——待て。
そもそも何故彼女はAVを必要としている?
思考を巡らせ、ある可能性に辿り着いた。
「最上さん」
「はっ、はい!ごめんなさい!」
「いや、その話はもういい。ねぇ…もしかして今撮影中の映画でベッドシーンでもある?」
「…っ、はい…そうなんです。それで、参考になればと思って…」
ハリウッドの恋愛映画も見たけれど、ベッドシーンに時間をそう長くは割いていないのでよくわからなかったらしい。
そもそも行為自体をよく知らない彼女は、フリですら演じることが出来ない。
「それでAVね……」
はぁ…と盛大な溜息をつきながらソファ深く沈み込んでしまった。
(複雑…)
今の顔を見られたくなくて、右腕を眼の上に置き表情を読まれないようにする。
彼女ももう二十歳になった。
最近色んな役どころのオファーが舞い込んできていて先輩としては可愛い後輩の活躍が嬉しく思う。
ベッドシーンも女優をしていればいつかはあるだろうと思っていたし、あったところでたかだか演技、そのシーン自体をとやかく言うような狭い男にはなりたくない。
だが彼女が自分以外の男に肌を見せるだけでなく触れられるということがたまらなく嫌だと思う自分も正直いて…けれど彼女の仕事に文句を言う権利など誰にもない。
まして自分はその身勝手な胸の内を彼女に伝える権利もない。
俺と彼女はあくまで先輩後輩で、それ以外の関係は何もない。
せめて今回、一番に俺に相談してきてくれたことに安堵した。
喜びよりむしろ安心の方が大きい。
先輩として彼女が仕事のことで最初に相談する相手は俺でい続けたかった。
他の男に相談することだけは許せない。
何故なら——
ソファの背凭れから上半身を起こし床に正座している彼女を膝に頬杖をつきながら上から覗き込む。
「最上さん。こういうのは結局知識だけあっても演じることは出来ないだろうね。だって君には想像つかないだろう?天国が見えるほどの快楽、とか」
「で、でも、どんな役でも知らないから出来ないとは言えないんです」
「うん、そうだね。だから…実技で教えてあげようか?」
「…えっ」
「巧く教えてあげられると思うよ。もっとも、君が結婚するまで純潔を守るだとか恋人でもない男と寝るなんて、と思うなら止めた方がいいけどね」
そう、俺が最初に聞いて良かった。
彼女の悩みは自分で体験すれば何ら問題なくクリアになるからだ。
他の男ならすぐさま上にのし掛かられていただろう。
彼女は男にこんな相談をすることが如何に自分の身を危うくさせているかまるでわかっていない。
——他には相談させない。
俺以外の男に教わろうとするくらいなら俺が教える。
例え彼女を知ることで一層手離したくない欲望に苦悩するのだとしても。
それに俺は、この話に彼女は乗らないだろうと頭の隅で高を括っていた。
唇を合わせる行為とはレベルが違う。
結構です!と引いて逃げると…予測していたのに。
彼女はいつも俺の予想を超える。
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今回、会社の男性陣がAVへの持論を熱く語ってて(そしてそれに嬉々として混ざるオヤジ社員ハヅキ)、それを話にしたらこんなモノが…。
社会人になりある程度金を持つと、AVなんて見向きもせず店に豪遊傾向にあるようです(ちなみに会社のとある男性陣は水曜か金曜が店通いの日)
しかし、店に行く敦賀氏は色んな面から考えられないのでそこは不採用(^_^;)
敦賀氏としては店に行かなくても生身の女に困らないだろうし…あら、となると敦賀氏の発言は単なるモテ男の傲慢発言になっちゃうのかしら(笑)
…しかしこのネタ、【共犯】の設定で使えばよかったと今更後悔orz