7月31日はMLBの「トレード締め切り」だった。数々の選手がコンテンダーにトレードされ、プレーオフに向けてチームは戦力をパワーアップした(しようとした)。強豪ヤンキースは元アストロズの一塁手ランス バークマン、元インディアンズの外野手オースティン カーンズ、投手ケリー ウッドなどのベテランをゲット。フィリーズは元アストロズのエース、ロイ オズウォルトを獲得。ドジャーズにはカブスから左腕テッド リリーなどが加入した。

しかし絶対トレードされると言われ、されなかった選手:主にナショナルズのアダム ダンなどもいた。

実は7月31日をすぎたからとは言え、チームはまったくトレードが出来なくなったわけではない。7月31日以降のトレードは可能だ。しかし8月1日からはトレードの交渉をする前に、選手がウェイバーを通過しなければならない。これは複雑なルールだがこう説明すれば分かりやすいと思う:

たとえば選手XさんをチームAがトレードしたい。その場合、選手Xはまずウェイバー(ドラフトと同じ感覚で考えれば良い)にかかる。もし他のチームからクレームがなければ、チームAは選手Xをどのチームとも自由にトレードできる。

もし複数のチームからクレームがかかった場合、トレードの交渉優先権利は同じリーグ(アメリカン、ナショナル)の一番勝率が低いチームに行く。このチームは「チームB」と名付ける。

その時点でチームAとチームBが交渉を始める。しかしチームAはそこで手段が3つある:

1)ウェイバーがまったく無かった事にして、選手をキープする(しかし選手をウェイバーに出して、この様に引っ込めることは選手一人につき、8月1日以降一回しかできない)
2)チームAとチームBは48時間の間にトレードを成立させる。
3)チームAからチームBに選手Xを放出する(トレードの返しは無し)。しかしこの場合、チームBが選手Xの残りの契約金額を全て引き継がなければならない。この手段はチームAが選手Xとの高額な契約を手放したい時に起用する。つまりこれは「サラリーダンプ」だ。チームAにはこの手段があるからどんなにスター選手がウェイバー公示されても相手チームはたいてい手を出さない。その失敗のケースがこれ:

去年、この方法でホワイトソックスがジェイズのアレックス リオスを獲得した。噂によると、ホワイトソックスがリオスにクレームを入れた理由:他のチームがクレームをしないように、つまりホワイトソックスは実際リオス獲得に興味があったわけではなく、他のチームのクレームを防ぐためにクレームをいれた。しかし他のチームはリオスにクレームを入れなかった。結果:ホワイトソックスはリオスを獲得したが、この先、リオスの高額契約の責任を全て持たなければいけない

さあ、これで7月31日以降のトレードの方法が把握できましたか?それとも、もっと複雑になってしまったか?

このウェイバー市場についてもう一つ面白いニュアンスがあります:

各MLBチームは放出したい選手だけでなく、この時期、ロースターのほぼ全選手をウェイバー公示しているんです!つまりカーディナルスはスーパースターのアルバート•プホルス、フィリーズはチェイス アトリーなどをウェイバーに出しているということ(もちろんクレームがかかった場合、上の説明の1)を起用して選手を失わないよう、すぐウェイバーから引っ込めますが)

この不思議な現状には良い理由が3つ:

1)チームは実際その選手をトレードしたいかもしれない(もちろんプホルス、アトリーの場合ありえないが、ダン、マニー•ラミレスなどの場合ありえる)
2)なるべくウェイバー市場(毎日ウェイバーはあるので。。。)の選手リストをふくらます作戦。これによって相手チームは選手の数が多すぎて、クレームしたい選手を見落とす可能性がある。
3)この理由が一番面白い:ウェイバーに出した選手にクレームがかかるか、かからないかによって各チームのGMはどれだけ相手チームが自分のチームの選手に興味を示しているか計る。この情報をつかってウィンター ミーティングなどで相手チームとトレードの交渉を進める。

ちなみに今シーズン、この方式でトレードされる可能性が高い選手(次の締め切りは8月31日:それまでに選手は新しいチームに加入しないとプレーオフ出場できない):

外野手 マニー ラミレス、ドジャーズ
投手 ブライアン フエンテス、エンゼルス
DH/外野手 ジョニー デーモン、タイガーズ
投手 アーロン クック、ロッキーズ
3塁手/2塁手/外野手 ショーン フィギンズ、マリナーズ
内野手 タイ ウィギントン、オリオールズ、などなど。。。

さらに、日本人選手ではプレーブスの川上投手、カブスの福留外野手がこの方法でトレードされる可能性あり。

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