<原発人災事故>の健康被害に関する私見
東京電力は3日、福島第一原子力発電所から15~20キロ離れた沿岸部の海底の土砂から、高濃度の放射性セシウムとヨウ素を検出したと発表した。
検出場所は、同原発の南約20キロの岩沢海岸(広野町、楢葉町)と北約15キロの南相馬市小高区の沖合3キロの水深20~30メートルの海底で、4月29日に採取した。
小高区沖では、土砂1キロ当たり、最大でセシウム137が1400ベクレル、セシウム134も1300ベクレルが検出され、いずれも通常の1000倍以上に達した。ヨウ素131も、通常の100倍以上の190ベクレルが検出された。東電は2地点の周辺も含め、魚介類の調査なども実施する方針だ。 (2011年5月3日21時26分 読売新聞)
<コメント>
上記の記事は、悪い予想どおりに、被害が拡大している1断面の報道。
さて、今日は、マスコミにもよく登場され、ご活躍中の「山下俊一 福島県アドバイザー」(原子力安全委員会のメンバー、長崎大学大学院医歯薬学科薬学総合研究科長、世界保健機構緊急被ばく医療協力研究センター長、日本甲状腺学会理事長)の 2011/05/03 二本松での講演 」の内容に対する私(ごとき)のささやかな「意見」。
・各々→以下の文が、私の意見です。
・山下先生;「皆さんはここに住み続けなければならない。ここで生きていかなければならない。現実です、理論じゃない。長崎や広島がそうでした。」
→ いや、先生、もう、国が早急に避難場所を確保して、皆さんには「避難」していただいたほうが良いでしょう。また、長崎・広島をよく、引き合いに出されますが、今のFukushimaのケースと比較するのは科学的にはあまり適切ではないと考えています。
山下先生:・「これから、みなさんが病気になるのを調べるには福島県民みなさんの協力が必要です」
・「10年後の放射線による影響は福島県民全員の協力の上で、疫学調査をしなければなりません。だからここで影響にはついては言えない」
・「100mSv以下では放射能の影響は科学的に証明されておらず結果は何十年後にならなければわからない。だから自分は福島の人達に安心してもらうように心配ありませんと言い続けてきた」
→ やはり「中・長期の健康影響については、確たる科学的証拠もないし、まだ、わからない」わけで、わからないことをさも、わかったように「専門家」(のつもりの方々)が言ってるから、みんな混乱すると思うのですが・・・。
だから私が繰り返し言うように、短期的にすぐには健康被害はでないけれども、中長期的には???なので「心配ありません」などと断言すべきでないと思います。
山下先生が、以前、チェルノブイリの疫学調査で示された「子供の甲状腺がんの増加の知見」は、評価しています。ただ、彼が示された「数年間の死亡者増加後は、死亡者減少にいたる」データは、最新の精度の高い論文で否定され、今なお、死亡者は増していますよね。(比較的予後の良いとされる)甲状腺がんにかかるヒトが多いということでしたが、実際には6人に1人は、肺転移をきたす「たちの悪い」甲状腺がんですよね!
こういうデータが、もうあるので、わざわざ、もう「疫学調査」なんて、「敢えていらない」と言わせてください。
たぶん、今までの「チェルノブイリの疫学調査」などと比べて、患者さんにとってHappyなデータは出ないでしょう。そんなことくらい、現時点の知見で推定できます。患者さんは学者の実験台では無いのですから・・・。
・・・ということで、私としては、原発被災地域の高齢者は避難しなくても良いですが、15歳未満の子供と妊婦は、なるべく避難されたほうが良いという立場です。私は、特に子供にとって、ある遺伝子変異によって放射線感受性が大きく異なり、ハイリスクのグループは即刻避難していただき、長期フォローアップとケアが必要だと考えています。
なお、1人の癌治療研究者として、将来、皆さんが癌にかかろうが、それを治療できる方法を開発していきたいと思います。敢えて「疫学調査」よりも、新しい治療法の開発が必要・・・こういうことを言わねばならないほど、事態は甘くないと思っています。