ヒトiPS細胞研究:えっ?Science誌のブレイクスルー オブ ザ イヤーは、なんと「圏外」 | 医学ニュースの深層

ヒトiPS細胞研究:えっ?Science誌のブレイクスルー オブ ザ イヤーは、なんと「圏外」

 米科学誌ネイチャー・メソッズは、今年最も注目される生命科学分野の研究法に贈られる「メソッド・オブ・ザ・イヤー2009」に、山中伸弥・京都大教授らが開発した人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製法を選んだ。患者の細胞を使った病因解明や細胞のがん化、老化のしくみを解明する基礎研究など、発展をみせる新たな研究手法として役割が認められた。20日付の同誌電子版で発表する。

山中教授らは2006年にマウスの皮膚細胞から、07年にはヒト皮膚細胞からiPS細胞の作製に成功した。

同誌は、体細胞にわずか3~4遺伝子を入れるだけで、体内の様々な組織や臓器になる能力を持つ細胞ができるため、熱狂的な勢いで世界に広がったiPS細胞が、研究手法としても着実に進歩し、新たな発見が近づく段階に入ったと解説。

09年以降、脊髄(せきずい)性筋萎縮(いしゅく)症やパーキンソン病など、患者から作ったiPS細胞で、発症原因の解明や治療法の開発研究が進み、新薬開発で必要な薬剤の有効性や副作用を調べる研究分野でも貢献を評価している。 (朝日新聞)



コメント:


 iPS細胞は、記事のように、Nature Methods誌(ネイチャー・メソッズ)の「メソッド・オブ・ザ・イヤー2009」に選ばれたが、Science誌のブレイクスルー オブ ザ イヤーは、圏外(10位までにも入っていない)。

 後者の方が、権威・歴史はずっと上で、昨年は、その堂々の1位だった。しかし、いきなりのランク外になったから、びっくりした。ただし、Science誌は来年注目する技術として、再び、iPS細胞をピックアップしている。


 「iPS細胞が、研究手法としても着実に進歩し、新たな発見が近づく段階に入った」とNature Methods誌が解説しているように、 Science誌もまた、次のように書いていた。


 「2008年(要は、去年)のブレークスルーは、成人の皮膚細胞を人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPS細胞)にして、さまざまな成熟細胞型に増殖させることのできる能力であった。この能力が、2010年の研究の新しい波を先導するであろう。研究者らは、このような方法を用いて、個々の患者からiPS細胞を作製し、生理的・遺伝的異常を調べたり、有望な治療法の試験に利用したりできる。これまでに1型糖尿病患者、パーキンソン病患者、その他、10を超える各種疾患の患者からiPS細胞が作製された。さらに多くの研究者がこの分野に参入し、幸運ならば、これらの疾患について新しい洞察が得られて、2010年にはこの疾患数が伸びるであろう。」


 要は、裏を返せば、ヒトiPS細胞は、もはや「第2段階」に突入し、来年(2010年)以降は、それを活用して「疾患に対する新しい洞察が得られた(疾患メカニズムの解明)」とか「治療に大きく貢献できる新しい薬(のネタ)を見つけることができた」とか、というような「臨床に近い成果」が出ないと、ダメだ(=満足できません、お祭りにはなりません)ということだな。


 私は、肝臓分野で、それを、2つ見つけて論文が即効査読後、もうじきオンラインだけどね。まあ、この国の「1部」(どこやらの・・・敢えていいません)よりは、米国や欧州の研究者らがずっと高く評価してる・・・ひっきりなしに連絡くるし。更に、患者さん(欧米在住)からも・・・。