新型インフルエンザ脳症の動向と今後の対策
新型インフルエンザの合併症で、季節性インフルエンザと同様に注意が必要となるのが「脳症」である。前からの補足の意味も含めて、今日は、少々、詳しく書いておく。しかも「真面目に」(→ここ、ポイント)。
このブログは、結構、子供も持つ、お母さん達が見ているようだから。
さて、厚生労働省によると、2009年7月28日から12月1日までに報告された新型インフルエンザ脳症は全国で321例。
11月までは、流行の中心が5歳から14歳の学童にあったため、従来の季節性インフルエンザに比べて年齢の高い小児の脳症例が相次いで報告された。現在までに報告された新型インフルエンザによる脳症例は、例年より多く、比較的年齢が高い傾向にある。
一般に、年齢の高い小児のインフルエンザ脳症は、乳幼児に比べて後遺症が残りにくく予後も良好である。さらに、今のところは、患者の年齢が高いことに加え、重症化前に早期に2次・3次医療機関に患児が転送されていることが予後を良くしていると思われる。
ただし、今後、乳幼児の脳症が増え、予後不良例も増加することが懸念される。
そんな「予後不良例」については、どうするか?
前にも書いたように、発熱翌日に異常言動と全身強直性痙攣が出現するのが特徴である。来院されて入院時の脳波所見から予後が良くないタイプについては、標準治療以外に、過剰な免疫反応および代謝を抑制し、神経障害の拡大を阻止する目的で「低体温療法」に踏み切る場合もある。
まあ、ここの記事で再三、書いているように、どこやらの国でも米国のように「新規治療薬」の「限定的承認」を前倒ししてくれれば、いいのですがね・・・。
一方、一次医療機関で「脳症疑い」と診断をつけることについてだが、特に発語や行動が未熟な乳幼児は、行動の異常や意識障害を見付けにくく、意識障害のレベルを判定することが難しい。だから、名前を呼んでも反応しない、といった母親の訴えは重要な情報になるのです。・・・ということで、医師は、いつから、どういう状態が続いているのかを聞き出すことは重要。
そして、担当の医師は、経過観察を通して、意識レベルの低下が持続する場合はインフルエンザ脳症を疑い、早めに2次・3次医療機関に転出することが「分かれ目」になると思う。
なお、脳症のほとんどは発熱後に早期に発症するが、解熱後に精神症状が出現する「亜急性」の経過をたどるケースもあることも、現場の医師は、念頭に置く必要があるだろう。
亜急性の臨床経過をたどる代表的な脳炎として、2相性脳炎やラスムッセン脳炎などが知られている。これらは、発熱が治まってしばらくは大きな痙攣もなく、回復したように思われるが、数日から数週間の経過で発語が低下したり、字が書けないといった神経症状が顕在化する。画像検査をすれば、このようなケースでは脳萎縮や局所異常が認められる。
このように、現場の優秀な医師らは、どうにか対応されています・・・。
繰り返しますが、患児のご両親(特に、母親の場合が多い)は、見た目の子供の状態についての情報をできる限り、医師らに伝えてくださいね。