🔹後ろの正面🔹
もう、いいかい。まーだ、だよ。
ときどき、雲の上から抑揚をつけた天女の声が聴こえます。
ボクは、間髪を入れずに答えます。
もう、残すところわずかだというのに
生涯の宿題は、一頁もできていません。
できない、見つけられない、もう少し時間がほしい。
古希を過ぎても、ボクの前にはまだ言い訳だけが
山のように積みあがって、ボクを上から見降ろしています。
理解が早く、往生際のよい人もいることは認めます。
でも、中には鈍重で、決断できない愚図がいるのです。
あれは、少年の自分の声でしょうか。
天に向かって答えている声が若々しいのです。
もう、いいかい。まーだ、だよ。