こわくて、わからない。


ずっと連絡のとれていなかった母に、
ためしにメールをしてみた。


「来週会いたい。子どもたちに会って欲しい。」


そしたら、

返信が、きた。


「体調が悪くて、3月で仕事を辞めました。

4月から、近所の弁当屋でバイトを始めました。

30日締で、5月10日が給料日です。
貧乏生活中ですが、
それまでの辛抱です。

明日携帯電話が止まります。

家の電話はもう止まっています。

連絡とれなくなります。

5月5日休みです。

今度こそ会いましょう(*^O^*)」



こわくて、たまらない。

思い出した、
わたし、これが、こわかったんだ。


小さい頃から、

母はいう。

体調が悪くて、○○が痛い。

目眩で起き上がれない。

体調がわるくて、仕事をやめた。



わたし、凄く怖かった。

母が死んでしまうんじゃないかって、
すごくこわかった。


収入がない。


料金滞納で、
電話がとめられる。
電気がとめられる。
ガスが止められる。

取り立てがくる。

このまま死んでしまうんじゃないか。

わたしはどうなってしまうのか。

こわい。


こわいのを思い出したくなくて、

社会人になってからは、
稼いだお金を、たくさん母にあげた。


携帯電話を持つようになってからは、
上のようなメールが来ると、

こわいのを思い出して、

母の口座に、お金を振り込んだ。


お金を振り込んだら、母は連絡が取れなくなる。

またお金が足りなくなったころ、
母は近況のメールをしてくる。

わたし、こわくなって、また振り込む。



そうだ。そうだった。


それで、私が主婦になって子どもが生まれてからは、
私も収入がないし、子どもにお金かかるから、

母に振り込むのがだんだん苦痛になってきて、


母と距離を置くようになったんだ。


そうだ。

母と連絡がとれなくなったんじゃなくって、

私が連絡、取らないように仕向けてたんだ。


今また、そのメールがきた。


こわくて、震えてしまった。
こわくて、途中までしか、読めなかった。


少し時間を置いて落ち着いたので
もう一度、読む。


こわいから、「ああそうですか」と、
心の中で唱える。

ああそうですか、をやりなが、読むと、
メールには、

「お金ちょうだい。お母さんは死にそうです。助けて」

とは、どこにも書いていない。

どこにも書いていない。

書いていない。

全然書いていない。

何度も確かめる。

良かった、書いていない。


でも、こわい。

わたしが、無視してお金を振り込まなかったら、


お母さん、

体調を崩して、仕事をやめて、収入がなくて、

病院にもいけず、

死んでしまう。


わたしのせいでお母さんが死んでしまう。

どうしよう、どうしよう。


動揺で涙がとまらない。

こわい。

お母さんを見捨ててもいい。
お母さんを見捨ててもいい。

お母さんを見捨ててもいい。


こわい。

私のせいで、お母さんが悲惨な目にあうのだ。



「そうですか、大変だったね。5日行きます。」

冷静な振りして返信した。


おちつけ、わたし。
おちつけ、わたし。


助けてとはどこにも書いてない。

かいてない。

おまえのせいだ、とも、書いてない。

不幸なのはおまえのせいだ。

かいてない。

大丈夫。


大丈夫、わたし。


おちつけ、おちつけ、


いつもとは、違うことするんだ。


このときのために、
信じてきたんだ。

大丈夫、いろいろやったから、大丈夫。


おちつけわたし!!



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