IFRS適用後は、2通りの財務諸表が必要になります。
その理由は、開示目的としてのIFRS財務諸表、税法・会社法対応目的としての日本基準財務諸表の2通りが必要となるためです。
また、IFRSの強制適用は2015年もしくは2016年を予定していますが、対象は連結財務諸表のみとなっています。従って、開示用のIFRSはあくまで連結財務諸表のみ適用すればよい「連結先行」型ということです。
国内法がIFRSに追随すればこのような問題は起きないのですが、少なくともIFRSとの完全一致が強制適用までになされる可能性は果てしなく低いと考えられます。
このような背景から、原価計算と棚卸資産評価を「IFRS用」「日本基準用」と2種類実施(二重計算)するのかどうかが大きな問題となります。
原価計算のデータは、財務会計目的のみならず、原価管理目的でも利用している企業様が多いと思います。仮にIFRS原価計算、日本基準原価計算と当該管理数値が2通りになれば、現場も含めて混乱の元となることは明白です。言わずもがな、棚卸資産評価についても然りです。
また、2通りの原価計算・棚卸資産評価を実施するには、業務・情報システム双方の負荷も極めて高くなり、対応コスト・運用コストも膨大なものになることが予想されます。
このテーマは単体側の原価・在庫システムに係る帳簿をどのように保持するかという議論と密接に関わってくるのですが、2重計算は現実解としてはハードルが高いと考えます。従って、単体側のシステム帳簿を日本基準もしくはIFRSいずれかに決め打ちし、連結決算時、もしくは税務申告時に差異調整を実施する企業様が多くなるのではないかと予想します。
本件は、「IFRS適用後の自社の経営管理をどうするか?」という経営戦略と密接に関わってくる重要な課題となります。というのも、仮に単体側の帳簿をIFRSベースで実施するとなった場合、コスト要素がかなり変わりますので、意思決定に係る元情報も大きく変わり、しいては業績評価にも影響を及ぼすと考えられるからです。
IFRSプロジェクトを進める過程で各関係部門を巻き込んだ集中検討並びに経営者の意思決定を求め、方針を固めるべき重要なテーマであると考えます。
なお、本件に対する具体的な対応方法については、後日書きたいと思います。
トモ