超お久しぶりで懐かしさすら漂うこちらのシリーズをお届けいたします。
一葉、お前、いい加減にせーよ!!Σ\( ̄ー ̄;) んなこと言われても…。
実は過去の妄想を発掘していたらその山に紛れていた13話の下書きを発見。
こちらのお話は中身は出来ていたのですが誰の視点で書こうかで悩み、ずっと保留にしておりました。
…で、最近思う所があって飛鷹くんで書く気になったので頑張ってみました。いつもそうですけど今回も長いですよ☆
ちなみにこの後、またしばらくの間お待たせすることになると思います。…が、予想ではあと3話程度で終わるかと思われます。あくまでも予想ですけど(笑)
もう本気でお忘れでしょう(笑)宝物シリーズ
もし今回、途中から読み返すのなら10・尚対決編からがお勧めです。
前話こちら↓
9・奏江side〈前編 ・後編 〉(リ作)
10・尚対決編〈前編 ・後編 〉(セ作)
蓮キョ愛捧げあい(応酬)宝物シリーズ
■ 宝物は誰のモノ?13~side 飛鷹~ ■
敦賀さんと兄弟役を演じた例のドラマが無事クランクアップし、オレはその打ち上げ会場となる都内某所、超高級有名レストランに足を運んだ。
スタート時間より30分ほど早かったのだがレストランの予約時間はとうに過ぎている。
その会場の一席に腰を落ち着けたところだった。
「 飛鷹くん、もう来ていたのね。私の方が早いかと思ったのに 」
「 奏江。いま着いたんだ。お疲れ 」
「 ええ、お疲れ様 」
そもそも、なぜこの店になったのか…を語ると少しだけ長い。
きっかけは、このドラマがクランクインして間もなくの頃。
既に話題となっていたこのドラマのオープニング曲を手掛けた不破尚のそれを、どこよりも早くお披露目したい…と言って来た某音楽番組の意向を受け、オンエアで流す不破尚のインタビューをドラマの撮影現場でやったことだった。
緒方監督の計らいだったのか、はたまたオープニング曲を担当した身の程知らずな不破尚の思惑だったのか。
とにかくそれは実行され、そのとき敦賀さんがドピンク妖怪とした約束が発端となっていたのだ。
面白いことに二人はそのインタビューの最中に、不破をギャフンと言わせることが出来たらとびきり美味しいハンバーグを食べに行こう…と約束をしたらしい。
けど、お互いに忙しくてなかなか実行に移すことは出来なかったに違いない。
だからきっと敦賀さんは無事クランクアップを迎えた日、たぶん、ドピンク妖怪と二人でここに来るつもりでそれを口にしたんだと思う。
だが運の悪い事にその会話をリアルタイムでドラマスタッフが聞きかじってしまい、あっという間に打ち上げがそれに決まってしまったのだ。
近日開催…というおまけをつけて。
「 それにしても、見事に誰も居ないのね? 」
「 いや。監督は来てるぞ。いまスタッフの所に行ってる。
けど役者ならこんなもんだろ。何しろいま昼間だし。打ち上げは集まった頭数に関係なく時間通りに始めるモンだからオレは気にならないけどぉ。
けど、曲を担当した奴らが上も下も来てねぇってのが解せねぇんだけど… 」
もっとも、ここに決まる流れとなったその一端を自分も担っていると思うと片腹痛い。
なにしろ主要を固めた登場人物の半数は、オレをはじめとする未成年で構成されてるっつーのが理由だろうから。
「 そうなの?……え?貴島さんも? 」
「 貴島さんはだいぶ遅れるらしいぜ。もしかしたら来られないかも…ってさ。貴島さんにしてみれば酒が無い打ち上げなんて…って感じなんじゃねーの?きっとオレらと入れ違いで二次会時間にひょこっと顔を出すと思うぜ?
ちなみに俺の兄貴もまだ来てないけど…。ま、敦賀さん、忙しい人だから。それは仕方ないと思うけど~ 」
このレストランは、オレでも知っているような本当に大きい店舗だった。
だいたいドラマスタッフも入れての打ち上げ…となると参加人数はかなりの数に膨れ上がる。
だから敦賀さんは大部屋を三室予約し、借り切った一番大きな一室に番組スタッフ達を、もう一室に脇役達をあてがい、主役及び準主役でドラマを盛り立てた人間と緒方監督をいまオレ達がいるこの部屋にあてがった。
そう。ドラマで上下曲を担当した二組のアーティストも一緒に。
まったく、兄貴、人が良すぎ!
しかもどっちもまだ来てねぇし!!
「 …ちっ。歌手なんかどれほど忙しいっつーんだ。このドラマでいい売り上げたたいたんなら先に来てお礼の一つも言えっつーの! 」
奏江と出逢うきっかけとなったドラマで頭のワルーいミュージシャンと仕事をしてから、オレの歌手に対するイメージはあり得ないほど低迷している。
「 ……ねぇ、飛鷹くん 」
「 ん? 」
「 私、前から一つ疑問に思っていた事があるんだけど… 」
「 え?なに?……あ、れ? 」
「 え?どうしたの?飛鷹く…… 」
ふと、窓の横を通り過ぎた人影に気付き
奏江の言葉に耳を傾けながらオレは訝しんで眉をしかめた。
もしかすると予定よりだいぶ遅れるかもしれない…。
そう敦賀さんから連絡を貰ったとき、自分が兄貴の代わりにしっかりしないと…とオレは思ったのだ。
そのつもりでオレは気を引き締めていた。
「 奏江… 」
「 え? 」
「 オレ、ちょっと外を見て来る 」
「 は?え?どうして? 」
「 いま気になるものが見えたから 」
「 ちょっと待って、飛鷹くん…… 」
ドピンク妖怪がこの店に着く予定の時間は過ぎている。
ここに着いたならまっすぐこの部屋にやってくるはずの人物が、けれどいまわざと開けておいた窓の向こう側に見えた気がした。
ここは本当にレストランなのか?…と初めて来た客なら誰でもそうツッコミを入れたくなるような豪華な扉を開け、少し長めの廊下に出るといま入店して来たのだろう一般客の会話が耳に届いた。
「 ねぇ…。今のって不破尚と京子じゃなかった? 」
「 うん。そんな気がした。店に入ってくるのかなって思ってたのに、立ち止まって方向変えちゃって…。何で裏に回ったんだろ?この店って全室個室なのに… 」
「 偶然出会ったって奴なのかな?ねぇ、何の話をするか気にならない?ちょっと見に行かない? 」
「 えー?そりゃ気にはなるけど…。でもそれって完璧に出歯亀じゃない。私、別に不破尚のファンじゃないし~… 」
「 あたしだってそうだけど。でもあたしは京子の方が気になるの!
実はあの靴メーカーのCMが京子だったって知ったあの番組を見たときからちょっと京子の事が気になってるのよ! 」
「 あら、あんたが?珍しいね。じゃあ……ちょっとだけ見に行く? 」
「 行く!! 」
意気投合すると店内に足を進めていた女二人は喜々とした顔で踵を返した。それをすかさずオレは追った。
この高級レストランには女性客やカップルに人気のある整った庭園がある。
そう言えばこの店が打ち上げ会場なのだと言ったら親がこう言っていた。
もし人目を盗んで話をするなら、庭園の方じゃなくて店の裏側…鬱蒼と木が生い茂った場所がいいと……。
それは暗黙の了解なのか、その通り二人組もそっちに足を進めているようだった。
「 なに?飛鷹くん、なにして…。前にいる女性2人、知り合い? 」
「 …ちげーよ。お前の親友のドピンク妖怪、もしかしたらいま不破と一緒にいるかもしれねーんだ 」
「 はぁ?やだ、ちょっと待って、飛鷹くん! 」
「 いいから。奏江はレストランで待ってろよ 」
「 いやよ。あの子がいるって知ったのにそんなこと出来ないわよ! 」
レストランの敷地はそれなりに広く、予想通りたどり着いたそこにはドピンク妖怪と不破尚の姿。
二人はまるで逢引しているかのように木陰に隠れて向き合っていたが、聞こえて来た内容は当然の如く逢瀬とは言えないものだった。
仏頂面の仁王立ち。
腕組みした不破尚はやけにふてぶてしく、いかにも憮然とした態度。
しかしドピンク妖怪は幼なじみの慣れなのか、不破のそれに特に威圧を感じない様子で堂々としていた。
「 お前、なんだよ?この前の頬チューは… 」
「 質問の意味が判らないわ。あれは番組でしょ。
あんた、私より芸能界長いくせにそんな事も判らないの? 」
「 それは判ってんだよ!!お前のっ!あのデレンとした顔は何だったのかって!!俺はそれを聞いてんだよ! 」
…あの番組?って何のことだ?
「 奏江 」
「 え? 」
「 あの二人の会話、意味判るか? 」
見上げて奏江に答えを求めたが、奏江がそれを教えてくれる前にオレをこの場に導いてくれた出歯亀二人がそれをオレに教えてくれた。
少し離れたその場所から。
「 ……え?それってこの前のテレビのことかな? 」
「 そうじゃない?っていうか、そうだと思う。不破も出てたし。
あの番組でさ、敦賀蓮が用意した朝食セットを京子が選んだじゃない?それで京子が敦賀蓮にお礼の頬チューをしたのよね。
あれっ!!あれ見てあたし、結構いいなーって思ったの!京子のこと 」
「 あっ!私もそう思った!チューしたあとの京子の笑顔、マジ可愛くなかった?私、あれでちょっと京子の好感度を上げちゃったわ 」
「 そう!そうなの!!あたしなんてあれ見てドキュ~ンと来ちゃって!
それから京子のこと気になってんの~ 」
「 あー、そっか。さっき言ってたのってそれだったんだ! 」
「 そうそう! 」
女二人のはしゃぎ声はトーンを落とそうと気を配っても結構普通に聞こえて来て、そこでハタ…と会話を止めた二人は、それはいいけど…と呟き、またあの二人に注目した。
会話は続けたままで。
「 …で、それはいいけど、それでどうして不破尚が怒るワケ? 」
「 さあ?知らなーい。あ、でもそう言えば不破ってどこかの音楽番組で京子と幼なじみとか言ってた気がする。だからそれが発展して、もしかしたら付き合い始めたとか? 」
「 へ?いやいや、違うし!二人はただの幼なじみって言ってたはず。絶対そう。
……なのに、何コレ?!意味わかんない。不破、何様?だって京子って絶対、蓮のことが好きでしょ?あたしは京子の応援してんだから邪魔すんなっ!!! 」
そんな茶々を入れても所詮は出歯亀。
さすがに芸能人同士の会話にしゃしゃり出るつもりはない様で、不破は見られている事には全く気付かないのかそのまま会話を続けていた。
「 お前、まさか約束…忘れてんじゃねぇだろうな? 」
「 はぁ?何のよ? 」
「 敦賀蓮に躓いたら一生!!!俺の実家で仲居勤めをするって話に決まってるだろ!!! 」
……と、オレは思っていたのだが。
女のファン、恐るべし。
「 はあぁっ??なにそれっ!?
不破尚、サイッテ ――――――― ッ!!! 」
派手に草木をかき分け出歯亀は見事に出しゃばった亀に変わった。
「 なっ…誰だお前?! 」
「 通りすがりの者よ!それよりアンタ!幼なじみの風上にも置けない最低男ねっ!いいっ?!人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえって昔から言うでしょ?! 」
「 ふざけんな!通りすがりが他人の会話に首突っ込んでんじゃねーよ! 」
「 ふざけんなはそっちの方よ!理不尽だと思った以上、さすがに黙っていられるもんですかっ!
だいたい、京子ちゃんと幼なじみだからって不破が京子ちゃんを縛る権利なんてどこにもないじゃないの! 」
「 うるせぇっ!!そっちには判らねぇ兼ね合いが色々あんだよ!そんなん、てめーの知ったこっちゃねーよ 」
隠れていたはずの木陰から銃弾のようにいきなり飛び出した、恐らく京子のファンと呼んで差し支えないだろうその女の口からは、不破に勝るとも劣らない京子を擁護する援護射撃が猛烈な勢いで放たれた。
あまりのことに驚きすぎているのか、それとも口を挟む余地を見出すことが出来ないのか、ドピンク妖怪は大きく目を見開いたまま口を綺麗に閉ざしている。
機関銃のように打ち出されるそれがガンガン不破に命中する様を眺めながら、オレが人知れず肩を揺らしたのはもはや当然の成り行きだった。
「 …ちょっ…笑ってる場合じゃないでしょ、飛鷹くん 」
「 ……っ… くっ……っ!や、べ。死ぬほどオモシロ…。ナイス、出歯亀。
心配しなくても大丈夫だ、奏江。兄貴、いま着いたってメールが来た 」
「 え?敦賀さん? 」
「 ああ。丁度いいからこっちに来て貰おう 」
オレが兄貴の代わりに頑張るつもりでいたんだけど。
…ま、いいか。
どうせオレじゃそう役にも立たねーだろうし。
「 ………ねぇ、飛鷹くん。聞かせて? 」
「 あ?なに? 」
「 私、不思議だったの。このドラマの顔合わせをしたあと、飛鷹くん、明らかに敦賀さんを慕ってるでしょ。どうして? 」
「 ……何かおかしい? 」
「 おかしくはないけど…。でも不思議だなって思ってて…… 」
裏手にいる…のメールの返しは本当に直ぐで
こんなんでもオレ
少しは敦賀さんの役に立てたのかなって
そう考えただけで口元に笑みが浮かんだ。
「 奏江。オレ、年の割にはこんなナリだから。
バカにされることが多いってこと、知ってるだろ? 」
「 ……そうね 」
「 けど敦賀さん、顔合わせのとき、オレにこう言ったんだ 」
…――――――――… 君が、上杉飛鷹くん?
『 そうだけど… 』
『 そう。初めまして、敦賀蓮です。今回はよろしく 』
『 あ…はい、こちらこそよろしく 』
いくらオレの芸歴が長くても、年上の方からオレに握手を求めて来るなんて極端に少ない。
噂通りの温厚な笑顔で
現在、若手トップ俳優と言われている敦賀さんの方からオレに手を差し伸べて来ただけで、充分、予想外だったのに…
『 ……君は、凄い役者なんだろうね 』
『 え? 』
『 素晴らしい芸能一家のもとに生まれた君は、けれど誰の影に潰されることもなくまるで当たり前のように幾つもの仕事をこなしている。
強い才能を持っている君を、本当に羨ましく思うよ… 』
おべっかとか
お世辞とか
社交辞令とか
そんな意味合いで発射された褒め言葉は今まで何度も聞いてきたけど
『 だけど気は抜かない方が良い。なぜなら俺、負けるつもりないから。
君に食われないように精一杯やらせてもらうからそのつもりで… 』
『 ……負けねーよ 』
敦賀さんの言葉は、そのどれでもなかった。
この人はオレを一人の役者として認めてくれている。
本心から言ってくれたのだとすぐに判った。
「 ……単純だって、笑ってもいいんだぜ、奏江。
けどオレは嬉しかった。そして、こんなカッコいい男になりたいって、オレ思ったんだ 」
「 そうだったの 」
「 ………あれ?あそこにいるの、下の曲を担当した奴じゃね? 」
「 下の曲…って、飛鷹くんったら。素直にエンディングを担当したビーグールのレイノって言えばいいのに。あ、敦賀さんも来たのね。別方向からだけど 」
―――――――― ドラマの中では…
君という弟が
俺にとってかけがえのない者になるわけだけど…
奏江。でもオレ、やっぱり驚いたんだよ。
役者としても本当にすごい敦賀さんを、ああ、本当にカッコいいな~って、知るほどに尊敬していって…。
現場で幾度もあの人の背中を追ううち、自然と敦賀さんの気持ちに気付いて…
敦賀さんみたいな人でも
オレと同じように恋愛に関しては悩むんだって知ったとき
そこがまた興味深いと思った。
ドピンク妖怪と話している時でも
不意に儚く笑う敦賀さんを見つけてドキッとした。
だから、オレで出来る事があるならしようって…
単純にそんな気持ちが湧いたんだ。
この人がいないときはオレが兄貴の代わりに頑張ろうって……。
でも、本当は不思議でしょうがない。
「 敦賀さん、なんで自信持たないんだろ。
あの出歯亀女も言っていたけど、二人の気持ちってバレバレなのにな 」
「 それはほら、色々あるんでしょ。判らないけど 」
「 判らないのかよ! 」
役者がそろった都内某所超高級有名レストラン裏手。
スペシャルハンバーグで打ち上げ…が始まる直前時間だというのに
メインを無視して
オレの目の前ではいま、別のスタートゴングが鳴り響こうとしていた。
⇒宝物は誰のもの?14 に続く
ちなみに、飛鷹くんが自分のことを『オレ』と呼んでいるのは9巻の名残です。
最近の本誌、例えばACT.238などで確認すると、彼も成長したってことなのか、はたまた仲村先生が設定を忘れてしまったのか、自分を『俺』と漢字表記しているのでどうしようかな、と思ったのですが。
まぁ、さほど大きな問題でもないし、あとあと誰のセリフなのかを見ただけで読者様が判別しやすいように、敢えて飛鷹くんの自分呼びは『オレ』で行こうかと思います。
さて、このあとはレイノ脱落か…。
あまり期待はしないで下さいね。
⇒宝物は誰のモノ?13・拍手
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★☆ 余談 ☆★
一葉はこれまで、ショータローとキョーコちゃんのこの約束を実行せずに済む方法を3つ、お披露目しました。
①約束内容を無効にする(ACT205未来妄想)
②約束を取り消しさせる(蓮キョ愛・ボーナスの行方シリーズ)
そして今回③奴のプライドの高さと知名度を逆手に取り、一般人を巻き添えにして実行できないように仕向ける。
たぶん考えればまだ出てくると思うのですが、現時点で「コレいけると思う」というアイディアをお持ちの方。是非それを一葉に呟いてみてください。
そのネタを元にいちよーが美味しく仕上げてみたいと思います。
…あ、嘘。美味しくなるかどうかの保証は出来ません(笑)しかもいつ使うかも判りません。
けどどうぞよろしく。
◇有限実践組・主要リンク◇