「おつ~!」
「カツーン!」
 ビールグラスの音が響きます。
 本日もカレンさんちの小さなバル開店です。
「いや~!のぞみくん。ムシムシむしむし梅雨マッサカリ!こんな時はシャワーでサッパリ!そのアト、ビールをゴックリ!もーこれしかないね!」
「ですね。カレンさん。できましたよ。旬物です」
「おー!うまそー!」



「『アナゴのムニエル』です。江戸前生アナゴに塩コショウ、小麦粉をふって、ニトスキでバター焼きしました。そこにクラッシュトマトにバジル、ポン酢醤油、バルサミコ酢を混ぜたフレッシュトマトソースをかけてました。お味はいかがですか?」
「うんまい!これ、うまいよ!ふわふわもちもち肉感のアナゴ。それがバターで香ばしく焼かれてて、そこにトマトのスッパサが加わるとナニコレ?って感じで新衝撃!洋風のアナゴもアリだね!」
「それはよかった。あ、カレンさん。この前、おもしろいことがあったんですけど」
「なに?なんかあった?」
「最近、アメともになった方からトークで、こんなことを言われたんです。『女性でプラ好きってめずらしい』って。まあ、『のぞみ』って名前なので女性とまちがわれるのは別に気にはしていないのですけど。『プラ好き』って言葉にハテ?と思いまして」
「なにそれ?プラ?月曜に出すヤツ?」
「それはプラゴミですね。ここらへんは月曜日回収ですから。ぼくもなんだろ?って検索してみたら『プラモデル好き』って意味らしいです」
「なんで?のぞみくん。プラモデルなんて作ったことないじゃん」
「ぼくも子供のころガンダムとか少し作ったことありますけど、大人になってからまったくですね」
「じゃあ、なんでプラモデル好き?」
「それで思い出したんですけど、ぼくがプロフィールに使っている写真」


「ああ、これね」
「これを見て『プラ好き』って思われたようなんです」
「でも、これってプラモデルじゃないじゃん」
「はい、これはラジコンなんです。だから完成品なんです。あいにくコントローラーを無くしてしまったんですけど」


「20年くらい前から、のぞみくんが持ってるヤツだね。なんかラジコンマイブームとかで飛行船とか、ちっちゃい飛行機やホバークラフト、ヘリコプターとかも持ってたよね」
「はい。で、ある曲を聞いて自分でピンクに塗ったんです。それも15年くらい前になるんですけど」




「わたしのレコード。『北山修青春歌詞集』ね。この中にある『ピンクの戦車』。これね
 ご存じの方もいらっしゃると思いますが、『北山修』さんとは『加藤和彦』さん、『はしだのりひこ』さんらと『ザ・フォーク・クルセダーズ』を結成し、60年代に活躍。解散後は医師との二足のわらじで音楽活動を続けられ『戦争を知らない子供たち』『あの素晴らしい愛をもう一度』『白い色は恋人の色』などの名曲を世に出した方です。
 ちなみに北山修さんが歌うバージョンはコンポの調子が悪く、お聞かせできませんが、YouTubeに酒井ゆきえさんが歌うバージョンがありますので、こちらをお聞きください。
ピンクの戦車 - YouTube

「この曲、反戦の意味が込められているとは思うのですけど」
「そんな時代だもんね。ベトナム戦争があったからね」
「兵器である戦車をピンクに塗るって暗示がすばらしい発想だなって思いまして」
「精神科医だからね。北山修は」
「ぼくが思うにピンクこそが平和の色。平和な時代にしか現れない色だと思うんです。赤にしろ黄色にしろ、一見、ハデな色は危険色として使われています。青や緑は、それこそ軍隊色です。でも、ピンクはちがいます。平和色と言ってもいい色なんです」
「そうね。そう言われれば、欧米とかじゃピンクは赤ちゃんのホッペの色って思われてるんでしょ?こっちじゃエッチな色だけど。でも、ま、どっちにしろ平和な色だわ。ピンクは」
「そうなんです!戦争の象徴である戦車を平和の象徴であるピンクに塗る!まるで水と油を混ぜ合わせるようなものです!これほどのアイロニーが他にあるでしょうか!」
「いや~!今日ののぞみくん、語るねえ~、カタルシスだね~、カタルーニャ地方だね~」
「そう思ったとき、ぼくはガン!と脳天に衝撃を受けまして、気がついた時には、この戦車をピンクに塗っていたんです!」
「ええ~?曲を聞いて、ガン!て脳天に衝撃を受けたあと、お店に行ってペンキと筆を買って帰ってきて戦車をピンクに塗って、そこで気がついたの?その間の記憶がないの?そりゃ、あぶないわ。病気だわ。病院行ったほうがいいわ
「いえ、それは言葉の綾で…」
「て言うかさ。この子、この熊。なんて子?だっけ?」


「『桃熊タンク朗』です」
「タンク朗。かわいいじゃん」
「とにかく、それから、このピンクの戦車を自分のトレードマークにしようと思ったんです。それに最近の人気アニメ『ガールズ&パンツァー』にもピンクの戦車が出てくるので、それよりも先行していることもお知らせしたくて」
「ふうん。じゃ、このブログを読んでもらえば、これから、のぞみくんも『プラ好き』って思われなくなるね。よかったじゃん」
「はい。よかったです」
「でも!まー!わたしにとっては!どーでもいいことなんですけど!」
「ですね」


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