性犯罪の裁判を傍聴した時の話 | 市川春希の日常ブログ

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普通のサラリーマンの日常を記録したブログです。

告知。


新ブログ会社員ワンダーランド を立ち上げました。

今後はこちらのブログをメインに更新していきます。


告知終わり。




会社を辞めた後、「今まで経験した事がない事をたくさん経験したい」と思いました。


その一環として、裁判の傍聴を経験しました。


裁判は誰でも手続き不要で傍聴することができます。


初めて傍聴を経験した時から、裁判の奥の深さに感動し、松戸の裁判所に通うようになりました。


世の中には色々な犯罪があり、裁判での罪状も様々です。


今まで何人もの被告人を見てきました。


万引き・ひき逃げ・飲酒運転・覚せい剤・住居侵入・ひったくり・振り込め詐欺。。。


被告人らが犯した犯罪は簡単には許されませんが、犯行の裏には、汲むべき事情や理解できなくもない事情も多少はあります。


しかし、先日とある裁判を傍聴したところ、汲むべき事情も理解できず、更生の余地も見当たらない最低の被告人がいました。


今回の記事では、その裁判での傍聴の記録を書きます。




いつも法廷の前にはその日の裁判の予定が掲示されています。


普段は「窃盗」「詐欺」「覚せい剤取締法違反」「道路交通法違反」など、大抵はひとつの罪状が書いてあります。


しかし、その日は違いました。


事件名「準強姦 準強制わいせつ 児童買春 児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反」


罪状が多すぎます。


しかも、すべて性犯罪です。


一体、被告人は具体的に何をしたのだろうと思いました。


この日の午前の裁判はこの1件だけでした。


法廷に入り、傍聴席に着きました。


午前10時30分 開廷しました。


法廷には、裁判官3名・書記官1名・検察官1名・弁護人1名・傍聴人3名(私を含む)がいました。


被告人が警察官2名に連れられ入廷しました。


被告人は推定70歳前後の男で、頭髪は白髪で薄く、厚い黒縁メガネをかけ、やつれたような表情をしていました。


服装は上下灰色のスウェット姿で、姿勢は猫背で、重い足取りで入廷しました。


被告人は手錠と腰縄を付けられていますが、証言台に着くと、それらはすぐに解かれました。


裁判長からの人定質問です。(本人確認のための質問)


裁判長「名前は?」


被告人「○○○○です」


蚊の鳴くような小さな声でした。


裁判長「住所は?」


被告人「今はありません」


続いて、検察官による起訴状の朗読です。(審理の対象を明らかにすること)


検察官は女性で、20代後半くらいに見えました。


検察官はとてもハキハキとした大きめの声で起訴状を読み上げました。


いつもなら、起訴状を読む検察官は、早口で流し読みをすることが多いです。


なぜなら、起訴状は裁判官や弁護士にも同じ物が手元にあるからです。


検察官は私と同じくらいの年に見えるのに、堂々とした態度で仕事をする様子に感心しました。


裁判長「被告人には黙秘権があります…」(黙秘権の告知)


裁判長「起訴事実に間違いはありませんか?」


被告人(とても小さな声で)「間違いありません」


裁判長(よく聞き取れなかったようで)「認めるという事ですか?」


被告人(とても小さな声で)「はい」


被告人は終始、聞き取れないほどの小さな声でした。


続いて、検察官による冒頭陳述がありました。(事実を明らかにすること)


先ほどの起訴状の朗読と、この冒頭陳述により、事件の概要をおおかた理解することができました。


私の知る限りの情報によると、事件の概要が次のようになります。




被告人は偽名を使い、虚偽の会社の代表を名乗り、インターネット上に虚偽のアルバイトの求人広告を

出した。


そのアルバイトとは、血圧測定のモニターである。


そのアルバイトに応募してきた、被害者D(16歳少女)をマンションの一室に入れ、「私は医師の資格がある」「血圧測定に必要だから」と嘘を言い、被害者Dにアルコールと睡眠導入剤を飲ませた。


被害者Dが 心神喪失状態に陥ったところで強姦し、その様子をビデオカメラやスマートフォンで撮影した。


撮影後、その映像データをアダルトショップに販売した。


ビデオの販売を目的とした同様の犯行を、被害者E(16歳少女)・被害者F(22歳女性)・被害者G(22歳女性)の計4人に対して行った。


被害者Dと被害者Eは友人関係であり、犯行後、被害者Eがインターネット上で被害者Dの映像を見つけたことがきっかけで事件が発覚した。




ここまでが概要です。



「救いようのないクズだ。」



というのが第一印象でした。


私が今まで見てきた被告人は、罪を犯していながらも、多少の汲むべき事情がありました。(だからといって犯罪が許されるわけではありませんが)


しかし、今回の被告人は、「販売目的」という身勝手な理由で4人もの女性に大きな心身の傷を与えました。


自分自身の私利私欲のため、被害者の心身を傷つけた行為に、激しい怒りを感じました。


それと同時に、こんな悲惨な事件があった事に大きなショックを受けました。



そしてもうひとつ、印象に残ったことが、冒頭陳述での検察官の言葉です。


冒頭陳述において、検察官は事実を明らかにするため、犯行の詳細な内容を説明します。


単に「わいせつな行為をした」または「強姦した」ではなく、具体的な犯行の内容を説明しなければなりません。


以下は検察官が冒頭陳述で発言した内容です。


検察官「被告人は、アルコールと睡眠導入剤により、心神喪失状態になった被害者Dの着衣を脱がした」


「手で胸を揉み、指で乳首をもてあそび、陰部をまさぐった」


「被害者Dの上に覆いかぶさり、陰茎を陰部に挿入し、腰を前後に動かした」


「被害者Dはそれらの被告人の行為により意識を取り戻したが、睡眠導入剤の効果により抵抗することができなかった」


それらの言葉をハキハキと述べる検察官の言葉を聞き、感心しました。


また、検察官は犯行の詳細を説明しなければならないため、1件目の犯行を説明した後、


『他3名に対しても同様の行為をした』


ではなく、


被害者1名ずつに対して、詳細な犯行の説明をしていました。


検察官は女性なので、きっと言いづらい言葉もあっただろうけど、事実を明らかにするために堂々を冒頭陳述する姿にとても感心しました。



しかし、ここで裁判が中断されました。


検察官による冒頭陳述の最中、被告人が警察官に対し、何やら耳打ちをしました。


被告人「。。。(小声で何かを言う)」


警察官「裁判長、被告人が体調が悪いと言っています」


裁判長「そうですか。それでは、少し休廷しましょうか。15分後に再開しましょう。それまで被告人は下で休んでください」


被告人「。。。(無言)」


裁判長「歩くこともできませんか?」


被告人「はい」


裁判長「それでは車いすを用意させます」


書記官(内線で)「すいません、車いすをお願いします」


法廷が妙な空気になりました。


検察官も驚いた様子で被告人を見ていました。


数分後、事務員と思われる人が車いすを押して法廷に入りました。


被告人は車いすに座り、車いすを警察官に押されながら退廷しました。


裁判長「それでは被告人の体調が回復したら再開しましょう」



その後、約30分間、法廷に無言の時間が流れました。


このまま本日は閉廷するかと思いきや、内線で被告人の体調が戻ったという連絡が入り、再開することになりました。


被告人は車いすに座ったまま証言台に着きました。


裁判は冒頭陳述の途中から再開しました。


検察官「被害者Dは睡眠導入剤の影響により、今も体調を崩し、学校では授業が受けられない状態である」


「被害者Dは自分がアルバイトに応募した事を後悔していると泣きながら証言した」


検察官の言葉を聞いてとても胸が痛くなりました。


この事件による裁判は数時間の出来事でしかないけれど、被害に遭った少女たちにとっては一生の傷になるのだろうと思います。


モニター募集のアルバイトは実際にたくさんあるから、被害者たちは このアルバイトを疑う事も難しかっただろうと思います。


検察官「また、被告人は被害者Eに対する強姦は否認しています。被告人は現在、糖尿病を患っており、勃起状態を長時間維持することができないと供述しています」


本当に、検察官の仕事には頭が下がる思いでした。


可能であれば、被告人に対し「女性の検察官にわいせつな言葉を何度も言わせた罪」も起訴状に追加してほしいと思いました。(もちろん無理です)


今回の被害者である女性の気持ちは、きっと女性である検察官にしかわからないことがたくさんあると思います。


それだけに、この検察官は厳しい気持ちを強く持って被告人に向かってほしいと思いました。


検察官による冒頭陳述が終わったところで、続きは次回に持ち越しという事になり、閉廷しました。


まだ、被告人質問や弁護人弁論など、多くの段階が残っています。


今回の公判ではほとんど発言しなかった弁護人も、次回以降に情状酌量(罪を軽くすること)を求めて一生懸命 弁護をすることだろうと思います。


被告人がこれまで、どのような人生を歩み、なぜこのような犯行に至ったのかはわかりませんが、厳しい罰を持って償う事を願います。


しかし、推定70歳前後の被告人にとって、10代と20代の少女たちに犯した罪は、一生をかけても償えるとは思えないのが悔しいと感じました。


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