子育て講座: 汐見稔幸先生「保育園時代に育てたい自尊感情」 | 前を向いて歩こう ~子育て、仕事、コミュニティ活動の徒然~

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1月28日(金)に、スケが卒園した保育園の子育て講座を聞きに行ってきました。卒園しても、OBのこういうリクエストに快く応じてくれる保育園は有難いです。

演題:「保育園時代に育てたい自尊感情」
   ~育てなおしはできるのでしょうか~
講師: 汐見稔幸(白梅学園大学学長)


●イントロ
親子関係を説明する言葉として、一昔前までは

 ・アタッチメント(愛着)
 ・自我

という言葉が使われてきたが、近年では「自尊感情(self seteem)」がキーワードになってきた。

自尊感情とは、何かの能力の有無ではなくありのままの自分を受け容れることである。欠点があってもOK。無理をしない、取り繕わない、そのままの自分のことです。(ママイキでいうところのBegingの部分。)

自尊感情がベースにないと、自信、自己有能感は育たない。

日本の子供の自尊感情が低いことは世界的にも特徴的だが、その背景は何なのか、どうやって自尊感情を育てていくか、というのが今回のセミナーの大筋です。

方法論をサクッと知りたい方は一番下をご覧ください。サクッと書いてあります。

【今の子供は受難の時代】~子供の育つ環境が昔と違う~

●「自己選択」、「自己決定」の場が少ない

・自分でやりたいことを自分で決める機会が生活の中で減ってきている
・自分が自分の主人公であると、思える機会が減ってきている。
 
なんだかんだで、家庭や学校の決められた枠組みの中での選択、決定に限定されている。学校や親は大人好みの行動を子供にとらせようとする。子供はそこからはみ出すことは是とされない。

⇒ 自己選択、自己決定は自尊感情を育むのに必要なプロセスであるにも関わらず、日常生活レベルからその機会が減ってきている。

なら、昔は子供は自己決定、自己選択ができてたのか?というと、次のような生育環境があり、自然と育っていました。

 昔の子供の世界: 「放牧」+「仕事」

放牧とは、文字通り、家の外で大勢の子供達と大人の監督※なしに群れて遊ぶこと。そこには異年齢の交流があり、お兄ちゃん、お姉ちゃん達と遊ぶにしても、自己主張の仕方、付き合い方などを自然と身につけて行った。(※近所のおじいちゃん、おばあちゃんが見守っていてくれる程度)

昔の遊びは、遊びと言えば外遊び。周りにはのびのび遊べる場所や自然があり、外遊びでは時に危険やスリルを伴うものもあり、危険へ挑戦したり、集中力や注意を要求される遊びなど(川遊びなどはその最たるもの)、五感を刺激され、遊びに工夫が必要な場面が随所にあった。

今やその逆で、足立区のある公園では「球技禁止」のみならず「声を出して遊んでは駄目」との立て看板までており、子供達は公園のベンチに座って黙ってDSやってるという状態。
(子供の声がうるさいと近所から苦情がでたらしいです。。)

昔は、家に帰れば家の仕事(手伝い)が待っており、どうやったらいかに早く、楽に済ませられるか”考える”場面も沢山あった。

つまり、「放牧+仕事」システムでは、子供は遊びや仕事のなかで人生を設計していく練習することができた訳です。

しかも、近所のおばあちゃんやおじいちゃんなどが程良い距離で見守っていてくれた。

今の時代はこの2つの技が使えない世の中になっており、それが現代の母親が子育てに精神的にも肉体的にも大変な苦労を強いられる理由になっています。

群れさせて遊ばせられない、子供に手伝いをさせられない状態で子供の体や心をしなやかに育てるのは母親一人では無理があるからです。


【ひきこもり、これからの教育】~20世紀のシステムのままの日本~

自尊感情と関連して日本には世界と比べて日本だけに見られる特殊な現象として「引きこもり」があります。

引きこもりについて、汐見先生はマイケル・ジーレンジガーの著書「ひきこもりの国」から「ひきこもりは、”日本”という20世紀のシステムに問題があることに誰も気がつこうとしていないし、気がつけないことが原因」との見方を紹介し、これからは人々の育て方を21世紀バージョンにしないとならないことを提唱していました。

そうしないと、日本は滅びてしまう!

だって、次世代を担う世代が100万人単位でいるのに、そのことが国民にあまりよく知られていないし、国民の関心も低い。そんな国は早晩滅びる運命は避けられないから。

世の中が変わってきているのに、日本は20世紀のやり方、価値観のままやっているので、一番敏感な若者が反応してひきこもりになっている。

どうすれば、ひきこもりが出てこない世の中になるの??


【21世紀バージョンの教育】~21世紀の学力とは「感じること・感性」~

21世紀に求められる学力とは、人間にしかできないこと大事なこと、すなわち感じること、感性である。

●21世紀に求められる新学力
・官能力(感じる力)
・表現力 (伝える力)
・社会力(エンパワーする力)


早い計算、大量の暗記など、コンピュータにできること(にしかできないこと)はコンピュータに任せればよい。コンピュータと競争してもしょーがない。人間にしかできないことを出来るように教育していくべき、ということでした。

先生は、イギリスの学校に入学した日本人生徒の宿題の逸話から、イギリスでは21世紀バージョンに教育の方向性がシフトしていっている例をあげていました。

フランスに関する発表をする宿題で、日本人生徒はフランスの国や人口などを調べたレポートを発表したが、他の生徒は、祖母から受け継いだフランス製の品物の説明や、フランス旅行で買った思い出のお土産の話などを発表。日本人生徒の評価がCだったことを質問した父親への先生の解答は「彼女は誰にでもできることをやってきただけだからCにしました。自分にしかできないことを発表しないとイギリスでは高い評価になりません。」でした。父、納得。

(ついでにいうと、発表はその子にしかない”ストーリー(物語)”になっているのが望ましいとのこと。前の週に聞いた、南壮一郎さんの話とリンクしているなぁと思いました。自分が自分の主人公、という前述の話もそうですね。)

「私にしかできない○○」
「私だからできる○○」

この点が評価されるのです。それが今の子供達が大人になってから役に立つと考えられているからです。

そして、「私にしかできない○○」の発表は、周りからの「彼の感性、イイネ!」の反応から「あ、僕/私の発表でいいんだ」と自尊感情、自信につながって行くのです。


【ではどうやって子育てすればよい?】~見守る育児・KKKH方式~

じゃあ、どうすればいいのよ?、というのが一番知りたいところだと思います。

一言で言うと、「見守る育児」

できるだけ子供に選ばせてやることです。大人の仕事は子供のジャマをしないこと。

子供の気持ちを大事にし、ありのままを認めること。(なんか、ママイキっぽい。)

見守る育児をするコツは、KKKH方式

「聴く」→「共感する」→「考える/考えさせる」→「励ます」

頭文字をとって、KKKH方式。

ちなみにKKKHというのは、野球用語で 三振×3+ヒットのことだそうで。
(よくわからん。笑。)

最後にこういうオチで締めるのはさすが、汐見先生。

講座中も、高度なオヤジギャクが何度も出ていましたが、皆、反応鈍いよ~。もっと笑ってあげようよ~。

私が一番受けたのは、「ひきこもりの数は自己申告なので実態が正確には把握できていないですが、云々。だから深刻なんですけど。」 でした。