日向製錬所による黒木睦子さんへのスラップ訴訟を支援しよう | 日向製錬所産廃問題ネットワーク

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住友金属鉱山㈱の子会社㈱日向製錬所が排出する「フェロニッケルスラグ」による公害問題を追求します 
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メールアドレス:hyugasanpai@gmail.com 代表 三浦ばんしょう

鬼蜘蛛おばさんの疑問箱ブログよりhttp://onigumo.sapolog.com/e427175.html


 (株)日向製錬所と(有)サンアイから提訴された宮崎県の主婦、黒木睦子さんは、2社の企業を相手に裁判で闘わなければならない状況に追い込まれている。彼女は今のところ弁護士を立てるつもりはないようだ。こうした状況を心配したり、また何もできないことをはがゆく思っている人がたくさんいるのではなかろうか。

 黒木さんへの提訴に関しては、明らかにスラップだと私は考えている。過去にスラップ訴訟を起こされたジャーナリストの烏賀陽弘道氏はスラップ訴訟を以下のように定義している。

「公に意見を表明したり、請願・陳情や提訴を起こしたり、政府・自治体の対応を求めて動いたりした人々を黙らせ、威圧し、 苦痛を与えることを目的として起こされる 報復的な民事訴訟のこと」(http://slapp.jp/slapp.html スラップ訴訟情報センター)

 原告である日向製錬所とサンアイは、フェロニッケルスラグによる健康被害や環境汚染を訴えている黒木さんに、ブログやツイッターの削除を求めているようだ。明らかに口封じを目的とした裁判で、どう考えてもスラップ訴訟だろう。

 前回の記事にも書いたが、少なくとも日向製錬所に関しては名誉毀損での提訴ということなので、黒木さんは「名誉毀損には当たらない」という主張をしていかなければならない。ただし、単に「事実であり、嘘は書いていない」と主張するだけでは名誉毀損が免責されることにはならない。事実であっても他者の社会的評価を低下させることを書いたなら名誉毀損になってしまうことがあるからだ。

 しかし名誉毀損が免責される場合がある。それは公開している事実に「公共性」があり、「公益目的」であるということ。また、公表した事実が「真実か、もしくは真実とは証明できなくても真実であると信じたことについて相当の理由がある」こと。これらの要件を満たしていれば、名誉毀損には当たらない。

 「事実の公共性」というのは、多くの人が関心を寄せるようなこと、といったような意味合いのようだ。問題が地域の環境汚染であり公害ということであれば当然公共性があるとみなされるだろう。提訴されてからツイッターのフォロアーが急増し、この問題をブログで紹介している人も複数いることなどからも公共性はクリアできるのではないかと思う。

 「目的の公益性」に関しても、フェロニッケルスラグの飛散によって子どもの咳といった健康被害が生じていること、またフェロニッケルスラグを埋めた場所の沈殿池から基準を超す有毒物質が検出されていること、そこから流れ出る河川が汚染されていること、周囲には畑や水田があることなどから公害問題と捉えられ、従って公益性があると言えるだろう。いずれにしても、裁判では公共性があり公益目的であることを主張していく必要がある。

 あとは「真実性・真実相当性」を主張する必要がある。これはフェロニッケルスラグが製品として扱われているのではなく廃棄物として埋め立てられていることとか、埋立地から流れ出る水から有害物質が検出されていることなどを立証する必要がある。沈殿池の水質検査結果は環境汚染の証拠となるし、粉じんが飛散する現場の状況写真なども証拠として役立つだろう。

 これらのことを踏まえて、この問題に関心を寄せている人ができる支援を考えてみたい。

 まず、「事実の公共性」「目的の公益性」に関しては、まずこの問題に多くの人が関心を持っていることを意思表示すべきだと思う。だから、ツイッターでフォローしたり情報を拡散することも支援につながる。これなら誰でもできると思う。

 公害であるか否かということも大きなポイントだ。公害問題であれば、もちろん公共性があり公益性がある。だから、環境問題であり公害問題であるという視点でブログ記事を書くことが彼女の支援につながるのではなかろうか。

 実際に現地に行って報告をしている東海アマさんや、公害の視点から黒木さんの裁判の記事を書いている方のブログなども、「事実の公共性」と「目的の公益性」を補強するものになると思う。黒木さんを支援したいと思う人は、「他の人が書いているから自分は書かなくてもいい」と考えるのではなく、自分自身でブログなどを利用してこの問題を取り上げてほしい。

東海アマさんの記事
日向製錬所 公害被害を訴える主婦へのスラップ訴訟問題 その1 

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【スラップ裁判】私も生きちょる人間です。こんな事されていい気せんです 宮崎フェロニッケルスラグ公害

(株)日向製錬所は昭和48年に公害防止協定を日向市と締結しているのに公害対策しない自治体。

金属製錬所のごみ=鉱滓がどれだけ環境を汚染し、今も昔も人々を苦しめているかという公害の現実を知る。

「グリーン・サンド」の主成分であるシリカと酸化マグネシウムの毒性などについて調べる。

 もうひとつの支援は、金銭的な支援だ。黒木さんが弁護士をつけない理由が経済的なものであるなら、それこそ多くの人が支援すべきことだ。ジャーナリストの烏賀陽弘道さんがオリコンからスラップ訴訟を起こされたときには、烏賀陽さんは知人友人にメールで知らせて支援を求めていた。そして彼を支援する組織が立ちあがり、裁判のためのカンパを集めたのだ。

オリコン個人提訴事件を憂慮する(オリコン個人提訴事件を憂慮し、烏賀陽弘道氏を支援するカンパ活動)

 もしかしたら黒木さんはカンパに頼ることに抵抗感があるのかもしれないが、公害問題であればそんな遠慮をする必要はまったくない。ジャーナリストですらこうして堂々と支援を受けているのだ。裁判というのはどうしても法的な知識が必要だし、闘い方というものがある。専門家の援助なしで立ち向かうのはあまりにリスクが大きい。まして公害問題を告発したことの責任を黒木さん一人が背負い込むようなことはあってはならない。

 黒木さんの本人訴訟で頑張るという決意は立派なことだとは思うが、気持ちや決意だけでは裁判に勝つのは難しい。たとえば烏賀陽さんの「スラップ訴訟情報センター」というサイトに環境保護運動攻撃のスラップ事例として「馬毛島SLAPP訴訟」の訴状や答弁書などの書面が掲載されている。以下は答弁書(PDF)

http://slapp.jp/PDF/Mageshima/toubensho.pdf

 こうした書面を法律の知識のない人が書くというのは至難の業だ。もちろん、答弁書や準備書面を書くのに専門用語を使ったりする必要はないが、相手は法律に基づいて主張しているのだから法的な知識が欠かせない。ここで不適切な主張や的外れな主張をしてしまうと取り返しがつかないことになりかねない。だからこそ、弁護士をつけることを検討してほしいと私は思う。

 幸い、三浦ばんしょうさんが中心になって「支援する会」を立ち上げるようだから、遠慮なく支援してもらったほうがいいと思う。どうしてもカンパは気が引けるというのであれば、法テラスに相談するという方法もある。場合によっては弁護士費用を立て替えてもらい分割で返済することもできる。弁護士をつけるなら、答弁書を出す前である今のうちだと思う。

 もちろん、金銭的な支援が可能な人はカンパで支援をしてほしい。証拠集めなどにもお金がかかる。このような企業相手の裁判では、相手はいろいろなことを仕掛けてくる可能性があり、とにかく黒木さんを孤立させないことが重要だと思う。

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