「皇室の名宝 1期」展示物
永徳、若冲から大観、松園まで



サブタイトルがすべてを物語っている展示会でした。


近世以降の日本美術界の重鎮の作品がずらりと並ぶ様は圧巻。さすが皇室といいたいところですが、これらは全てが初めから皇室に属していた訳ではなく、歴史の紆余曲折により、皇室の保護下に収まったものがかなりあります。

一階の映像コーナーでは、修復作業や、その副産物として歴史の「もしも」を垣間みることができます。10分に満たない短いものですので、ぜひご覧ください。おすすめです。


さて、皇室の御威光のせいか、珍しく人の波に捕まってしまったひな子ですが、とりわけ伊藤若冲の「動植綵絵」の前では大変でした。

彼の絵を知る人にはいうまでもないことですが、精緻で迫りくるかのような色彩の乱舞がこれでもかとずらり30幅並ぶ様はまさに圧巻。彼の生涯においても記念的な作品群といわれるだけあり、掛け軸からいまにも羽ばたきだしそうなあでやかな鳥たちと枝葉を伸ばしそうな木々草花々を見ているとため息がでます。

「掛け軸の前で立ち止まらないでください」という注意の声を何度となく耳にしました。


展示物の構成は

第1章 近世絵画の名品
第2章 近代の宮殿装飾と帝室技芸員

となっています。


第1章 近世絵画の名品

絵画の大物はおおよそここにあります。まさしく、混み混みスポット。

見所は、展示作品No.4 唐獅子図屏風
狩野永徳が右隻を、ひ孫の狩野常信左隻を描いています。猛々しい獅子をものした永徳に対し、やわらかでいささかかわいらしくもある常信の獅子は、狩野派の変遷を凝縮して見せてくれます。

展示作品No.5 萬国絵図屏風
17世紀初期の日本の指導者層が持っていた世界観が読み取れます。映像コーナーで取り上げられている作品です。

展示作品No.7 動植綵絵
これだけ伊藤若沖が並ぶ機会はそうそうありません。質の高さも必見です。この作品も映像コーナーで取り上げられています。

展示作品No.17 花鳥十二ヶ月図
各々の月に対応した植物と鳥が描かれています。同じ掛け軸でもパラノイアを思わせる集中力の若沖に対し、程よく流した感じがする酒井抱一の作品です。


第2章 近代の宮殿装飾と帝室技芸員

花瓶や置物、短刀等工芸品が多く展示されています。近代の作品ということで、横山大観や上村松園の展示はこちらです。

展示作品No.43 矮鶏置物
詩人で彫刻家でもあった高村光太郎の父、高村光雲の作品です。鳥の羽一枚一枚が実にリアルな質感で、本当にこれを人間が彫ったのかと、技術の高さとそこから滲み出るプライドを実感します。

展示作品No.51 菊蒔絵螺鈿棚
通常の工芸品の場合、華やかな装飾は視界に入りやすい天板や側面に施して終わりというのが一般的ですが、下から覗いた天板の底面にまで立派な細工が施されています。さすが明治天皇の御下命を受け11年もの歳月をかけて作られた作品です。


予告します。

11月3日(祝日)最終日、めちゃ混みますよ。



東京国立博物館「皇室の名宝」展 一覧
(1)東京国立博物館 平成館
(2)「皇室の名宝 1期」展示物
(3)東洋館別棟1階 レストラン ラコール
(4)平成館 休憩所 鶴屋吉信
(5)「皇室の名宝 2期」展示物
(6)法隆寺宝物館1階 ホテルオークラ ガーデンテラス
(7)平成館 常設展
(8)法隆寺宝物館 常設展