■ 『ポンダンポンダンLOVE』後編(2)完結

 

連れてこられたのは、《集賢殿》の一室。

「母音と子音を合わせて28文字作った。これから すべての民がこの文字を使うこととなる。習いたいものは誰でも習うことができるのだ」

部屋一面に、漢語の文章にハングルをあてた紙が吊るされている。

“ハングル誕生”の歴史のその場所に立ち、感動を覚えながら、ひとつひとつ見回すダンビ。

「座れ」

ダンビのお団子ヘアーにかんざしを挿し、その前に跪く世宗。

「ずっと余の傍にいてくれ。これは、本当の王命だ。余が初めて、訓民正音で書いた文字だ。お前の名を考えた。」

巻物を手に取るが開かないダンビ。

「雨が降ったら帰りたいんです・・・もうすぐ雨が降ります。帰っても答えは出ないけど、するべきことがあるんです。王様のように、私を信じて待っている人がいます。母にとても会いたいんです」

戸惑う世宗。

「それなら、これはどうじゃ。会ったら、また戻ってくればいい、全員、ここで暮らしてもよい」

首を横に振るダンビ。

「逃げたまま、生きていけません。」

「では、お前にとって、余は何なのだ?」

「・・夢」

「夢?目覚めたら終わる夢だというのか」

かんざしを抜き、世宗に返そうとするダンビ。

ひとしずく世宗の目から涙が。

「これは王命だ」

それでも差し出すダンビ。

「余の頼みでもある。」

 

「ごめんなさい・・・」

必死にこらえていた涙が溢れ出すダンビ。

「確かに、未来とやらのほうが、干ばつや疫病だらけの朝鮮より、暮らしやすいだろう。わかった。好きにするがよい」

 

世宗が立ち去った後姿を、一人、見つめるダンビ。

<私が初めて本気で好きになった夢のような人・・・>

 

広場に佇み、放心状態の世宗。

 

残された巻物を開きかけた瞬間、後ろから棍棒で殴られるダンビ。

倒れたダンビの背に、剣が突き刺さる。

 

~王妃の居室~

「なんとおっしゃられました?御父様」

「憂いは、芽のうちに摘み取るべきです」

「嫌です」

「しっかりなさいませ」

「話し相手のいない後宮のなかで、はじめて友ができたのです。私に願いはないのかとお聞きになりましたよね。いつも夢はないのかとお叱りでしたでしょう。私の夢は、これ以上ここで1人で寂しく暮らさないことです。お父さん」

娘の言葉に、すこし揺れる父。

 

~集賢殿~

書物が床にぶちまけられる。

爆薬がその上から掛けられ、火が放たれる。

 

朦朧とした意識の中で、世宗からもらったかんざしを握り締めるダンビ。

 

「王様!!」

ダンビの一大事を知らせに走ってきた王妃。

 

世宗が集賢殿に駆けつけると、すでに火の手が。

近づくことすら出来ず、すぐさま、書庫側の秘密通路から集賢殿にむかう世宗。

火の海の中、倒れているダンビを見つける世宗。

抱き上げながら

「こんな危険な場所に残れ、などと、お前を引きとめようとした。すまない」

 

翌日、かろうじて建物はなんとか骨組みが焼け残った程度で、あとは一切燃えてしまった集賢殿。

 

「王様・・・」

消火に携わった学者や学士たちがその場に控えている。

「作業場から砲弾が消えたと聞いた。 余は火砲を改良するように命じたが、どうなっておるのだ?」

ヨンにたずねる世宗。

一緒になって、ヨンに問いただす王の側近。

「一体、誰の指図を受けた?」

 

「王様。間者を未然に防げなかった私を罰してください」

側近の言葉に、2,3度頷く世宗。

「そうだな、そうすることにしよう」

え?と一瞬たじろぐ側近。

「罰してください」「殺してください」は、決まり文句のようなものなのに。

側近の手をつかみ、指先を見ると火薬で汚れている。

「火薬の汚れの落とし方を教えなかったようだな?」

「申し訳ございません」

ヨンがはじめて口を開きました。

 

「理由はなんだ?」

「王様、一番、お傍で王様をお助けしてきた私が・・・」

「この者の声であったか?」

内侍姿で控えていたダンビが前に進み出て、「はい」と一言。

「お前は・・・」

殺したはずのダンビの出現に声も出ない。

「どうやって、お前が・・・」

袖を下ろすと、刀傷の付いた『数学の定理』が・・・。

これのおかげで刀が貫通しなかったのね。

(無駄に分厚いわけじゃなかった・・・)

 

「一瞬で燃え上がるだろう。いくぞ」

倒れた中で、その声だけは耳に残ったダンビ。

顔は見えてなくても、声だけで認識できるくらい聴力に自信があるのは『覆面歌王』で実証済み。

「私は、数学は苦手でも、声なら当てられます」

 

「一番、近くで余を助けてきたお前が、どうしてだ?」

 

跪く側近。

「王様。“訓民正音”(フンミンジョンウム)が完成すれば、民たちは自分たちで考え、知識を分け合うでしょう。道理と掟のない恐ろしい世が来ます。すべてが変わることでしょう。死ぬことは恐ろしくありませんが、使い道がなくなる我々の将来が心配なのです。」

 

「どんなことが起ころうと、余は民に文字を教える。そして、民の考えを尊重する王になるのだ」

世宗自らも、側近にあわせて、しゃがみこむ。

「使い道がなくなるだと? 人はもっと尊いものだ。まだ起きてもいないことを憂うあまり、今日を逃げてはならない。世間での役目だけにとらわれることは、やめるのだ」

世宗の言葉が身にしみるダンビ。

「王様・・・どうぞ、私を殺してください」

「どうか殺してください」

 

立ち上がる世宗。

 

内侍の衣服一式を、内侍長に返すダンビ。

世宗のところに来るダンビ。

 

世宗にプリントを見せるダンビ。

「王様の夢です」

そこには、一文字一文字の成り立ちや意味が記されていました。

 

「すべて焼けたはずなのに、一体どうやって・・・」

「王様の夢のおかげで、朝鮮にいるすべての人が読み書きが出来るようになります。」

じっと、それを読み進めている世宗。

「私たちは みんな王様に感謝して誇りに思っています。だから、悲しまないで。」

「お前の言葉は本当だったのだな。お前が言っていた未来。」

「やっと信じてくれましたね」

「これで、余の夢は一生かなわなそうだ。余の夢であるお前を、もとの場所に戻すのだからな。いくら考えても答えが出ないのなら、それが答えということなのだろう」

 

遠くで雷雲の音が聞こえ、空にも雨雲が立ち込めはじめている。

「3年ぶりに、大雨が来そうだ。なぜ、わかったのだ?」

「なんとなくそんな気がしました」と答えるダンビの視線の先には、足を引きずって歩く内侍長の後姿が・・・。

 

~回想~

「雨のせいで脚が痛いな」

ポンポンと叩きながら、教壇を降りる数学教師。

 

「あ~あ、数学ができなくてもここでは困らないのにね」

「行こう。行けるところまでは一緒に行こう」

「いいです。大丈夫ですよ。」

聞き入れない世宗。

「調子に乗るな。王命だ」

 

ヨン兄弟ともお別れです。

弟くんにペンケースを渡すダンビ。

「元気でね」

ヨンにも挨拶を。

「帰りますね。」

手を差し出され、握手するダンビ。

「今までありがとう。友達」

「なんだよ。」

「え?」

「部屋代は?」

「最後まで何言うのよ」

お互い、笑顔。

「俺の名前は、ヨンだ。・・パク・ヨン。」

最後の最後に自己紹介(笑)

「え? チャン・ヨンシルじゃないの?」

「何だよ」

頭のなかで「?」が飛び交うが、教科書の世宗のページを思い出すダンビ。

 

“世宗大王の偉業とチャン・ヨンシル”の隣のページに、“朝鮮時代の音楽の天才 パク・ヨン”

 

「じゃあ、絶対に音楽を諦めないで! いい?わかった?じゃあ行くね。やりたいように生きてね。 ふたりともさよなら」

 

ペンケースの中に入っていた大金をヨンに見せる弟くん。

 

ダンビを馬上で待っていた世宗。

「前に乗ったらだめですか?」

手を差し伸べる世宗。

 

雨の到来。

ダンビに刳り貫いてもらった絵に、雨の景色をあわせ、笑顔になる王妃。

王妃の描いた夜空の版木を、縁側に出して眺めながら、手で雨のしずくを受けるヨン。

 

雨の中、砂浜を2人っきりで楽しむ二人。

世界一大きな水溜りに雨が落ちています。

 

波打ち際で、ダンビを抱き上げ、最後のキスを交わす世宗とダンビ。

笑顔で、何度もうなずくダンビ。

「ボチャン・・・」

世宗の腕の力が抜けたとき、ダンビの姿は消えていました。

 

「いつか必ず余が会いに行く。どんなに時間がかかっても・・・」

 

もとの公園の水溜りに浮上したダンビ。

足元に転がっていたサッカーボールを拾い上げる。

呆然と見ていた男の子(朝鮮時代の弟くん)に投げ返してあげる。

 

幸い、もとの時間に戻ってこれた様子。

雨の中、ずぶぬれで大学目指して、走るダンビ。

試験会場の教室のドアを開けると、そこには、王の側近そっくりの試験監督官。

「なんだね、君は、こんなギリギリに。いいから、早く席に居つきなさい」

 

試験が始まり、問題文を読むダンビ。

<この者は巧みな手腕を持つだけでなく、頭脳が優秀だったため、講武の際に隣においては内侍の代わりにも重用した。功はそれだけに非ず、自撃漏を作るにあたり、余が指示をしたが、この者がいなければ完成できなかった>

 

~回想~

<官職を与えるなら名前が必要でしょう>

「それでは、ヨンシルと名づけよう」

はははと笑い出す高官。

「英(ヨン)知に富み、実(シル)がなるという意味ですな」

「そうではない。本当に嫌いという意味じゃ」

言い訳に苦笑する高官。

隣の王妃アッパの、何がおもしろいんだっていう顔・・(笑)

 

<余が初めて書いた文字だ>

장영싫

 

涙ぐみながら、영실チャン・ヨンシルにマークするダンビ。

 

<お前の名前を考えた>

試験後、巻物を初めて開く

영실じゃなくて、영싫

雨は上がっていました。空を眺めるダンビ。

 

そっと家の門を開けると、庭で洗濯物を干しているオンマの姿が・・・。

何も言わずに近づいたダンビをただ、抱きしめてくれるオンマ。

大きく写った家族写真には、アッパ、オンマ、小さな頃のダンビ。

 

浪人生になったダンビ。

コンビニでバイトしながら、売れ筋商品の並び替えをしながら、競争社会を嘆いています。

お団子ヘアーには、世宗からもらったかんざしが。恋の矢

 

「ねぇ、私が通った塾に申し込みした?」

相変わらず、カップめんをすするソウ。

「大学生は黙ってて!」

「浪人生や、よくみてごらん」

「ん? これなに?」

携帯を見せるソウ。

『ポンダンポンダンLOVE』

ダンビの夢の話(!?)を元に、web漫画を投稿したら、いまや大人気。

 

「でも、世宗大王には、女が大勢いたらしいわよ」

「ええ?」

「関心を持った宮女とかに、みかんあげて、こどもは20人以上もいるの」

 

「(小声で)幸せに過ごせたならよかったわ」

戻ってきてから、世宗のこと、調べなかったのかな?

見るのが怖かったのかな?

 

「あれ見て。すごいイケメン」

テレビで歌う男性歌手に、満面の笑顔のソウ。画面に映るのは、ヨンそっくりの歌手。

5~600年経っても、男の趣味は変わらないのね(笑)

「君は僕の恵みの雨(タンビ)みたい~~♪」

 

バスを降りると雨。

傘も差さずに、信号待ち。そっと、水溜りに足を入れてみても、何も起こらない。

すこしがっかりするダンビ。

そこに、傘が差しかけられる。

それよりも、その人が 世宗そっくりの青年で、驚くダンビ。

「俺たち、会ったことありますよね?・・・かなり前に」

「え?」

ああ、このとき、雨が逆回転を始めるの!

 

入試の朝、バスの中で、見るからに受験生の女の子が最後の悪あがきで、必死に教科書を開いているのを見て微笑む青年。

ひざから落ちた教科書を一緒に拾い上げてくれたのも、この青年でした。

お礼もそこそこに、慌ててバスから降りたダンビ。

忘れられた黄色い傘がそこに・・・。

 

そんなこんなで、再度、バスで見かけたダンビを追ってきた青年。

どこでめぐり合おうとも、いつ再会しようとも、恋に落ちることは決まっている2人。

自動車の水しぶきから、盾になって守ってくれた青年と見つめあうダンビ。

 

黄色い傘の下で幸せそうに微笑む2人。

 

 

★     『ポンダンポンダムLOVE』後編(2)完結★

 

うちの家族は、「タイムスリップ物で、ケータイや教科書や文具、菓子まで持っていけるなんて、随分、ぬるい設定だな」とバッサリ。(笑)

「うん。時空を超えた社会科見学みたいなもんだから」と答えておきましたが、まぁ、持参品はコミュニケ-ションツールで、歴史的観点で有効的に使えてたわけじゃないからね。それどころか、現代でハングルが普及している説明を世宗に告げるのを最後に持ってくるとか、歴史として隔てられている部分とかを、抑え気味にしたところもよかったです。

 

2人は、実際には結ばれることはありませんでしたが、視聴後の爽やかさはピカイチです。

生まれた時代で、お互いなすべきことをするという選択が、潔くてちょうどいい感じでした。

(似たようなラストであっても、『屋根部屋のプリンス』のときは、全20話あって、世子とパッカの積み重ねがあったので、あまり賛同できなかったのですが・・・。あ、ドラマ自体は、悪役カップルのエグさ以外は、すごく面白かったです)

 

海でのお別れのシーンや、雨の逆回転など、美しいシーンも多く、可愛くて素敵なドラマでした。

ユン・ドゥジュンも、ファイティン!