■ 最終回(第20話) 一筋の光

 

自分の命を懸けて、クィを倒す決意をしたソンヨルは、黒衣団を集め、自分がクィと戦っている間に地下宮殿を爆破せよと指示する。

一方、ヘリョンを失ったクィのショックの大きさは、計り知れません。

「キム・ソンヨル、早く俺を殺しにこい。」

 

死体の山の中で、呆然としているクィをみた領相。

「狂ってる。すぐに終わらせてやる」

 

クィはソンヨルを迎え撃つため、宮中の人々をすべて吸血鬼に変えてしまう。

 

ソンヨルの屋敷でも、ヘリョンの死を受け入れがたい男、ユンが部屋にこもっている。

 

再び、男装し、屋敷を出ようとしているヤンソンを スヒャンが引き止める。

「旦那様のところに行くつもりなのね」

「学士様は、クィと戦って死ぬかもしれません。私の血が必要です。」

「それがどんなに危険なことか、知っているでしょう。もし、クィに利用されるようなことになったら・・・」

「そのときは、私は自分で命を絶ちます。」

 

ユンが部屋から出てくる。

ホジンが必死にとめる。

「だめです。この国を導く方を失うわけにはいかないというのが、最後の主命です。私も本当は、旦那様とともに命を捨てる覚悟でした。私を妨げるのであれば、王命ではなく、いっそ、私を殺してからお行きください」

 

「学士様を愛しているからだけではないのです。」

自分が、クィを倒す3つの秘策のうちの一つだということをきちんと理解しているヤンソン。

そこへ、ヘリョンの配下の者が、ユンをたずねてやってくる。

「陛下にお会いすることはできません」

「緊急なのです。宮殿が血の海になったと、宮女から知らせがありました」

部屋から出てきたユンがそれを聞いてしまう。

「すぐに、宮殿に戻らねば」

私も行きます。今、学士様を守れるのは私しかいません

「陛下、お願いです。ヤンソンを連れて行ってください。この子を止められる人はいません」

「わかった。しかし、一つ約束してくれ。今、死ぬことは考えてはならぬ。私は、キム・ソンヨルとそなた、二人の友人を失うことはできない。わかるであろう?」

ユンは、ヤンソンとホジンを連れて宮殿へ。

 

成均館の儒生や町の人々が、宮殿に押し寄せる。

「門をあけろ。吸血鬼なんかを守る必要はない」

その騒ぎに乗じて、爆発物を宮殿に持ち込むことに成功するソンヨルたち。

 

地下宮殿に クィの気配を感じないソンヨル。

しかも、皇宮に入ってから、ここに来るまで、警護する人間にも一人も会っていない。

なにかがおかしい。

私が、地下宮殿の中を見てくるから、周囲を見張るのだ。

 

地下宮殿に、クィの姿はない。

これは罠か。

吸血鬼化した兵士がソンヨルに近づく。

 

~皇宮外門~

門の外では、領相に気づいた儒生たちが、クィに服従する領相を攻め立てるが、全員捕えるよう、命令を下し、自分は、宮殿へと入っていく。

 

「やめるのだ」

「王様だ」

ユンが それをやめさせる。

門を護衛している兵士に、宮殿の中の様子を知っているか尋ねるユン。

兵士や人々がこうして外で傷つけあっている間に、中で何が行われているのか、吸血鬼であるクィは宮殿の中にいるのだぞ。我々は、中に入り、クィを退治しようとしているのだ。

人々に害を与えるものを受け入れ、自分たちの王とし、保護するのが君たちの仕事なのか?

早く門を開けるのだ。

 

~地下宮殿~

吸血鬼にされた兵士たちが、ソンヨルに襲い掛かるが、すべてサンザシの剣で始末する。

なぜ、早く気づかった。そうだ、宮殿は吸血鬼だらけなのだ。

 

~皇宮外門~

ユンの言葉に、門を開ける兵士。

入ろうとする皆に向かい、この中に入るのは、とても危険だ。万が一、日没後にも我々がここを出てこなかったら、そのあとに出てくるものは、すべて吸血鬼だと思いなさい。その時には、そなたたちの手で、そいつらをここで食い止めるのだ。

ユン、ヤンソン、ホジンの3人が皇宮に入っていく。

 

領相は、自分の財産の確保だけではなく、宮殿の隠し財産を取りに来るが、クィが待ち構えている。

「殺す価値もないとほっておいたが、地獄へ落ちろ」

領相を殺すクィ。

 

銃を手にするユンたち。ホジンは完全にへっぴり腰。

「お前は持つ必要ない」

ヤンソンを止めようとするユン。

「自分の身は自分で守らないと。当然の権利です。でも、どうやったら、正しく撃てますか」

と聞いているそばから、敵兵が入ってくる。

「陛下 危ない」

反射的に撃ってしまうヤンソン。

「あ、ありがとう」

 

閣僚たちが、すべて吸血鬼化している。

ヘリョンの部下が ユンたちを助けようと犠牲になる。

「陛下、ヤンソンを連れてお逃げください」

扉が開かないように、身を挺して、守るホジン。

ホジンもまた、身を投げ出そうとしたところに、ソンヨルが駆けつけ、宮中を埋め尽くす吸血鬼を倒す。

ヤンソンがいることに気づき、

「ここに何しに来た?危険だということがわからないのか。すぐに ホジンとここから出なさい」

 

「大丈夫か」

ソンヨルに声をかけるユン。

「大丈夫です。この宮殿にいる吸血鬼は 一人を除き、倒しました。そろそろ、我々のことに気づいているでしょう。私は、奴を地下宮殿に誘い込みます。我々が中に入ったら、爆破してください。それしか方法がないことはご存じでしょう。これ以上、犠牲を増やすことはできません」

「わかった。これは 王の剣だ。これがなければ、先祖に顔向けができない。だから、地下宮殿が崩落しても、絶対にこれをもって戻ってくるのだ」

「私のせいで、計画を遅らせることはできないのです。いいですね、そのときが来たら、躊躇わずに実行してください。」

頷くユン。

 

「ここからは私一人でいきます。学士様を助けてあげてください」

「危険ですよ。」

「大丈夫。だって、人の気配なんか全然しないし」

 

クィの気配を感じるソンヨル。

「太陽がでるまで、私を待つつもりだったか」

「こんなふうに、人の命をもてあそぶなんて、その痛みを10倍にして思い知らせてやる。」

「吸血鬼が人間をおもちゃにして何が悪い」

 

「随分、疲れているようだな、キム・ソンヨル。脱出する方法も忘れたのか」

 

クィを地下宮殿に誘い込む。

そこに現れたのは、ヤンソン。

「ここで、なにをしている。クィがもうすぐ来るのだ」

ヤンソンは地下宮殿でソンヨルを待ち伏せ、クィとの戦いに備えて自分の血を吸ってほしいと告げるが…。

「学士様こそ、私の気持ちがなにもわかってない」

「そなたに会う前なら、なにも考えず、クィを殺せていた。しかし、今は そなたを守るために戦う」

「あなたは私を失うことはありません。ですから、絶対に、クィを倒さなければ。さぁ、早く」

「私は そなたを愛している。だからこそ、守りたいのだ。お前を忘れたりはしない。必ず覚えている。その心を失うことはない」

口づけをしてから、ヤンソンの首元に噛みつくソンヨル。

強く抱きしめあう二人。気を失うヤンソン。

ヤンソンの血を取り入れたソンヨルが変容する。

 

 

「とうとう、その子の血を飲んだか。しかし、俺を倒すためには、それでも足りないものがあるんだろう」

クィがやってくる。

「どうした? お前の恋人の血を飲んでも、その程度か? 全部飲干すまで 待とうか」

状態が安定せず、苦しがるソンヨル。

ヤンソンに近づくクィ。

銃で狙うユン。弾を手でつかみ、サンザシの剣で向かってくるユンを突き飛ばすクィ。

 

「これで 3つの秘策がそろったというわけだな」

あら、黒ソンヨルがまた、現れたね。

サンザシの剣で、自分自身の太ももを傷付けると、同じく黒ソンヨルも太ももから血を流し、苦しみはじめた。

「私は、人間であり、獣なのだ。」

焦点があったソンヨルが、クィに向かっていく。

ユンに向かって、目で、ヤンソンを連れて逃げるように、合図をおくる。

ちゃんと、人間を保っているのね。

 

ここから一歩もでられないようになる。ここが俺たちの墓場だ。

なぜ、そんなに生きたい?

理由がいるか?不死の力をもち、望みをすべてかなえるまでだ。

 

結局、望み通りになっていないということだな。こんな長い間、生きていても、なにもしてこなかったということか。となれば、長い間、死んでいたものと同然だ。

私は、お前よりも遥かに短い一生だったが、晴れやかだったぞ。

 

地下宮殿の外まで、ヤンソンを運んでくるユン。

「ヤンソンを頼む。私は 爆破の用意をしなければ。」

ホジンにヤンソンをたくすユン。

 

死闘を繰り広げるソンヨルとクィ。

さて、どうしようか。

 

夜明けを確認したユンが導火線に火をつける。

 

地下宮殿の崩落が始まった。

何してる

もうすぐ、この戦いも終わる。

ああ、そのとおりだ。

 

日差しが差し込む。

クィが呆然とし、崩れ落ちる。

ふっと、笑みを浮かべ、差し込む光を見つめる。

本当に美しいな。

 

ソンヨルもまた、ヤンソンとの日々を思い返す。

獣のような人生の中で、お前のおかげで 美しい光をみることができたのだな。

 

すべてが崩れ落ちる。ホジンがへたり込む。

気がつくヤンソン。

「気が付いたか?」

「学士様・・・学士様はどうなりました?」

ただ、泣くだけのホジン。

崩れた宮殿をみるヤンソン。

「まさか、あの中にいらっしゃるの?助け出さなきゃ。」

「旦那様をここから見送りましょう。彼の人生は、本当に辛く、大変でした。でも、ヤンソンのおかげで、幸せだったとおっしゃってました。」

泣き崩れるヤンソン。かける言葉もないユン。

 

門の内側から、音が聞こえる。

兵士がたずねる。

「人間か、それとも吸血鬼か」

スヒャンが門の前にくる。

「吸血鬼なら、あけてくれなどと合図はしません。早くあけてください。」

ユン、ヤンソン、ホジンの3人が出てくる。

ソンヨルがいないことに気づき、その意味を知るスヒャン。

座り込むスヒャンを支えるホジン。

ホジンとスヒャン、ずっと ソンヨルを支えてきた二人にしかわからない絆です。

 

1年後

 

町は平穏を取り戻している。

「市場は今日もにぎやかだな。チンピラがいなくなって、搾取されなくなったしな。」

夜学士伝の新作の噂も聞こえてきている。

 

華陽閣も元通り。

儒生らしき人物が、キム・ソンヨルという人を探しに来たのだ、と出迎えた妓生にたずねる。

「そんな人、ここにはいませんわ。」

「全てを承知で来ているのだ。早く案内しなさい。」

そこへ スヒャンがやってくる。

「誰もが会える人ではありませんよ。みたところ、ブローカー(冊契)ではなく、儒生のようですが?」

「見つけなければならない小説があるのです。お願いします。」

「こちらについていらしてください。」

ああ、いつぞやのソンヨルのように、御簾越しに座っているホジン(笑)

 

「たいそうお金もちのようなのに、どうして 隠れて暮らしているのです?」

「私は、一時的に預かっているだけです。いつの日か、その方が戻られたら、すべてをお返しするつもりで、守っているにすぎません。」

そういうことなのね、しみじみ~~。

「その方はどこにいますか?会うことはできますか」

「さぁ、100年くらい待っても、会えるかどうかわかりませんが、その時は大混乱ですよ。」

 

多くの伴を従えて宮殿を歩くユン。

「王室の図書は、過去の遺物というだけではなく、未来だ」

王室の図書館の管理を徹底するように、と命じると、こんなものが市中に出回っています、と 『夜学士伝』を見せる家臣。

「回収して燃やし、関係者を処罰すべきでは?」

「歴史に残る者だけが正しいわけではない。そなたも、もうすこし、世の中をひろげてみては?楽しむものもあっていいでしょう。」

 

ヘリョンのかんざしを見るユンの傍らには、立て掛けられた王の剣。

少し微笑みながら、玉座に一人座るユン。

 

ハングル教室の先生をしているヤンソン

よそ見をしている子に注意する。

「こら。何をみているの」

「この月光の騎士をかいたのは、先生だって聞きましたよ。」

逃げ出す男の子。

 

ふと、気配を感じ ソンヨルを探してしまうヤンソン。

 

丘の上にやってくるヤンソン。

目の前には、たたずむソンヨル。

ふっと微笑む。

駆け寄るヤンソン。

 

「すこし遅れたな」

「もう来たんですね。50年くらい待つのかと思ってました。さて、どこに行きましょうか。私はあなたと一緒であれば、どこへでも」

「しっかりつかまっておれ」

 

★おわり★

 

太陽を浴びて、クィが消えていきました。

私的なクライマックスは、ラスト前の19話でしたので、この最終回については、無難な感じで見届けた想いです。

 

レビューの予定はなかったのですが、クィの魅力でついつい(笑)

英語訳を見ながらだったので、おそらく、ニュアンス違ってると思います。

意訳も交えて、かなり雑な感じになりましたが、考えてみれば、20話のボリューム、それなりでしたね。

 

さて、年内のレビューアップはこれでお終いです。

ちょっと、お正月のんびりしたいので、ボクチュやトッケビなどのアップの前に、別のストック分をあげる予定です。

ではでは、よいお年を~~♪