■ 第17話 善なる心
~地下宮殿~
クィは自分の子孫であるヤンソンをソンヨルの前で殺そうとする。
「学士様・・・」
震える声と視線の先に、ソンヨルが現れる。
「ついに来たな、キム・ソンヨル。お前は、この娘が私を殺す秘策だったと知っていたのか」
それには答えず、なぜ、ここにいるのか、スヒャンに問いただすソンヨル。
「彼女も、お前の配下なのだろう」
ま、気づいてないはずがないよね。
「いや、彼女は関係ない。その娘と一緒に放せ」
「どうして 俺が?すでに、秘策だと知ったのに?ちょっとひねれば、簡単に死ぬぞ」
ヤンソンの鎖骨あたりに、指を突き立てるクィ。痛みに悲鳴をあげるヤンソン。
「どうだ?恋人のこんな姿を見せられて、血が煮えくり返っているだろう」
「誰かおらぬか。」
意識の戻った領相。
「ネズミが 宮殿にしのびこんだぞ。至急、官軍を集めるのだ」
こと切れているハギョンと 噛まれて吸血鬼の形相になった左相の姿をみるユン。
すまない。心の中で詫びながら、サンザシの剣で刺し、左相の止めをさす。
「陛下、大変です。官軍は領相の指揮下になりました。」
「まず、この死体をかくせ。それから、正当な判断力のある王室の護衛武士たちを集めるのだ。」
~地下宮殿~
「まさか、俺の血筋がまだ生き残っていたとは・・・。それも期待外れだったな。なにしろ、ほとんど 俺が吸い尽くしたようなものだ。この子の血を飲めば、俺が死ぬと本気で考えていたのか?」
ヤンソンに噛みつこうとするクィに、「やめろ~」と渾身の力で刃向い、必死にヤンソンを取り戻すソンヨル。
「さて、どうしたものか。この子の血を自分で飲むか? それとも、この子の前で、お前を殺すか? 昔のことを忘れてないだろ」
「黙れ~~~」
領相が官軍をしたがえて、地下宮殿の入口までやってくる。
「こんなところで、何をされているのですか 王様」
「寺から戻ってきたところです。私の不在中に、騒ぎになっているようだが」
「キム・ソンヨルが侵入したのです」
「なんだと」
「本当にご存じなかったのですか」
とことん、嫌味な人です。
ソンヨルがだいぶ、弱っていることに気づくクィ。クィに立ち向かったソンヨルはあっけなく倒れ、失神する。ヤンソンの呼びかけにも応じない。
「どうも、長いこと、人間の血を吸っていないようだな。人間の心とやらのせいか。お前がそいつを弱くしたということか?」
ヤンソンは彼を救うために、自分の血を飲ませる。
「人間と吸血鬼の恋の終わりは、吸血鬼の血に染まってしまうことだ」
ところがその瞬間、ソンヨルは狂暴な吸血鬼に豹変。クィの動きも封じ込めるほどの回復ぶり。
「あんな学士様の目、はじめてみました」
「あれは、あなたの知る旦那様ではないわ。今のうちに、ここから逃げましょう」
スヒャンに急き立てられ、地下宮殿をあとにするヤンソン。外に出てきたところで、ユンと領相に会う。
「なぜ、怪我をしているのだ」
ヤンソンを気遣うユン。
「その娘を捕まえろ。」
官軍たちをとめるユン。
「なぜ、とめるのです。クィ殿への貢女でしょう。もしや、クィ殿にさからうおつもりなのですか」
「私が この国の王だ。そなたがしようとしているようだが。それは王への反逆だぞ」
「王への反逆?」
笑い出す領相。
「かまわぬ。この娘をつかまえろ。捕まえたものには、誰であれ、報奨金と高い地位をとらせるぞ」
「そなたにそんな権利があると思うか 王に剣を向けた瞬間から、逆賊だぞ」
「あなたが、傀儡の王であることを拒否したということは、もうすでに、王ではないということです。何をしている、早くつかまえろ」
官軍たちに素手で立ち向かうユン。
「自分の兵士を傷付けたくない。」
「もう ここには、あなたの命令をきく者はおりません」
ヤンソンの血ってすごいのね。ちょっと、口に含んだ血だけなのに。
吸血鬼が 吸血鬼の血を体内に取り入れると、こんなにパワーをもつなんて・・・
クィが劣勢です。
一人で官軍を相手に、戦うユン。ようやく 王の護衛武士が駆けつけました。
「ここは、我々が時間をかせぐ。すぐに宮殿から出るのだ。ジナ、すまない。もし 再び逢えたら、かならず謝罪する。もし、友として、私を受け入れてくれるのであれば」
二人の護衛を指示するユンに対し、スヒャンが耳打ちをする。
「中殿は、クィの手先です。お気をつけください」
「早く行け」
そのとき、異様な物音がして、地下宮殿から ソンヨルが現れる。
あきらかに様子がおかしい。
地下宮殿内では、かなりのダメージを受けたクィが動けずにいる。母系と守護鬼か・・・笑みを浮かべるクィ。
官軍たちのの剣もきかないソンヨル
「彼は危険です。陛下、ここはひとまず、退却を」
吸血鬼の本能に支配されたソンヨルは、徐々に人間の心を失っていく。
「血だ、あの子の血を飲みたい」
地下宮殿内に戻ってきた領相。
「大丈夫ですか」
かなりダメージを負ったクィだが、領相の前では なんとか平気なふりをする。
「キム・ソンヨルはどうなった?」
「淫乱書生の娘とスヒャンのあとを追って、脱出しました。王が彼らの脱出を助けたのです。ただちに、彼を捕獲し、王の地位から引きずりおろす必要があるかと」
頷くクィ。もう行け、という合図をする。
「すぐに使者をおくります。」
~ヘリョンの居室~
ヘリョンのもとに戻ってきたユン。
周囲を見回す。
「内密な話だ。中殿。私は、王を廃位される可能性が高い。力のある王となり、国や民を守りたかった。そなたのこともだ。」
「陛下は、間違いなく、そうしてくださいます。」
「謝罪する。」
「なぜ、謝罪などされるのですか」
そこに、官軍が入ってくる。
ホジンが宮中の様子を偵察にくる。物々しい警備の理由を門の警備に尋ねる。
「宮殿で人殺しがあったんだ。吸血鬼が 暴れまわったんだ」
「え?地下に住んでるとかいう あの吸血鬼ですか。それで、その吸血鬼を捕まえようと?」
「あとは、淫乱書生のむすめ、チョ・ヤンソンも捕まえるためだ」
「え?チョ・ヤンソン?」
「なんだ、彼女を知っているのか」
人相書きをみて、
「いや~、悪いことをしそうにないのに、何の罪でなのかと驚いただけですよ。じゃ、私はもう行きますね。任務をお励みください。」
追手をかわしながら、町中を逃げるスヒャンとヤンソン。
「学士様を探さなくてもいいのでしょうか」
「それよりも、まず 安全なところに身を隠すほうが先です。華陽閣にはすでに先回りされているわ」
そこへ、イノと高利貸しコンビが スヒャンとヤンソンを助けにくる。
「ヤンソンが女だったなんて」
「不思議なこともあるもんだ。たしかに、きれいな顔はしてたがな」
「でも、義妹の身になにがあったんでしょう」
そうか、この間、宮女に変装させて宮殿に送りこむとき、ヤンソンから「兄貴」とか呼ばれるようになったんでした。「義弟」から、「義妹」になったんだ(笑)
初見のスヒャンに、イノのことを、実の父の友人だと説明する。
「王様と私の武芸の師匠でもありました」
「私は、ペク・イノと申します。ジンを助けてくださってありがとうございました。」
「とにかく、今はとても危険な状態です。あなたは、すぐに 首都を出て、身をかくされたほうがいいでしょう。」
「キム・ソンヨルは どうしてますか?」
学士様は・・・と言いよどむヤンソン。
スヒャン「どちらにいらっしゃるかわかりません。地下宮殿で、クィと戦った際、ヤンソンの血を含んだあと、別人のように変わってしまわれました。」
イノ「別人のよう?」
ヤンソン「ええ、あんな力は以前には もたれていませんでした。それに、私のこともわからなかったように見えました。」
スヒャン「おそらくヤンソンは 母系として、秘策に関係する、クィに対抗するためのなにかの能力をもっているのだと思います。でも、旦那様は、まだ人間の心を完全にはなくされていないはず。」
「クィはどうなったのだろうか。」
「生死は不明です。」
「とにかく、学士様を探さなければ・・・。」
自分のことよりも、ソンヨルの行方だけが、一番の気がかりなヤンソン。
「それは今じゃないわ。あんなふうに、旦那様を変えてしまえるあなたの身の安全を確保しなければ。ここで、あなたの身に万が一のことがあれば、私たちは、旦那様を元に戻すことすらできない。」
「まずは、ここに隠れていてください。首都から離れる方法を探ってきます。」
領相のもとに、連れてこられるユンとヘリョン。
「こんなことをして無事だとでも」
「誰のせいで、こんなことになっているとお考えですか?あなたが、クィ殿に歯向かったせいですよ。私は、狡猾にクィに服従しているようにみせ、そのうち、あの獣を追い出し、真の王となるつもりです。」
ヘリョンをみて、勝ち誇ったような表情になる領相。
「お前も長い間、ずいぶん尽くしてきたな。我々が、ここまで上り詰めることができた理由をしりたくないですか?クィが気に入ったのは、私ではなく、娘ですよ。今は、もう無用のようですがね。連れていけ。」
投獄される二人。
「陛下、ご自分を卑下されることはありません。私が、あなたを騙したのです。私はクィの手先でした。」
「それは過去のことなら、何も咎めるつもりはない」
「ご存じだったのですか」
「黒い道被を持ってきたとき、正直、疑った。そなたを中殿にするのもクィの計画の一部だったのだから。」
「宮殿の外での偶然の出会いも、計画されたものでした。」
「最初はどのように、あいつのもとに?」
「父の手に引かれて、10歳の時に初めて、クィのもとに連れていかれました。その時、父を失い、母は宮殿を離れました。」
「宮殿は敵だらけだった。そのためか、自分に近づいてくるものの目的を、自然に読むようになった。」
「どのようにして?」
「君の場合は、流れる涙をみたときだ。うなされながら、母を助けてくれたら、なんでも言うことを聞くと、泣きながら哀願していた。その涙は、私にとっては、見慣れた涙だった。不当に亡くなった父のため、歯を食いしばって、誰にもみせないようにした涙と同じだった。それで、クィに何の見返りを求めた?」
「私は、力が欲しかったんです。私や母をこれ以上、誰一人として、きずつけることができない力を求めていました。陛下は私を抱きしめてくださったのに、私は最低なことをしました。」
「それでいい。私に力がなくても、最後までそなたを守れるだろうか。今や、あなたが、私の力になってくれる存在なのだ。」
うわ~、ソンヨルが壊れた(泣)
内なる声がきこえる。
お前を恐れるそいつらの目をよく見てみろ。そいつらは、ただ生き残りたいだけの弱い人間だ。
「お前は、吸血鬼なのか?なぜ、宮殿の外に出てきた?」
ちがう、この人たちは犠牲者だ。
ひどい頭痛がソンヨルを襲う。町中、大パニック。
ホジン「この騒ぎはなんだ?」
町人「吸血鬼が、宮殿からでてきたんだ。黒い衣をきてましたよ。私はこの目で見たんだ。」
「黒い衣?」
その騒ぎの中、イノがホジンに気づく。
「イノ様、大変です。官軍がヤンソンを血眼になって探してます。それに、吸血鬼が宮殿の外にでてきたとかで、大騒ぎです。」
「その吸血鬼は、キム・ソンヨルだ。事情はあとで説明する。ジンは私と一緒にいる。しかし、すぐにでも首都から脱出させなければならない。」
「それはそうですが、城門の出入りの取り締まりは、厳重です。いや、待てよ。」
「なにか方法が?」
「はい!」
スヒャンとヤンソン
「思えば、旦那様は、あなたのことを捜し続けていたわ。血を求めていたのかもしれないわね。私のことは望まれなかった。旦那様は、生きている人間からは 最小限しか 血を飲むことはしなかった。制御できない場合には、旦那様はあなたを傷付けるかもしれないわ。そんなことになったら、意識が戻ったあと、どれだけ後悔なさるでしょう。おそらく 自分を許されることはないでしょう。
暴力的になったら、人間の心をとり戻せないかもしれない。だから、あなたも 不用意に あなたの血で旦那様を刺激しないように。」
「私は、私はどうしたらいいのでしょう。」
途方に暮れるヤンソン。
そこへ飛び込んできたホジン。ヤンソンのきれいな姿に見とれる(笑)
朝廷も大騒ぎ。
「これはいったいどういうことだ、宮殿に何がおこっているのだ。この首席大臣とは、王室に対する反乱ではないか。」
文句を言う高官に、すでに、この国の舵取りはクィだと認めろ、この国と王室がどうなるのかは、クィの意志次第だと告げる領相。
~地下宮殿~
クィが回復するために、たくさんの人々が犠牲になり、吸血された死体が無造作に投げ出されている。
「王と 中殿は確保されました。」
「なぜ、二人を連れてこない?」
「王の逮捕をうけて、閣僚たちが宮殿に集まりました。クィ殿の意志にさかえらなくても、まだ、王はこの国の王だからです。」
「そうか?」
「クィ殿は、昼間、行動を起こすことが難しい。私に考えがあります。」
宮殿に棲む吸血鬼”であるとでっち上げて、彼と内通した罪でユンを廃位することをクィに提案する。
「そして、この計画の最高功労者はおまえだというわけか。」
「そうは申しておりません。」
「先にいけ。私はまだ、体力を回復させる必要がある。」
「その後、王をどうするおつもりですか。あなたのタイミングが狂えば、時期を逸してしまう可能性があります。」
「今夜、決定する。それより、大事なことは、チョ・ヤンソンに何が起きたのかということだ。」
「彼女の行方も追っています。」
「出来るだけ、早いほうがいいだろう。死にたくなければな。」
「本当にこれしか方法はないの?これは危険だわ。」
「そりゃ、旦那様みたいに、ヤンソンを抱えて、走り抜けられればそうするさ。でも、いまは、これしか。」
「大丈夫です。私なら。兄貴たちを信じてます。」
大八車に死体として乗り込み、場外に出る作戦。
「ヤンソン、またきっと私たちはあえるよ。」
ヤンソンを励ますホジン。
「あなたもお気を付けください。」
イノにむかって、忠告するスヒャン。
「天に運を任せよう。」
こもをかぶせられるヤンソン。
~森の中~
白ソンヨルと黒ソンヨルの戦いです。
~ユンとヘリョン~
夜になれば、またクィの犠牲となるものがでてきます。
私は、死ぬまで戦わなければ。
いいえ、殿下は身の安全を確保すべきです。
もう自分だけ生き残ろうなどとは思っていない。
だめです。それでも・・・
二人の牢を訪れる領相。
「何をするつもりだ?」
「今夜、クィ殿が王を廃位されます。」
領相の言葉に、立ち上がるユン。
「すぐにでも、私をクィのもとに連れていけ。ただし、中殿は、あなたの身内だ、生き続けさせたいとは思われないのか?それでも人間か?」
「陛下・・・」
微笑み近づく領相
「そうして、私に命令されるところを見ると、まだ自分の立場が分かってないようですな。」
「父上、あなたこそ、本当にこの国の王になれるとお考えなのですか?単なる王様の代理です。王が廃位されればあなたもまた、その地位を追われます。」
「そんなことはありえない。今や、私がクィを操っているのだ。」
ヘリョンだけが牢から出される。
「王の言うとおり、お前は私の身内だから、命だけは助けてやる。母親のもとに行け。」
「いいえ、地下宮殿にいきます。クィが私を、そんな風に解放するはずがありません。」
「黙れ。私の言うことをきくのだ。」
「私がお父様を助けます。王になりたいのでしょう、クィの隣に私を置いたほうがいいのでは? ですから、どうか王様の命を助けてください。」
「その言葉を信じられると思うか」
ひざまづくヘリョン。
「あなたの娘としての、最初で最後のお願いです。」
~地下宮殿~
中殿が クィ殿にお会いしたいというので、連れてまいりました。
「もう、王の女ではなくなったから、私のもとに戻ってきたのか?」
「お忘れですか?私は力のあるお方の隣にいたいと申し上げたはずです。ですが、あなたの言われた通り、それが間違いだったと気づきました。」
「自分には、その権利があると。」
「王は、私の期待にこたえるには、あまりにも未熟でした。」
「そうか、では、王のことはどうしろと。」
「王にはもはや、なんの力も残っていませんが、もし、彼が殺された場合、私は未亡人として、後ろ指を指されます。」
「では、どうしたら、いいだろうな。」
「私は再び、あなたのお側につきます。」
「俺の女になると?自分が何を言ってるのかわかっているのか?」
「言ったとおり、そのままの意味です。」
「反抗する王の処罰はいかがしたものか。お前はどう思う?」
領相にたずねるクィ。
「王の命を救うことで、人々は簡単にクィ殿を受け入れることでしょう。もし、王が殺されれば、拷問によって死んだとも考えるでしょう。」
「そんな者どもの言うことを、俺がまともに相手をする必要があるか」
「申し訳ありません」
「宮殿内はどんな様子だ。クィ殿の決定を待っているところです」
「厄介だな。今夜から、私がこの国の王となる。お前は下がってよい」
思惑が外れた領相。
なんとか、白ソンヨルの首から手を離したソンヨル。
そんなソンヨルの様子を 黒ソンヨルが蔑む。
「なんて、弱い奴だ。お前がクィに勝てないのは、そのせいだ。王は民のためだと言い訳をしているが、王もまた、この国にクィをのさばらせたものにすぎない。
お前がクィから救っても、また クィに泣きつくかもしれないな。お前は、人間がより良い存在だとでも思っているのか?人間を傷付けているのは、ほかでもなく、人間自身なのに。人間が正義と呼んでいるものは、吸血鬼よりも悪質だ。お前は人間ではない。ずっとすぐれている
クィを倒すために、すぐにでもあの子の血を飲むのだ。お前は自由だ。さぁ、あの子はあっちにいるぞ。」
アンデ~~ 白ソンヨルが負けちゃった。
連れてこられるユン。
「中殿になにをした?」
「我々のことは、心配なさらなくても結構です。」
「中殿に、何かあったら、おまえを絶対に許さぬぞ。」
「これからご自身に何が起こるのか把握するだけでも大変な一日となるでしょう。私に生かされていることを感謝してもらわねば。」
ユンの王位を脱がすように命じる領相。
ヤンソンの城門脱出失敗。
~地下宮殿~
クィ「どうして戻ってきた?」
ヘリョン「理由はさきほどお話ししました。」
「王を愛したのか? あいつを助けるためか」
「私が、なんのために?あなたにとって、一番必要のないものが、愛なのではありませんか?たとえ、理由がそうだったとしても、いずれにしろ、あなたの元に戻ったという事実を変えるものではありません」
「俺がお前を待っていたと?」
「前におっしゃったでしょう。私とあなたはよく似ていると。同じくらい、あなたのことを私以上に理解できるものはいないということです。」
ヘリョンの真意を足し編めようと覗き込むクィ。
「では、俺の考えていることがわかるか?」
「あなたは孤独です。あなたは人間になりたいのに、未熟な人間を軽蔑しています。
だからいたぶるのです」
「そして、隣にいれば、俺のすることがわかると」
「あなたの望みどおりに動きます」
「おもしろい、いいだろう。だが、俺はあいつを助けるつもりなど、全くないからな。」
どんなにイノが強くてもさすがに一人じゃ・・・と思ったら、ソンヨルがふらふらとあらわれた。
イノが ソンヨルに、刀を突き刺す
「お願いだ。人間の心を取り戻してくれ」
倒れたソンヨルを、ヤンソンが抱きしめる。
キム・ソンヨル、秘策とやらは、封印だな。そして、今から、私がこの国の王になる。
~回想:300~400年前 テジョとクィの会話~
テジョ「ここがあなたの先祖が王室に提供されていた屋敷だ。新しい国を立ち上げるために、私に協力してほしい。」
クィ「それで、私になんの見返りを?」
「あなたは、私の子孫をつかい、この国をおさめ、夜の王となるのです。」
その言葉を思い返すクィ。
こんな会話があったのね~~~。
太宗は この契約に終わりがあると考えていたのか?おまえたちが最初に約束をやぶったのだ。
王衣を羽織ったクィと、ヘリョンが 官僚の前に姿をみせる
王座に座り、閣僚たちに宣言する。
「今この瞬間から、私が王だ」
★第18話に続く★
母系の血が、守護鬼に入ったときの凄まじさ、クィを物理的に倒すための秘策であったことが、はからずも、ソンヨルを救いたい一心のヤンソンの行動で、判明しました。
ユンとヘリョンも、だんだんと秘密が暴露されるにつれ、本当の信頼をよせはじめたようです。たしかに、ユンのまっすぐさは、ヘリョンにとっては眩しく、ずっと憧れていた世界で、それを手にいれた今、ようやく、彼女の中で眠っていた「人間らしさ」「愛情」が発露されたのでしょう。
あの父親に、ひざまずいても、ユンの命を救いたいヘリョンです。
そんなヘリョンの変化を、ちゃんと把握しているクィ(泣)
逆に、ソンヨルの心の中で、眠っていたのは「黒ソンヨル」でした。
押さえつけられてきた吸血鬼としての本能が、今、ヤンソンの血を得たことで、表にでてきてしまったという皮肉。
あれだけの「節制の人」だったのに~~(泣)
そしてまた、複雑な女心というか、精神的なシンパシーは、ユンよりもクィにあるという二重構造なヘリョン。
クィもまた、秘策としてのソンヨルの強さを実感し、不安になっているようです。ヘリョンを傍に置き、いままでは、傀儡王にまかせていた「王」という存在に、自分がなることを決意しました。
自分の力に限界を感じ、支配欲に目覚めたのか、日の当たる場所を求めるのは、吸血鬼の本能なのか、でも、どんどん感情が露わになっていくようで、人間に近くなっている感覚です。
クィの存在は、このドラマの肝ですね。