■ 第16話 黒衣団
ヤンソンはクィの生贄になる覚悟を決め、ソンヨルの元を去る。
屋敷に戻ってくるソンヨル。
「ヤンソンが 貢女に・・・」
自分が秘策と知って、わざと皇宮へ・・・。
「それは 誤解だそうです!」
ペク殿が気づかれたんです。ヤンソンの実母もクィの餌食になったのに、クィは無事だった、ということを。
ということは、母系の血を吸っても、クィを倒せないということか?
ヤンソンを止めなければ・・・。
ホジンの忠告もきかず、外に出ていくソンヨル。
ペク・イノのもとを訪れ、仲間に入れてほしいと頭を下げる「高利貸しペア」(笑)
仲間とは、何の話だ?
隠したって無駄ですよ。
黒衣団でしょう?
黒衣団?
一方、領議政から黒い衣を着た者たちが貢女を連れ去っているという報告を受けたユンは、黒衣団の逮捕を命令。
ユンの身支度を自身の手で整えるヘリョン。王衣の下には、黒い道被を来ている。
「この道被はクィには絶対に渡さぬ。どこにいるのだ、キム・ソンヨル。」
「クィが恐ろしくはないのですか?」
「余のために死んでいく者たちをみて、恐ろしくてたまらなかった。だから、クィを滅ぼすことだけを考えて、友まで奴に差し出そうとした。だが、獣のようになったハギョンをみて、我に返った。」
震えているユンの手にそっと手を置くヘリョン。
「ソ・ジンだけに限らず、民の誰も クィに献じたりしない。」
「ですが、秘策は・・・。」
「人を殺す秘策など必要ない。中殿(ヘリョン)も、余のためや クィを殺すために、危険を冒してはならない。君まで死んだら、余の心は折れてしまう。」
ユンは誰の命も犠牲にしない方法でクィを倒そうと決心していた。
~地下宮殿~
地下宮殿に呼ばれる左相。
「何のために私をここへ・・」
「寂しい年寄りどうし、会話でも楽しもうかと思ってな。」
自分を年寄りだと思ってるのね。
「やけに静かだな。贈り物も用意したというのに。」
こちらへ、というクィの指図どおり、一歩ずつゆっくりと近づく左相。
「後ろを見ろ」
そこには、ハギョンが・・・。
もう誰のことも認識できないハギョンが、祖父である左相に襲い掛かろうとするのをとめるクィ。あまりの残酷さに、衝撃を受ける左相。
「後生ですから、ハギョンを普通に死なせてやってください。」
「ならば よく聞け。最近 王が何を考えているのか、知りたいのだ。時折、遊びにきて いろいろ聞かせてくれ。そうすれば、孫が成仏できるよう、協力するぞ。」
ユンの動きを怪しんだクィは吸血鬼化したハギョンを利用し、左議政を操ろうとする。
イノに酌をする高利貸しコンビ。
「貢女について、国の東西で、不満が高まってるところ、官軍に襲い掛かる集団が出てきて、救出したとかいう噂ですよ。」
「誰が?」
「黒い上着をきた義賊団ですよ。」
「それが 黒衣団か?」
「初耳なんですか?」
「彼らの正体がなんであれ、民を吸血鬼から救い出さねば。」
「兄貴、ここだけの話ですが、どうも 華陽閣が変なんです。ここ数日、客を入れず、官軍が出入りしています。」
「華陽閣か・・・」
華陽閣が貢女の準備拠点になっている。地方から集められた年端もいかない娘たちが、着替えやお化粧をさせられている。その様子を暗たんたる思いで見ているスヒャン。
ヤンソンの支度は、スヒャンが行っている。
「数奇な運命ね。でもしかたがない。生まれ持った血ですもの。」
「自分の血は選べませんでした。でも、この死に方は、私の選択です。」
いつにもまして、警戒厳重な皇宮。
追われるソンヨルを助けるかのように、現れた黒衣の男。
「お迎えに参りました。まずは屋内に。」
夜明けをむかえた宮殿。
黒衣をまとった者が部屋の中央に座っている。
ソンヨル「何者だ」
「民の側に立つものだ。なぜ 官軍に追われている? 謀反でも企てたか?」
「私も民の側に立とうとしただけだ。」
「まだ、クィのいいなりの王に期待しているのか?」
「クィと同類の吸血鬼である私に期待できるのならな。」
御簾をはずすソンヨル。立ち上がり、顔の覆いを外す黒衣の男。そこには、ユンの姿が。。
「余の信頼を勝ち取ってみよ。クィを倒すために120年も生きたくせに、愛する女のために、すべてを捨て去るつもりか。」
「人の心を保てたからこそ、クィを憎み続けることができたのです。獣になる道を選ばす、人の心を守り続けたのは、貞顕世子の遺志を継ぐためでした。そして、ある女性を自分の命以上に愛したためです。私はその両方を守り抜きます。」
「ならば・・・余と共に戦うか?志をなすために。」
「殿下のお考えは?クィを滅ぼすためならば、民を犠牲に?王の権力を取り戻したいだけなのでは?これは本当に民のための戦いなのですか?」
「無論だ。」
「クィを倒すためならば、王座も手放せますか?」
「この命も喜んで差し出そう。」
黒い道被を ソンヨルに返すユン。
「なぜ、これを。」
「中殿のかわりに私が謝る。私のためだったのだ。」
「事情はあとで伺います。すでに、クィは 複数の母系の血を吸っています。ヤンソンの実母も含めて。。」
「それでは・・」
「そうです。ヤンソンを献じても、クィは倒せません。それを知らないヤンソンは 自ら貢女になって宮殿に出向きました。」
「貢女は華陽閣にいる。しかし、君をねらった罠かもしれない。」
「構いません。」
「手下を貸そう。余は監視下にあり、身動きが取れない。」
こうして、ユンはソンヨルと、再び力を合わせて貢女たちを救い出そうとする。
「あとで、これを学士様にお渡しください。」
決意をもって、スヒャンに手紙を渡すヤンソン。
ペク・イノも黒衣団に加勢をする。領相をとらえ、人質にとるイノ。
「10年前、お前のせいで、世子様や仲間が・・・、化け物に服従する獣以下な奴め。」
やはり、領相は昔から卑劣だったのね。
「黒衣団はお前だったのか」
「好きに考えろ。」
貢女を避難させるソンヨル。黒衣団と連携し、華陽閣のそばに控えていた「高利貸しコンビ」が彼女たちの保護を引き受ける。
なんか、高利貸しコンビ、おもしろいわ~~。いかつい顔をした者=ペク・イノの手下です、とか言っちゃって。
華陽閣内をくまなく探すが、ヤンソンの姿だけが見つからない。
ヤンソンの手紙を発見するソンヨル。
学士様 お許しください。以前、お願いしたことを取り消します。昔の恋人と同じ歳月だけは私のことを想い続けて・・・、といったあの言葉は撤回します。学士様から恋人を奪い、地獄の日々に、学士様を封じ込めた吸血鬼の血が私の中にも流れているからです。学士様が救ってくださった私の命は、恩返しに使います。愛しています。この愛は私が持ち去るので、学士様はすべて忘れてください。
サンザシの香箱も戻していたヤンソン。
イノが孤軍奮闘しているのを目撃するソンヨル。近づき、ヤンソン救出のため、領相と地下宮殿に行くことを告げ、協力を申し出る。領相をイノから救うふりをするソンヨル。
母を訪ねるユン。
「中殿は元気にしていますか?あの子は、深い悲しみを背負っています。私は、最初、王室への意図的な接近を疑っていました。でも 悪い子ではないようです。誰からの愛も受けず、頼る人もおらず、ただ、がむしゃらに生きるしかなかったのではないかと・・・。優しくしておあげなさい。」
「はい そうします。」
「なにか心配事でも?」
「いえ、もう行かなくては。」
母である大妃様にも、領相の監視がついていました。
~地下宮殿~
王は外出を?ヘリョンに尋ねるクィ。
「大妃様に会いに寺に行かれました。定期的な外出です。」
「お前もやり手だな。完全に王の信頼を得た。どんな嘘をついた?俺の手先だとばれるのが怖くはないか?辛くないか?」
クィ~~~、なんか 私 泣いてばっかりです。
「今夜 ここに貢女が来たら、ソンヨルは姿を見せるか?それとも もうすでに潜入を?」
「私にわかるとでも?」
強気に言い返すヘリョン。
「俺が憎いのだな。」
「人から憎まれても構わないのでは?」
「そうだ。俺に人の心はない。だが、人間の中では お前が一番俺に似ている。愛という感情がどういうものなのか、気になるだろう?なぜ、人のために 命までささげられるのか?だが、じきにわかる。愛の行きつく先には 何もないということが。
王を相手に人の心を育んでみろ。最後には、それが失策だと悟るだろう。」
クィとヘリョンの神髄のようなシーンでした。
「君まで死んだら、余の心は折れてしまう。」
地下宮殿を出たところで、ユンの言葉を思い出し、寂しそうな表情を浮かべるヘリョン。
スヒャンに連れられて、地下宮殿に向かうヤンソンを止める左相。今なら、見逃してやることができるという左相に対し、その必要はありません、と地下宮殿に行く意志を見せるヤンソン。
「お前は・・・チョ・センの娘ではないか。ソ・ジンだったと聞いたぞ。」
「私が クィを滅ぼす秘策だそうです。」
「つまり、自分の意志で来たというわけか。」
「どうかお力添えを。淫乱書生の事件の際、おっしゃいました。私一人の犠牲で、大勢の民が救われると。今こそ、その好機です。」
「わかった。行こう。お前の父親(チョ・セン)は、ここで命を落とした。我々の非力をわびるほかはない。」
そこへ ヘリョンがくる。
「なぜ、そなたが?」
スヒャンがヤンソンに変わって説明する。
「中殿の忠告に受けて、旦那様と国と民のためになすべきことを考えました。これから、参ります。」
「じきに 国王様がくるから 会ってからにしなさい。」
ヤンソン「国王様も もともと私を献じるおつもりでした。私が死ねば、学士様は生きられます。」
ヘリョン「キム・ソンヨルへの、そなたの愛は理解しておる。でも、国王様は、あなたや民を犠牲にしてまで、クィを倒すことはしないと決意されたのだ。」
左相「中殿様 この子はクィを倒す唯一の秘策です。」
もう~~~ これ、早いとこ、誤解解こうよ。
「なぜ躊躇うのです?まさか、クィを救いたいとか?」
スヒャンは、完全に、ヘリョンをクィ側の人間だと思ってるからね~~。
「私こそ、この子をすぐにでも献じたいのです。でも、国王様は別のやり方をお望みです。」
埒があかず、飛び出していくヤンソン。
「国王様に何と説明をすれば・・・。」
殿下に捨てられても、私は後悔しません。と話す左相。
「クィの最期を見届け次第、ハギョンと共に逝きます。」
天のヒョンジョに誓う左相。
~地下宮殿の入口~
「決意したのね?」
スヒャンが最後に確かめる。
「一人でいきます。」
「数百年生きていたクィは 人間を信じない。一人では疑われるわ。私があなたの血を吸うように誘導するから、挑発に乗ったりせず、毅然としていなさい。」
ヤンソンの手を引き、地下宮殿をすすむスヒャン。
ハギョンが威嚇してくる。驚くヤンソン。
「何事だ?」
はじめて、クィの姿を見、声を聴くヤンソン。
「待機させていた貢女を、黒い上着の者に奪われました。」
「キム・ソンヨルか?」
「それはわかりません。ただ、この子だけ残っていたので、連れてきました」
ヤンソンに近づき、香りを確かめるクィ。
「お前は淫乱書生の娘だな。なぜ、この子が貢女に?」
「さきほど、左相殿に指摘を受けて、はじめて知りました。」
目をそらすスヒャンが気になるクィ。
「そうか、左相はまだ、外におるのか。」
「おそらく・・・」
ハギョンを見るクィ。
「お前も空腹なのに、俺だけが血を吸うのは悪いな。外で餌食を探してこい。」
喜び勇んで飛び出していくハギョン。
「もし、外で祖父にあったら、挨拶くらいしろよ」
その言葉の意味するところを知り、愕然とするスヒャンとヤンソン。
「そうだ、この香り。良質な血の香りだ、俺がお前を喰えば、ソンヨルは怒り狂うよな?」
「お召し上がりください。」
「おまえとソンヨルとの関係は?恋仲か?」
スヒャンの言葉を無視し、ヤンソンに話しかけるクィ。
ハギョンに襲われる左相。首に噛みつく瞬間、ソンヨルがやってくる。
「俺の勘違いだったか?」
「恋仲です。」
毅然と答えるヤンソン。
「そうか、人間と吸血鬼の恋か?もしや 知らなかったのか?あいつが吸血鬼だったということを?」
「知っています。」
「なのに、恋を?いつまでも続くと思う?」
じりじりと追いつめるクィ。
「あいつは人の血をすすりながら、今の美しさを保ち、数百年も生きる。だが、お前は老いて死ぬのだ。」
「構いません。今、たとえ死んでも想いは変わりません。あなたは この先、数千年生きても、愛を知ることはないでしょう。」
ああ、ヤンソン、それは言っちゃだめな言葉よ。
ほら、顔色が変わった。
「長く生きてこられたクィ殿にも 恋人がいらっしゃったのでは?強くて、美しい方ですから。」
スヒャンが絶妙な助け舟を・・・。
「いたさ。俺が 人間界で犯した 最初で最後の過ちだ。」
「恋人はどうされたのですか?」
「俺の正体を知って逃げた。生かしてやるつもりだったが、俺の子供を産んでいた、と知り、殺した。子孫なら、俺のことを殺せると聞いたからだ。」
「では その子は?」
「見つからなかったが、死んだはずだ。だが、その100年後、俺を殺すための備忘録の中にある名前をみて 考えた。なぜ、俺を殺せるのだ?あの時の子供が子孫を残したのかもしれない。そこで、そこにあった名前の者、係累、皆殺しにした。」
「その者たちの血も吸ったのですか?」
「そうだ、殺すだけでは失礼だからな。お前の血も吸い尽くしてやる。」
それを聞き、ただ、血を吸わせてもだめなのだ、秘策の使い方が間違っている、と気付くスヒャン。
外では ハギョンとソンヨルの戦いが続いている。
ハギョンの前に、身を挺する左相。
「もう終わりにしよう、一緒に逝こう。ハギョン」
首に噛みついたとき、一瞬、ハギョンに意識が戻ったかにみえたが、少し離れたところから、弓で射るユン。
ヤンソンに噛みつこうとするクィをとめるスヒャン。
「クィ殿、この子は、ソンヨルをおびき出すのに便利かと。」
「貢女といったじゃないか?」
「私は、クィ殿にお仕えするなかで、吸血鬼の生き方にあこがれを抱きました。私の血を吸って、吸血鬼として長くお仕えできるようにしていただけませんか?」
とんでもないことを言い出すスヒャン。
「意志をもつ吸血鬼になるには、半日以上 吸血してはならぬ。普通の人間は死ぬぞ。」
「でも・・・」
「ハギョンを見ただろ。あれほどの忠臣が 自分の祖父も見抜けぬ獣と化すのだ。」
なんとしてでも、ヤンソンを救おうと、クィとの間に立ちはだかるスヒャン。
「どけ。この子の血の香りにはあらがえぬ。」
そのとき、ヤンソンの肩の傷に服の上から触れるクィ。傷跡をみる。
「お前、吸血鬼にかまれた過去が? なのに、人間のまま? まさか 吸血鬼の血筋なのか?」
まだ、ハギョンとの戦いは終わらない。
ユンの姿を確認し、これで、自分の代わりに仕留めてくれ、と、目で合図をおくり、その手元にサンザシの剣を落とすソンヨル。
友であるユンの姿をみたとき、一瞬 心を取り戻したハギョン。
「殺して・・・殺してください」
ユンの手をとり、そのまま、剣を自分の胸に突き刺し、その胸の中で息を引き取るハギョン。
「殿下はこちらにいらしてください。」
自分ひとり、地下宮殿にむかうソンヨル。
ヤンソンの首を絞め続けるクィ。
「学士様・・・」
クィの後ろに 現れたソンヨル。
★第17話に続く★
とうとう、ソンヨルがクィの前に。
吸血鬼となった実父ソ・ジョンドに噛まれても、吸血鬼化しなかったのは、もともと、ヤンソン(ソ・ジン)がクィの末裔だったから、とは、なるほど~って感じでした。
(ん?ヘリョンの噛み傷については、今後 なにか説明がでてくるのかな?)
クィとヘリョンの会話も秀逸でした。クィが求めているのは、ヘリョンのこういうクレバーで、自分を本気で嫌がる強気な一言というか応酬です。ことあるごとに、結婚までさせてやった、と恩着せがましく言いますが、それでいて、ユンから無理やり引き離すことも、ユンへの恋情を止めさせることもしません。
二人をつなぐ同類感を否定しながらも、自分のことを拒み切れないヘリョンのことを、一番理解しているのもまた自分だと、クィは、わかっているのです。
(あ、スヒャンも、ヘリョンのクィに対する複雑な感情に気づいているようですね。)
スヒャンの功績も今回は外せません。
途中で、ヤンソンの犠牲は無意味だと気づき、自分を犠牲にするように仕向けます(泣)。
おなじく、最後は自分を取り戻し、自らの意志で亡くなったハギョン(泣)
犠牲と献身、ドラマも後半にむけ、悲壮感に拍車がかかってきました。
そんななか、私が気になっていた「高利貸しコンビ」大活躍の予感(笑)
救いもなくちゃね。