■ 第9話 身代わりの死

 

拷問が続いている。なかなか自白しないヤンソンに対し、焼き鏝が当てられそうになる。

ヤンソンが女であることを告げる父。

「うちの子は、娘です。女の子なんです」

驚く左相。

 

拷問にかけられたヤンソンは歩くこともままならない。

ノ左相は、父を救いたいか、と 別室でヤンソンと話をする。

父親を救いたいだろう?もし、そなたが宮殿に住み着く吸血鬼の犠牲になれば、父の命はもちろん、逃げた家族の逮捕令も解く。たくさんの民の命が助かるのだ、と説得する。

 

~地下宮殿~

王が、淫乱書生をでっちあげただと?

領相がクィに注進にやってくる。

冊契ごときに、国を動かす力などありましょうか。証拠もねつ造、自白も拷問によって強要すればよいのです。

いずれにしても、本人に会えばわかる。ソンヨルがあれほど死守する鞄の持ち主が、淫乱書生かどうかもだ。

ああ、ついに、あの甘い香りの持ち主に会えるということだな。

 

怖いよ。もし、私が死ねば、大勢のひとたちが助かる、と言われ、揺れに揺れるヤンソン。

 

ヤンソンのことは、ひとまず放置するといったものの、心配で仕方がないソンヨル。

 

タムが 「例えお探しの本が見つからなくても、姉と父を助けてください。旦那様にしかできません。ご存知のとおり、姉は 旦那様のことが好きなんです」と訴えてくる。

ヤンソンが描いた夜士伝を見せるタム。

1ページ1ページ 見ていくソンヨル。ヤンソンとの思い出がよみがえる。

 

ヤンソンたちが牢屋に戻される。

ソンヨルは牢獄に忍び込み、チョ・センに「チョンヒョン世子備忘録」の在り処を尋ねる。吸血鬼のソンヨルを恐れて返事をためらうチョ・セン。

 

ユンの前に、父親の幻が現れる。

ここで、何をしておるのだ。仲間たちがお前のせいで、殺されていくのをただ見ているだけか。

助けてください。逆賊として殺されていく仲間たちを、無実のヤンソン親子を救う方法を教えてください。肩に父の手の感触を覚えるユン。

 

祖父の前に 一人連れてこられるノ・ハギョン。

何のためにここにお呼びになったのですか。

息子は失ったが、孫にだけは手出しはさせぬ。

世孫様を助けたかったら、決して 何もするな。

王と左相は、まったく同じ立場で孫を守ってきたということですね。

 

王の前に、連れてこられるヤンソンたち。

目の前のユンが 世孫と知ったヤンソン。そして、淫乱書生その人であることも。

何も言えないユンの気持ちや立場を察したヤンソンが、自分が淫乱書生だと自白する。

でも、父は無関係です。

しかし、チョ・センもまた、サドン世子の専属冊契をしていた過去を打ち明け、大きな恩を受けた身だ。自分が淫乱書生だと訴えて娘を守ろうとする。

それを聞いた一同、皆、ヤンソンの命を奪うよりは・・・と、苦渋の決断でそれを受け入れるしかない。

 

明朝八時、王と政府を欺いた罪で、処刑すると宣言する王。

牢に戻されたヤンソンの血に、別の香りをつけるソンヨル。

 

そこへ クィが現れる。

淫乱書生だと自白した本売りです。気を失っているチョ・セン。香箱はしていないのか。

こちらは、娘です。こいつもまた、本売りです。

いかにも、愛らしくて男が好きそうな顔立ちだな。しかし、香りが違う。

瀕死の者たちから、事情を聞けというのか?

回復させてから連れてこい。

いや、ちょっと待て。

そうか。女からは、女のにおいがするものだが、それもしないとは。

サンザシの粉がこんなに。

この娘が淫乱書生なのですか?と たずねる領相。

さあな、淫乱書生なのか、キム・ソンヨルの女なのか、それもじきにわかる。

 

学士様 私、すごく痛いです。眠いです。家に帰りたい。朦朧とした意識の中、うわごとのように本音をつぶやくヤンソン。

涙ぐむソンヨル。

 

父の殺された井戸に立つユン。

父上、私は本当に恥ずかしい。ただ泣いているだけしかできなかった10年前と、まったく成長していない。何も変えられない。

 

王がこんな時間に・・・。

今日の取り調べで、サドン世子を思い出されたのでしょう。

王の護衛たちがなぜ、世孫についている?世孫を守るため、それとも監視のためか?

 

世孫の護衛武士がクィの前に連れてこられる。

簡単に自白し、主人を簡単に裏切るような奴に用はない、と切られてしまう。

血を吸う価値もないって感じです。

世孫が淫乱書生だったとはな。

 

傷ついたヤンソンを、愛おしげに抱きしめるソンヨル。

ひどい言葉で傷つけたことを思い出す。

今だけ、今だけは・・・。

意識を取り戻した父が その様子を見ている。

10年前の出来事を思い出し…。

普通の吸血鬼であれば、私か、娘のどちらかを喰っていただろうに、あなたは、娘を心配そうに抱きしめていた。もしや、私の娘を愛しているのですか?

10年前のことを思い出しました。あなたは、吸血鬼になってしまったジョンド様から、あの子を助けましたね。彼女は、大監の娘です。

備忘録の在処を尋ねるソンヨル。監視の気配に、姿を消すソンヨル。

 

一方、ヒョンジョはクィを倒そうと サドン世子の死後、準備してきたことを初めてユンに明かす。

もっと早く教えてくだされば・・・。

お前が死に、私が死んだら、民はどうなるのだ。

お前が 強くなり、クィと対等に戦えるときが来るのを待っていた。

必ず生き延びて民を守れと告げる。

 

事前に、左相から、半日後に絶命する薬を渡され、その場で飲みほす父。

娘を守るという約束、必ず守ってください。

 

無実の罪だとわかってもらえたから、家に帰れる、と話すチョ・セン。

アボジ、本当に解放されるの?

備忘録の隠し場所をヤンソンに教え、必ず学士様に伝えるよう、指示する父。

 

地下宮殿への入口前、父だけ荷車から降ろされる。

お父さん、お父さん・・・

異変を感じ、名を呼び続けるヤンソン。

地下宮殿に入る前に、護衛武士に願いでるチョ・セン。

「娘を 先に家に戻してください。私は生きてここから出ることはありません。そんな姿は見せられない。」

 

~地下宮殿~

世孫は、はじめて 地下宮殿を訪れ、自分の父の変わり果てた姿を目の当たりにし、衝撃を受ける。

クィの前には、護衛の遺体が。

こいつが死ぬ前に、おもしろい話をした。淫乱書生は、お前だとな。

私が淫乱書生だという証拠をみせるがいい。確かな証拠をもってきて、ここで私を殺せばいい。

強気に言い返すユン。

よし、わかった。淫乱書生として自白した者を連れてこい。

俺が 本物か偽物か調べてやろう。

連れてこられるチョ・セン。

答えなさい。いつ、俺の存在を知った?備忘録は持っているのか?

備忘録は、世子様にいただいたが、お前の手には渡らない。なぜなら、別の者に譲ったからだ。

譲った相手は?

さっさと俺をかみ殺せ。王様、どうか 私の死を見届けてください。王があがめる吸血鬼のせいで、民がどのように死んでいくのかを。

 

クィがチョ・センに噛みつこうとする瞬間、

「やめろ」

ユンの声に、クィの動きが止まる。

「淫乱書生同様、世の中に、吸血鬼の存在を暴露する気か?今、かみ殺したら、なんと説明をするのだ。」

クィに訴えるユン。

「この者は、予定通り、民の前で、絞首刑にする」と 王がおさめる。

 

死んだ王妃を甦らせるソンヨル。宮殿は大騒ぎとなる。

その気配を感じたクィ、

「キム・ソンヨル、淫乱書生を助けに来たのか?」

 

クィが様子を見に来る。ソンヨルの気配を追う。

 

ユンと対面するソンヨル。無言で見つめあう。

チョ・センが 薬の効果で、絶命する。

一旦、退却するソンヨルの視線の先に、ヤンソンの父の亡骸が。

目を伏せるソンヨル。

 

チョ・センの死体を調べるクィ。地下宮殿に戻る。

 

クィ殿がここを出られて、すぐに、突然、血をはいてこと切れたのです。

何だと?一味を全員連れてこい。備忘録の在処をはかせる。

それが・・・牢にいるものは全員、すでに自決したとの報告が。

 

ヤンソンと、父の亡骸を取り戻すソンヨル。

 

ヤンソン、大丈夫か。ひとまず、ウムソク谷へ行こう。家族も待っている。

父と、はぐれてしまったんです。父を探します。疑いが晴れて釈放されるって言われたのに。

大丈夫だ。私が確認するから、お前は家族のもとに急ぎなさい。

だめです。父からの伝言です。備忘録は、菩提寺の法堂の中だと。

ソンヨルの視線の先には、チョ・センの遺体が。

心の中で、感謝するソンヨル。

その視線を追うヤンソンに気づき、さっと、袖で視線を隠す。

学士様、なぜ、そのようなことをなさるのです。

見るな。

父の亡骸をみてしまうヤンソン。

 

牢を訪れるユン。すでに、命を落としたユンの側近たち。

 

起きて。起きてよ、お父さん。家に帰ろう。お母さんもタムも待ってるよ。

泣き崩れるヤンソン。

 

★第10話に続く★

この回は、冒頭から辛い展開が続きます。

ほんと、救いがない。。。

 

ヒョンジョ王は、自分たちばかりが、クィと戦っているように思っているかもしれませんが、庶民であるチョ・センやヤンソンが、淫乱書生であることを認め、民の犠牲になろうと決意する姿に、結局、成すすべなし。

誰一人、罪もないのに、大事な人を救うためには、毅然として、受け入れる覚悟を見せる。

クィを前に、一歩も引かなかったヤンソンアボジ。

 

ユンは、犠牲となった者たちのことを受け止めきれるでしょうか。

 

実際、大義の前に、多少の犠牲は致し方ない、と、ソンヨルでさえ、備忘録を見つけ、クィを滅ぼすためなら、ヤンソンの命をも、諦める的なことを言い出します。

その過った考えを タムが必死に 「夜士伝」を見せることで翻します。

ヤンソンを見捨てるなんてできるはずがないソンヨル。

そのときに出来る最善を尽くし、ヤンソンを守ろうとします。

ソンヨルの想いを、ようやく チョ・センが認めてくれ、備忘録も手に入ることにはなりました。

ソンヨルもまた、自分を信じ、託してくれたチョ・センに感謝する最後のシーン、良かったです。