中山和也展「時計回りに90度回転」 | M.jam

中山和也展「時計回りに90度回転」

ギャラリストはつぶやく。

ここは外だし、埃やゴミが多いんです。

でも、たくさんのポスターを掲示しているので、なかなか掃除が出来なくて。

1年くらいたってしまいました。 そう、ちょうど1年。

「そろそろ、拭きたい。」


ギャラリー射手座は、人通りの多い三条通りから地下に続く小さな階段が入口だ。降りようとすると全国の展覧会ポスターが壁いっぱいに貼られているのが印象的だ。その階段を下りると、左手にはたくさんの展覧会DMが置かれたラックと水廻りがあり、正面には小さな事務所、右手には真っ白なギャラリースペースがある。それがいつもの様子だが、今回は違う。
まず、ギャラリーに入ろうとすると、階段の壁にはなにもない。すべてのポスターが剥がされている。そして、不思議に思いながらも階段を下りると、部屋がすべて入れ替わっていることに気がついた。階段のポスターが水廻りの壁に貼られ、本来の事務所スペースにDMラックが移動し、事務所のデスクや書類全てが広いギャラリースペースに引っ越している。部屋の中身だけが90度時計方向に移動しているのだ。だから入ったとき、階段にはギャラリースペースの様に真っ白なのかと納得した。
なにか、作品が置いてあるのかと、私が探していると、ギャラリストはこのように語った。本展覧会に具体的な作品はない。作者は、展覧会最終日に階段の壁面を掃除することが目的で、それが終わったらすべての部屋も元通りにする。ちょうど1年前にもポスターを剥がして掃除をしたことを話したら、作者は「では、1年経ちましたし今年もやりましょうか」と突然の提案をされた。
その話を聞いて私は驚いた。大掃除を一週間かけてやっているようなものではないか。大掃除を展覧会にした作者に私はとても強いインパクトを受けた。私は観光客がひしめき合う三条通の地下で大掃除を見に行くというめったにできない体験をしたことで、彼の作家活動にとても強い興味がひかれた。

(大塚)



立体ギャラリー射手座にて開催(終了)