イタリアには「バケッタ」という、1000年ほど前から伝わる伝統的な革づくりの製法があります。近代的な製革法の普及により、長らく幻の製法とされていましたが、イタリアの革研究家カルロ・バダラッシィが文献などをもとに、この製法を完全復刻しました。

 バケッタ製法は、アルプス地方で育ったステア牛(生後3~6カ月以内に去勢し、2年以上たった雄)の原皮を、チェストナット(西洋栗)の木の渋をベースとする植物タンニン剤だけでなめし、牛脚油をたっぷりと加えて革を仕上げます。

 とても手間と時間のかかる、大量生産には向かない製法ですが、できあがりの風合いはこのうえなく絶品。しっとりやわらかな手触りと、ナチュラルな風合い、自然豊かな表情。そして使い込むほどに色が深みを増し、透明感のある光沢を帯びていくのが大変魅力的です。

 製造するタンナーが少ないので希少価値が高く、高級品ですが、使い込めば使い込むほど味わいを増していく「革らしい革」ということで、世界中で多くの人に愛されている一品です。