僕が本屋を愛するわけ | 陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

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この部屋の中にいるヤツに会いたいのなら もっと、寿命をのばしてからおいで


TSUTAYAのCDレンタル5枚で1000円キャンペーンで

借りていたCDの一週間の返却期限が今日だったので

青砥まで返しに行ってきました。


借りた5枚の内1枚はジョンとヨーコの最後のアルバム、

「ダブル・ファンタジー」でした。青砥までの電車の車内でその

歌詞カード=ブックレット?(正確になんて言うかわかんない)を

パラパラ読んでました。巻末にオマケでヨーコへのインタヴュー

(2000年)が載ってたんですが(インタヴュイーは女性でしたが

名前は忘れちゃいました)そこでヨーコがジョンのCDの売り上げに

対する態度について言及していました。


ジョンはスターティングオーバーがイギリスのチャートランキングで

一位をとったらショーンを連れて里帰りをしようとしていたそうです。

(多分第一週で)しかしスターティング・オーバーは八位に終った

ので、それは実現しなかった。

ヨーコはジョンがプロとしてCDが売れること、メッセージがちゃんと

ファンに届くことに対してとても厳しかったと語っています。


そりゃ音楽のプロだったらみんなそだろと思って見逃しそうなのに、

僕がここに引っかかったのはたぶん理由があります。


(僕が90年生まれだということを念頭において

大幅に割り引いて考えてね)


僕は、「キリストよりもポピュラー」なんて言っちゃうジョンの

キャラクターと、ダコタのお城に住む「ほんとうの」彼の身体との

乖離に20世紀という時代の狂気がひとつ顕れていると思う。


僕はジョンの誠実さを全く手放しで信頼しているけれども、

彼自身が予言したように、「暗殺」されて終わった、その

完結性に対しても一種の諦めを感じている。


ジョンもマークも―ひとつにくくったら殴られそうだけど―僕から

するとアメリカという病だと思う。


そして、たぶんアメリカの性と暴力と宗教とイノセンスを巡る物語の

残滓は、より困難に屈折して現代を生きる僕たちや、Googleのもつ

「スターウォーズ的な世界観」、暴走する公共性といったようなもの

の中に受け継がれている。


ジョンがコマーシャリズムにコミットしたのか、していないのか、

せざるを得なかったのか、ちょっとまだ勉強が足りなくてわかんない

んだけども、サービス産業における「労働」ということの意味がマーク

には、そして僕にも、うまく説明できないということは確かだ。


人はなぜ商品を買うのか?


特に今僕が考えたいのは、

「人はなぜ本に金を払うのか」

「人はなぜ音楽に金を払うのか」ということ。


□読者と書籍購入者 (内田樹の研究室)

http://blog.tatsuru.com/2009/01/07_1103.php


まず映画「イノセンス」から引用。


バトー「“個体が作り上げたものもまた、その個体同様に遺伝子の

表現形だ”って言葉を思い出すな。」

トグサ「それってビーバーのダムやクモの巣の話だろ」

バトー「サンゴ虫の作り出す珊瑚礁と言って欲しいな。ま、それほど

美しかねえが。生命の本質が遺伝子を介して伝播する情報だとする

なら、社会や文化もまた、膨大な記憶システムに他ならないし、

都市は巨大な外部記憶装置って訳だ。」


特に、僕には本屋や図書館が外部記憶装置に見える。

カズカズ(勝間和代)が確か言ってたんだけど、

「部屋の本棚から本をどんどん捨てろ。最悪また買いなおすことも

できるんだ」ってのを聞いて、いよいよそういう思いが強くなった。


人間の脳も本棚も有限なんだなって。

これも読んで欲しいな。


□派遣村叩きに見られる呪術思考(追記アリ - 地下生活者の手遊び

http://d.hatena.ne.jp/tikani_nemuru_M/20090109/1231466513

(僕もニャンコ先生(勝手に呼んでる)のファンだったりする。)


今の社会において、「金の総量が自由の総量」のように感じられる。

金とデータはフェアな、つまり無色無味無臭で公共的なものだね。


□JASRACシンポジウム:“タダが当たり前”の時代、コンテンツ産業

に起死回生の魔法はあるか (1/2) - ITmedia News

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0812/10/news014.html


広告に頼った、利用者にとって「無料」のビジネスモデルが今後残って

いくのかどうか分からないけど、それでもウェブはもう圧倒的に安価だ。

僕の中ではウェブ>図書館で、あの臭いに耐えられないというか、

あんまり好きじゃない。それだったら、僕は本屋に行く。

もちろん、僕が恵まれた環境にいるからだけどさ。


資本主義×民主主義×科学主義の、ビークルあるいは大きな船の、

「地獄巡り」に出口はあるか。まあ、「ジョンの福音」が僕たちの苦しみを

いくらか和らげてくれるのは確かだね。


そんなわけで、僕たちが本当に時代のビョーキと戦おうというので

あれば「初音ミク」は避けては通れないと思います。

まだ全体を捉えられていません。僕は音楽屋じゃないので、

初音ミクという「楽器」の意味を十全には理解出来ないと思います。


が、人間の定義が日々変化し続けているのは肌に感じます。


桜ノ雨はマジでびびりました。


□初音ミク「桜ノ雨」で卒業式…ネットで登場、希望殺到 ニュース

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20090225-OYT1T00578.htm


□「初音ミク×ニコ動」が生んだ卒業ソング

absorb「桜ノ雨」 (1/4ページ) - MSN産経ニュース

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/music/090121/msc0901211531001-n1.htm


音楽のあり方が変わってきているのかもしれません。


□音楽の聴き方が変わってきた、というかCDが売れなくなった件

(CROSSBREED クロスブリード!)

http://crossbreed.jp/archives/200904040006.php

□音楽系動画に動画投稿サイトの威力を見た

- あるいは、ほんとのことが知りたくて嘘っぱちの中旅をする彼の話

- ビジネスから1000000光年

http://d.hatena.ne.jp/y_arim/20090317/1237292418

□音楽業界の力学に異変!?

主導権はレコード会社からマネジメント事務所へ - 日刊サイゾー

http://www.cyzo.com/2009/04/post_1811.html


「ミクなんてタダの楽器」なんですかね。

アレが僕には人間の声のように聞こえて怖いんですけど。


□年上の方に初音ミクは分からない? - 夕べの夕陽の眩しさの理由。

http://d.hatena.ne.jp/so-na/20090226/p1


□初音ミクを強烈にDisってしまった厨二病なモトマスダへ

- 煩悩是道場

http://d.hatena.ne.jp/ululun/20090313/1236908935


一体、どうなっちゃうんでしょうか。


□ボーカロイドはどこへ向かうのか…ネット時代の音楽、著作権 

「初音ミク」チャートインの理由アルファルファモザイク

http://alfalfa.livedoor.biz/archives/51443197.html

□人間らしさを追う初音ミクとロボットなPerfumeは

友達以上、恋人未満。

http://anond.hatelabo.jp/20090314001312

□初音ミク――データベース化とシミュラークルへの限りなき欲求

- シロクマの屑籠(汎適所属)

http://d.hatena.ne.jp/p_shirokuma/20070916/p3

□初音ミクという神話のおわり - 未来私考

http://d.hatena.ne.jp/GiGir/20081207/1228685979



そんなことを考えながら、TSUTAYAの帰り道、本屋によりました。

新刊コーナーを覗いたら、


村山由佳「ダブル・ファンタジー」

ハルキ訳、チャンドラー「ザ・ロング・グッドバイ」

小池真理子「ストロベリー・フィールズ」


が並んでて、思わず「シンクロニシティ・・・」と

つぶやいちゃいました。



アイラブ本屋、ザッツオール。