患者さんが、ある部位の不調のために来院されたとします。
当然、局所は丹念に診ていきます。
次に、そこに関連する体中のポイントを、ひとつひとつチェックしていきます。
もちろん、体全体の歪みやバランスを把握していくことも大切です。
別の角度からは、東洋医学的な経絡(ツボの流れ)の乱れも見逃しません。
木は見ますし、森も見なくてはなりません。
例えば「首がずっと痛いので色んな病院に行ったが、血液や頚椎のレントゲン・CT・MRIなど全ての検査になんら異常がなかった。だけど治らない」と訴えたらどうでしょう。
このことは、局所や体の病的な炎症、首の筋肉や靭帯の損傷や病気、骨自体の変形や異常な歪み、椎間板・神経・脊髄の障害などがない、という結果を意味します。
まずは、患者さんの話し方やその内容、体の動かし方や癖、などに注意しながら体を大きく診ていきます。
体全体の歪み、骨盤の歪み、胸椎・腰椎・仙椎の歪みがバランスを補正しようとする首への負担になっていないか。
次は局所です。
首や肩の筋肉に過緊張はないか。
左右の筋肉のバランスはどうか。
頚椎に微妙な並びのズレはないか。
続いて、関連する部位に移行していきます。
目、耳、鼻、歯、顎関節、頭蓋骨(ここには顔面の骨も含まれます)、鎖骨、肩甲骨、口腔、咽頭、喉頭、甲状腺・・・。
これらの部位の異常が、首に負荷をかけている場合もあります。
もっと遠く離れたポイントからの影響も考慮に入れなくてはなりません。
突き指、腱鞘炎、外反母趾、魚の目・・・、挙げだしたらキリがありません。
また、内臓からの反射、自律神経のバランス、ストレスを含む精神的なもの、右脳と左脳の使い方の偏倚、日常の体の癖、血圧、枕などの寝具、線維筋痛症など検査には現れない疾患などに起因していることもあります。
これらのことを、短時間に間違いなく判断しなくてはなりません。
患者さんの体を注意深く触っていると、体が様々なことを訴えかけてくれます。
私は、体の声を聴いているのです。
この声を頼りに、的確な治療を行っていくことになります。