息子の結婚式が無事終わりました。
沢山の祝いのお言葉、ありがとうございました。
意外なことに、私のスピーチを聞きたいという要望を多数頂きました。
私のこと、何を喋り出すのやら、と興味本位の方が多いのでしょうね。
但し、今後の自分たちの時の参考に、と思っている人には全く貢献できないと思います。
また、嬉しいことに、来臨された一部の方からも、もう一度じっくり聞きたいという声が届きました。
そのため、恥ずかしながら、ここに急遽、そっくりそのまま再現することにしました。
『息子を選んでくれてありがとう』のようにいかにも文例集にありそうな使い古さ
れた言い回しは、私の感性には強烈過ぎますし、箴言をちりばめた式辞も性に合いません。
さりとて、息子とのエピソードや永年温めてきた言葉を紡いでリリシズムに趨れば、おそらく涙で言葉にならないだろうと考えました。
ですから敢えて視点を変えて、このような内容にしました。
『本日はお忙しい中、新郎新婦のためにお集まりいただき、ありがとうございます。
その上に、このような心温まる祝福のお言葉を賜りましたこと、両家を代表して深く感謝申し上げます。
ここで突然なのですが皆様、地球は太陽の周りを回っています。
そのスピードをご存じでしょうか?つまり公転速度のことです…。
私は最近知ったのでありますが、なんと秒速30㎞。時速に直すと10万8千㎞という猛烈なスピードであります。
どなたもお一人として振り落とされることなく列席いただきましたこと、真に喜ば
しいことであります。
その上太陽系全体は、天の川銀河の周りをその7-8倍のスピードで回っています。
人の力ではどうすることもできない宇宙の法則の中で、私達は息づいています。
ビッグバン、宇宙誕生から138億年後の地球で、日本で、大阪で、ふたりは巡り合い、今日の良き日を迎えています。
しかもこうして皆様とご縁を頂いている。
これはもう奇跡であります。
ですからふたりには、浮き世の些末なことなどに囚われることなく、伸びやかに暮らしていってほしいと願っています。
今から2千数百年前、中国の老子は地上の全ての営みにも、秩序立った不思議なエネルギーを感じていました。
日は昇り、やがて夜になりますが、また新しい朝がやってくる。
季節は巡り、また巡っていく。
万物は生まれ、成育し、やがて風化していきますが、また新しいいのちが生まれてくる。
人間もまた然り。
人の力では如何ともし難い大自然の法則の中で、私達は生命を授かり、育まれています。
そのことにいつも感謝しながら、ふたりで楽しい家庭を築いていってほしいと思っています。
この大自然の法則を成り立たせているもの、それが陰と陽の二つ氣、すなわちエネルギーだとされています。
全てのもの、全ての現象は、陰と陽によって構成されてひとつの要素となっています。
全く相反するエネルギーですが、二つでバランスを取り合い、一つが無ければもう一つも存在しません。
例えば、陰が月で陽が太陽、陰と陽…、地と天、夜と昼、寒いと暑い、水と火、植物と動物、柔と剛、休息と運動、内向きと外向き、などなどです。
もちろん、家庭の中にも陰と陽があります。
陰が女性で陽が男性、陰が妻で陽が夫。
あ、尤も最近は、陰陽逆転をよく見かけますが…。
とにかく、まずはふたりで、陰と陽のバランスを保っていくことになります。
そして時系列にも陰と陽があります。
不幸な時はありますがいつまでも続くわけではなく、いつか必ず順風満帆な時がやってきます。
陽が転じて禍となり、陰が転じて福となります。
ですから陽の時には驕らず、陰の時にも決して諦めることなくふたりで助け合えば、また新しい陽に転じていきます。
それでもふたりの長い人生、陰と陽のバランスが崩れてトラブルが生じてくるこ
とがあるやもしれません。
その時にはどうか皆様、ふたりに癒しのエネルギーを与えてやってください。
なにとぞ宜しくお願い申し上げます。
最後になりましたが、皆様のご多幸とご健康をお祈りして私の挨拶といたします。
本日は真にありがとうございました。』
「あの状況で、しかも新婦の両親への言葉の後に、何も見ずに淀みなく話せるなんて凄いですね」
内容如何よりも、この感想が、私の達成感を言い尽くしてくれていると思います。
心から幸せそうなふたりの笑顔を見ているだけで、父親冥利に尽きる一日でした。