ベートーヴェンの最後の交響曲であり、交響曲の歴史上最も有名な作品として全世界で愛好されている第9番「合唱」は、1824年ベートーヴェンが54歳のときに完成しました。

 

初演の指揮はウムラウフが振り、ベートーヴェンは総指揮という立場で、舞台に立ちました。 しかし、演奏が終わって聴衆の拍手が起こっても、この頃、既に聴力を失っていたベートーヴェンはその歓声が聴こえず、歌手の一人が彼を聴衆の方に向けて初めて場内の熱狂に気付き、初演が成功したことを知りました。 これは有名なエピソードですね。

 

交響曲に声楽を持ち込むという画期的な試みは、この曲が必ずしも初めてではなく、この曲以後もベルリオーズやメンデルスゾーン、リストなどが声楽付き交響曲を発表しています。 しかし、真に傑作と呼べるのは70年以上後のマーラーの「復活」を待たなければなりませんでした。

 

日本では、年末にこの曲が演奏されるのが風物詩のようになっていますが、外国にはこの習慣はありません。一説によると、戦後まもない頃、収入の少ないクラシック演奏家が正月の「餅代」を稼ぐため、合唱団も含めなるべく多くの演奏者が参加でき、しかも客の入る人気曲と言うことで、盛んに取り上げることになったとのことです。

 

この曲は(特に日本では)、合唱が入る第4楽章だけ突出して有名ですが、それ以外の3つの楽章も本当に素晴らしい音楽です。

 

第1楽章: 広々とした宇宙を思わす響きから力強い旋律が浮かび上がります。 大河の流れのような第二主題とともに、堅固で力感溢れる音楽が壮大に展開します。

 

第2楽章: ティンパニの切れの良いリズムで、たくましく躍動する音楽が展開するスケールの大きなスケルツォです。

 

第3楽章: ベートーヴェンの作曲した最も美しいアダージョでしょう。 静謐で安らぎに満ちた音楽が流れ、祈りや希望など、厳かな精神性も感じさせられます。

 

第4楽章: 前3楽章の音楽が回想/否定された後に有名なメロディが静かに提示されます。 独唱そして合唱を加えた歓喜の歌は次々と展開、感激が最高に高まり、壮大華麗に結ばれます。

 

 

「のだめ」では、4つの楽章のうち3つまでが登場します。さすが超有名曲ですね。

 

まず第1楽章は、桃ヶ丘音大の定期演奏会で演奏するAオケのプログラム。 ミルヒーがAオケを指導していました。(本番では大河内が指揮してあえなく自滅)

 

第2楽章は映画「最終楽章前編」で、千秋が指揮するマルレ・オケの演奏会に遅れそうになったのだめがダッシュするときのBGMに使われます。

 

第4楽章も同じく最終楽章前編で。 千秋から「ボレロ」での協演の打診を受けたのだめが歓喜する場面に使われます。 まさに歓喜の歌で楽しい場面でした。(でも協演は孫ルイにとって換わられてしまうのですが・・・・)


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ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」/フルトヴェングラー(ウィルヘルム)

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ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/バイロイト祝祭管弦楽団及び合唱団

シュワルツコップ(ソプラノ)、ヘンゲン(コントラルト)、ホップ(テノール)、エーデルマン(バス)

モノラル録音のCDはめったに聴かない私ですが、このフルトヴェングラーの第九だけは別格です。 第1楽章での壮大なスケール感、第2楽章の推進力、第3楽章の神秘的なまでに美しいアダージョ、そして第4楽章での狂瀾怒涛のクライマックス!

 

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 バーンスタイン(レナード)
 
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レナード・バーンスタイン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/ウィーン国立歌劇場合唱団  ジョーンズ(ソプラノ)、シュヴァルツ(アルト)、コロ(テノール)、モル(バス)

ステレオ録音で、この曲に相応しい気宇壮大な演奏を挙げるとするとこれでしょうか。 バーンスタインの熱く力強い指揮とウィーンフィルの美しく明るい音色が魅力的。 特に第2楽章のリズム感は素晴らしい。

 

ベートーヴェン:交響曲第9番/ベートーヴェン
 
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ジョン・エリオット・ガーディナー指揮/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク/モンテヴェルディ合唱団/オルゴナソヴァ(ソプラノ)、オッター(メゾソプラノ)、ジョンソン(テノール)、カシュマイユ(バス)

古楽器による演奏で、その一気呵成にたたみかけるようなテンポとリズムの切れのよさが新鮮です。 

声楽陣の上手さも特筆されます。

 

ベートーヴェン:交響曲第9番/シュミット=イッセルシュテット(ハンス)

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シュミット=イッセルシュテット指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/ウィーン国立歌劇場合唱団 サザーランド(ソプラノ)、ホーン(アルト)、キング(テノール)、タルヴェラ(バス)

この指揮者らしく、正攻法で中庸を行く演奏です。 面白みがないと言われるかもしれませんが、この演奏はなんか落ち着くんですよね。