第51回「短歌研究新人賞」に応募した連作です。
一部改作・横書き用処理をしてあります。



   ごめん.txt

              福々屋 大福



弾丸のように過ぎてく青春の的がみつからなくて撃てない

すみませんというと僕が悪いことしてるみたいでもうしわけない

どこまでもよりそっていく川だから大きな橋でわたってしまう

友達の友達を馬鹿にする人を心の中で馬鹿にしている

無責任でいられるように少しだけ自分のせいにして黙ります

一連の流れにそって僕たちはただしい人になっていきます



お母さん 山手線は本当におなじところを周っています

すれちがいざまに「おはよ」というときの適切距離がおぼえられない

一般に知られていないことですが僕はタカシではありません

テルミーの後にホワイと続けずに黙っていると馬鹿みたいです

手をあげて発言してといったからぶんなぐったのになんで怒るの

大丈夫気にしてないといわれても誰より気にしてるのは僕です

ビル街でくるくる踊るコンビニのビニールにまで嫉妬している



楽しいと思いこまなきゃ脳みそがやがてちぢんでうごかなくなる

恋人ができそうもないこの僕に彼女はもっとできそうもない

好きな人の顔も名前も知らないしもう人間じゃなくてもいいし

今さっき僕の口からでたものにいじめられているような気がする

サトウだかカトウだかいうあなたではない男性と笑っています

男らしく女らしくもあるようにあなたと話す僕は「わたし」で

「コーヒーは飲めない」という嘘ぐらいコーヒー飲んでることで気づいて



会いたいと思う気持ちはあるのだし今日もあなたに会えなくていい

恋愛をしてもないのに失恋をしていたことにそっと気づいた

走りだすなんて簡単 ゆっくりと歩きだすのはもっと簡単

先生になれそうもない人たちはどうかならないでいてください

「O型の血が大ピンチ」今ならばだれか救えるのかもしれない

今はない靴屋で買った靴だから雨が染みてもどうもできない

左手がずっと痛いし僕はもうきっと死んでしまうんだろう



遺言はデスクトップの右下に「ごめん」と名付けおいておきます

そういえばあなたのことが好きでしたこんなところでいってごめんね

ごめんねというとあなたに悪いことされてるようですこしうれしい