共謀罪 Ⅳ【】

 

賛成派の意見
  • 政府は、条約の批准について留保を付さない形のものについて国会承認を得たので日本政府としての留保は不可能であるとし、あるいは民主党修正案が必要とする留保は条約の趣旨と目的に反している、とする。
  • 政府案あるいは与党修正案を支持する立場からは、これまで条約を締結した120を超える国の中で、民主党が言うような留保をした国はなく(なお、一時民主党が指摘していたウクライナの問題があるが、外務省の調べによると、ウクライナは留保をしているのではなく、条約より広い共謀罪があるとのことである。)、民主党の案によると5年以下の懲役の犯罪で犯罪組織の典型犯罪までもが抜け落ちていくため、世界の中で我が国だけがこのような留保をつけておいて国際社会に顔向けができるのだろうか、という批判が存在する。
  • アメリカ合衆国における留保は実質的にはささいな問題であり、実際にはほとんどの部分で共謀罪が有効であるため、無視するべきである。

共謀段階で自首した犯人に必要的減刑・免除を与えるべきか?

反対派の意見
  • 市民団体・人権擁護組織・労働組合・NGOなどの中からは、同様の法理を含む過去の治安法制や顕示行為等の規定をもつ海外の共謀罪の適用経緯や、自首による必要的減刑・免除になる規定の存在から判断して、与野党修正案のような文言上の修正をたとえ加えても、通信傍受・盗聴など捜査段階での中立性は確保されずに「密告社会」化が起こってしまうこと、また将来的に「組織犯罪」の名の下に社会運動や抗議行動に対する共謀罪の「濫用」が起こるリスクがあることなどから、共謀罪は認められないとする意見も出されている。
  • 戦前の日本は処罰の早期化による治安強化の考えを拡大解釈し、『治安維持法』という悪法を作り出したことで汚点を残した経歴がある。
賛成派の意見
  • 犯罪は共謀→予備→実行行為の3段階に分類しうるが。実行行為の段階で自首すると必要的減刑・免除となる。
  • 例えば、殺人を共謀し、ピストルを購入し(殺人予備段階)、ピストルで被害者に重傷を負わせても(殺人実行行為段階)、反省して被害者を病院に搬送し被害者を救命すれば必要的減刑・免除される。
  • ところが、反対派の主張どおり共謀罪の必要的減刑・免除を廃止すると。共謀の段階で自首しても実行犯を前提とした刑法総論の規定が適用されない結果、必要的減刑・免除をえられなくなる。
  • 例えば殺人を共謀したが、怖くなって自首しても必要的減刑・免除は得られない。
  • 反対説は共謀段階での自首に必要的減刑・免除を与えず。犯罪実行着手後の自首については必要的減刑・免除与えるわけだが、これはより犯罪結果発生の危険が大きい実行犯の自首・中止犯のみを優遇しており不合理である。
  • また、実行行為段階の「自首」や「中止犯」は必要的減刑・免除になっているが。すでに密告社会になっているのだろうか。
  • 「治安維持法」は、条文上において国体に反対する思想、あるいは共産主義に基づく結社の自由を明文で否定しているが、共謀罪法案は犯罪実行を主とした目的とする団体が重大な犯罪実行を共謀し、一部の共謀者が予備行為に出た場合を問題としている。条文の趣旨も適用対象も制定された時代背景もまったく異なる。