前回、光の謎について触れたので、この際、光の謎よりももっと謎のシュレディンガーの猫の謎について触れておきたいと思います。
シュレディンガーの猫の話というのは名前ぐらいは聞いたことがある人は多いと思いますが、中身については良く知らないし、聞いても良く分からないという人も多いのではないかと思います。
何故、聞いても良く分からないかというと、その意味するところが、あのアインシュタインでも死ぬまで納得しなかったというしろものだからです。
前回お話しした光の謎の話はアインシュタインの相対性理論から導き出される大きな謎の話でしたが、このシュレディンガーの猫の謎の話はもっととんでもない謎で、相対性理論よりも少し後から発展し始めた「量子力学」から導き出される謎です。その意味するところは我々のこれまでの常識的な世界観を根底からひっくりかえすのもので、あの光の謎を発見したアインシュタインでも「そんなこたあないやろ!」とその根本的な間違いを見つけようとして死ぬまで受け入れなかったというものです。
しかし、アインシュタインの反論も空しく、その後の研究で量子力学の正しさがますます証明されて行った訳であります。
アインシュタインは、我々が見ている時間と空間は我々の運動の状態によって変わるものであり、それぞれの運動状態によってそこから見える時間と空間は変わるというものでした。
しかし、量子力学が提示した世界は、もっと奇妙なもので、物質の究極の姿は波動関数と言われる存在確率を示すものの重ね合わせ状態であり、その存在の仕方は、人間が観測するまでは確定しないというものでした。
つまり、長い長い超ややこしい話を超はしょって結論だけを言ってしまうと、物質の存在の仕方というのは初めから決まっているわけではなく、あらゆる可能性の中から人間の観測行為によって一つだけが選択されて実在化するというものです。
誤解を招きやすい喩えかもしれませんが、テレビの電波は電波のままではまだ何も見えず何も姿を現さないし、しかもその中には2CH~99CHまでいろんなチャンネルを映し出す信号が混在していますが、それを我々がテレビという装置を通じて、チャンネルを特定して初めて特定のチャンネルがはっきり見えるようになります。
物質も、その存在の仕方は先ほど言ったあらゆる存在可能性の確率分布を表す波動関数としてのみ存在しており、人間の観測行為がその無数の存在可能性の中の一つだけを選択して、物としての特定の存在の仕方が確定するということです。
ということは、「夜空のお月様も人間が見ていないときは、まだその存在の仕方が確定していないということに成るではないか?」とあのアインシュタインが疑問を呈したのですが、その後の研究で量子力学の正しさがことごとく証明されて行った訳です。
ただ、あらゆる可能性の中から人間の観測行為が、一つの可能性だけを選択して、それが実在化するというのは、あまりにも物質の存在の仕方における人間の意識の果たす役割が大きすぎるのでないか?と疑問に思う人も当然ながらいて、今ではそのような人間の意識の過大な役割を想定しないで済む、もう一つの解釈が有力になりつつあります。
それは多世界解釈と言われるもので、あらゆる可能性はその可能性の数だけ、毎瞬それぞれの世界として枝分かれしながら実在化しており、観測者自身もそれぞれの世界に枝分かれしていくので、観測者の観測結果は常に一つの世界が実在化したように見えるというものです。
まあ、こんな話を初めて聞いた人は、何を訳の分からない戯言を言ってんだろう?なんて思っているかもしれませんが、実は、これは今でも物理学者の中でも大きな謎の一つで、あまりにも話がややこしくなるので、この問題に深入りしているのは、ノーベル賞を取ってしまったような学者としての地位が不動になった人達だけです。
そうでないと、若いうちから深入りすると泥沼にはまってしまって出世コースから外れてしまうのでこの問題を避けて通る学者が殆どです。
だから、あまり世間では知られていないし、ましてや、学校では教えないのです。教えない理由は理科の先生自体がこの問題を説明できないからです。大学でも博士課程を経て、今流行りの量子コンピューターを研究している人達ぐらいしかこの問題に正面から取り組むことはありません。量子コンピューターの研究では基本的には上記の多世界解釈による重ね合わせの原理を応用しているようです。
こんな話が信じられない人はご自分で下記のような用語検索をして色々と調べてみることをお勧めいたします。
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