「いんちき保護命令」中間報告
0. はじめに
本シリーズのエントリがしばらく途絶えておりましたが、中間報告として出せるだけの情報が集まりましたので、ぼちぼちアップしていこうと思います。
で、いきなり話が逸れるのですが、ここで一冊の本をお目に掛けたいと思います。
本来は、アップ予定・順調に遅延中の『参考文献エントリ』で紹介する予定の本だったのですが、この『いんちき保護命令シリーズ』で出しておかなければっ!的な記載がたっぷりあるので、いつ完成するかわかんない『参考文献』に先駆けての紹介となりました。
※著作権を盛大に侵害してるっぽいエントリですが、当方としては『超おすすめ!買おう!』としか言ってないわけですから、大きな心と広い視野で見ていただきたく思います(・・・細かい話は勘弁してくださいね)。
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弁護士専門研修講座 「離婚事件の実務」
by 東京弁護士会 弁護士研修センター運営委員会
ぎょうせい:3,000円 →amazon.co.jp
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これ、実務家を招いての研修会(H21開催)の講義録を翌H22年に一般書籍として仕立て直したモノなんですが、あまりに編集・加工が少ないせいで、裁判所側の講師(判事)が根こそぎ弁護士連中にブチ切れ気味なのがモロ見えになってます。
そして、判事の「抑えに抑えた口調の中から漏れ出る弁護士への怨嗟」が、悪趣味な面白さをかきたててやみません(汗
要するに、『おまえら弁護士みんなバカ』 『勉強して出直して来い』 としか言ってなかったりして(苦笑)
例:第Ⅲ章「離婚請求と慰謝料請求の真理」より抜粋
ほとんどの先生が、今さら何をいうかと思われているということは知った上で、あえてお話しさせていただきます。というのは、現実に当庁に来られる弁護士の方の中に、たまに勘違いされている人がいるからです。
<中略>
もし修習生の間に、親族法の勉強が不十分であるとか、民訴法を越えた人訴法の勉強をする機会がなかったという方がおられたら、親族法については、ともかく基本書的なものを読んで欲しいと思います。
また、人訴につきましても、民訴のほかに、たとえば『一問一答』という本でもいいから、そのようにまとまった本を読んでいただいたほうが、かえって理解が早いかな、と思います。
かつ、なお経験豊富な方でも、ちょっと不安だなという方も読んでいただいたらいいなと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
<中略>
これらの法律論を踏まえて、裁判所が言いたい事は、主張は争点を意識して簡潔にお願いしたいということです。いくらすばらしい訴状であっても、担当裁判官が理解しない限り、訴訟上は不利です。だから、担当裁判官が理解できるように書いて下さい。よろしくお願いします。
<中略>
いろいろお話ししましたが、今日の話も参考にして、離婚訴訟について正確に理解していただいたうえで、立証の見込みなども考慮に入れ、依頼者本人や子などの関係者のためには何が最善かを真摯に考え、訴訟に携わっていただければと思います。
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スゴいでしょ? マジものの苦情ですよ、コレは。
※受講者席の反応が書かれていないのが惜しまれます。(・・・「沈黙」だけはやめて欲しい、せめて「一同苦笑」であって欲しいと願われてなりません)
で、この苦情っぷりを苦笑しながら読むだけでも、価格の半分(1,500円)くらいの値打ちはあります。記載内容の役立ちっぷりは値段分あるので、価格の1.5倍のバリューがあるお買い得本ってことです。
お勧めです!
ところで、『離婚訴訟ワールド=ダメ弁・バカ弁の集まるゴミ溜め』という、当方の(当初は荒唐無稽だったはずの)仮説をぶっ潰すような話、一度でいいから出会ってみたいです。ホントに無いですか?
で、この第Ⅱ章も出色でしてね。
「DV事案への対応(保護命令申立てを中心に)」
と題して、当時東京地裁でDV事案の対応をされていた、判事ご本人の講義が掲載されています。
もう、立場とか組織とかいろんなものを越えて、この判事さんの憤りやDV法への疑問が漏れる漏れる。
まず、東京地裁の現職判事という肩書きを背負ったヒトが、前置きに、
はじめに
<前略>本日の話しは、また、基本的には私の個人的な意見であるということをご理解いただきたいと思います。
※以下、引用部における強調等は、すべて当方「ひろぽん」によるものです。 |
という注釈を入れて話しはじめているあたりから、『異例中の異例』アンテナがビンビン反応するわけですよ。
ところで、DV法での保護命令手続は、(なぜか)民事保全*関連の条文をまるパクしたような内容なんですが、そこからしていきなり俎上にあがります。
*民事保全=仮処分・仮差押え等、迅速性が要求されるネタを対象にしてるルールなんですが、いずれも間違いだったことが判決後に判っても、カネで済む話ばっかなんですよね。なぜこれがDV法に流用されているかはホントに理解不能です。
1 保護命令事件の○部での位置付け
(1) 重い負担感―被害者保護の要請と心証が採れないジレンマ
さて、まず保護命令事件の○部での位置づけについてお話させていただきます。
<中略>
保全事件は、事件の絶対数が多いので、事務量も多いのですが、力仕事という面もあり、わりと機械的に処理していけるというところがありますが、DV事件はだいぶ性質が違います。
おまけに平成21年4月以降○部の裁判官は大幅に人員減があり、○部専従で事件処理に当たっているのは5人となりました。民事部全体が非常に厳しい状況なので、仕方がないと思いますが、かなり大変な状況にあるということです。
ところで、なぜDV事件の負担が重いかですが、これは証拠があまり充分でない中で、短時間で判断することが求められているという点にあります。
保護命令の内容というのは、相手方に対して、かなり権利を規制するものとなる場合があるので、簡単に出していいのか、ということも考えざるを得ず、非常に悩ましいのです。 |
この民亊○部ってのは、DV法保護命令の専属部門じゃなくって、民亊保全をメインの仕事としているところです。そういう部で、書類にハンコをつけるヒトが5名しかいないってのは本当にスゴい話でして。
・・・東京地裁ですよ!?
支部*じゃないんですよ!? 23区が所轄ですよ?
・・・日本の経済の中心部ですよ!?
人口比では1割でも経済規模は2~3割ですよ!?
そこで民亊保全事件を扱ってるのが、たった5名!?
日本全国に引き直せば、総勢15人とか20人で日本中の民亊保全を処理してるってこと!?
えええええええっ!?
あり得なさ過ぎます。ここの判事、ほぼ過労死寸前なんじゃないでしょうか。(そもそも民亊保全なので)後でカネで精算できるような案件ばっかりとは云え、どう考えてもムチャすぎます。
*23区外の市部は、離島をのぞき立川支部で扱われます。
で、DV法の保護命令セクションが民亊保全のまるパクであることを踏まえ(?)、各地裁においては民亊保全を担当する部署に割り振られています。
もちろん、その部署でのメインの仕事はあくまで民亊保全ですので、それに基づいた要員配置が行われているのだろうと思います。東京地裁本部で独立の部署(民亊○部)が与えられて専属判事5名ですから、他の地裁なんかだと、独立部署じゃなかったり、兼任だったりするのでしょうか。
いずれにせよ、忙しかったり、メインの仕事がある上に乗っかってくる「余計な」仕事なんだろうな、という様子が伺えます。(このあたりは裏づけ可能な話ですので、いずれ調べます)
さて、この講義自体は平成21年度に行われたものですので、この統計資料*(20行目)に載っている3,100件の保護命令
の中にある『東京地裁扱い198件』が、この判事氏が関与したかも知れない事件だってことになります。
ただし、東京地裁は(離島部を除き)本部と立川支部で案件を分け合いますので、それを考慮する必要がありますね。(人口比で割ってしまいますね)
198件÷1,320万人(都の総人口)×900万人(23区内総人口)≒135件
で、この統計資料によれば
、ざっと1/6が申立人による取下げ&残りの1/15が棄却になるので、この135件は、
申立135件 → 取下げ23件、却下7件、発令105件
なのだろうと概算できます。
「東京23区では、年100件くらい発令してるんだね」と覚えておいてください。
*この統計資料から得られる管区ごとの保護命令件数をピックアップすると、本当に面白い結果が出たりします。 以下、軽い余談です(苦笑)
保護命令件数の資料と人口データを使って、ちょっと遊んでみます。
日本全体 3,100件/1億2,800万人 → 41,000人@件
東京都 198件/ 1,320万人 → 67,000人@件
東京都の少なさが際立ってます。これだけの規模の母集団で、ここまでの歪みがあるのは、何かしら特別な説明を要しますね。それはいったい何なんでしょうか。
さて、当方が住んでいる大阪高裁管区の6府県を見てみます。強烈な数字ですね。やっぱり、住民の気質が荒っぽく(笑)、DV事件が続発しているということなのでしょうか。
大阪府 259件/ 890万人 → 34,000人@件
京都府 104件/ 260万人 → 25,000人@件
兵庫県 155件/ 550万人 → 35,000人@件
奈良県 55件/ 140万人 → 25,000人@件
滋賀県 29件/ 140万人 → 48,000人@件
和歌山県 40件/ 100万人 → 25,000人@件
で、名古屋圏は少ないんですよね。
愛知県 93件/ 740万人 → 80,000人@件
まあ、この話は、いずれまた続編につづく、ということで(謎)。
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で、話を進めますね。
冒頭1~2ページめでしかないのに、さらに爆弾発言が出ます。
(2) 保護命令事件が地裁で扱われる理由―立法時の議論
保護命令事件というのは、内容が夫婦の同居義務に関わることなので、(家事審判事項ではないかという点は置いておいて)家裁調査官を使えたら、もっと証拠の収集が的確にできるのではないか、ということを申しましたら、ある人から、立法段階では家裁で扱うことが考えられていたという話を聞かされました。
結局は地裁でやることになったわけですが、その理由として、当時の議論では、家裁に対する不信感というようなことも言われていたようです。その話を聞いたときに、家裁に対する誤解が世間にはあるのかな、と少し驚かされました。
いずれにしても、保護命令事件を家裁でなく地裁で担当することとしたのは、非常に残念なことであると思っております。
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特に解説はいらないでしょう。サクサク先に進みます。
次もいい感じですね。要するに、「(マトモに吟味すれば)3割は却下される事案」だということです。
これ、『だろうと思います』で結んでいますが、『リアルに案件に対応しているホンモノの担当者』が、組織の看板を背負って行った弁護士会の研修で、用意周到に「個人的意見」と前置きした上で発言した内容なんですよね。
2 最近の統計から
(2) 終局事由(認容・取下げ・却下)の比率
次に、ここ3年間でも終局事由の割合を見ていきましょう。一部認容を含めた認容が、3年間だいたいいつも同じくらいで7割前後です。そして、取下げが2割前後、却下が1割前後となっております。
取下げの中身を見ると、当事者間で事実上の和解ができたと思われるものもありますが、大部分は裁判所からの心証開示によるものと思われます。
つまり、そのままいくと却下になる事案だったということだろうと思います。 |
さすが判事さんと云うべきか、直截には何も言わずに、伝えるべきことをキッチリ伝えてくれるわけです。
※で、この講義録のうち、DV法のザルっぷりに悩んでおられる部分は一般論として、個々の事例のインチキっぷりを明かしておられる部分は上述の3割の部分の話だとして読まれると良いかと思います。
余談: 先ほど、東京地裁本部の取り扱い事件数に関して、年間およそ、
「申立て:135件、取下げ:23件、却下:7件、認容:105件」
という概算をしましたが、ここの発言では異なる数字が出ています。示されているのは、おそらく東京地裁本部管轄の資料のはずですから、『ここ3年』の趨勢として(仮に、申立数が同等とした場合)、
「申立て:135件、取下げ27件、却下14件、認容94件」
あたりの数字になっているはずです。これは、全国平均の比率を使った上記概算結果とは大きく異なるものです。
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次の話も、キッチリ読むとホントに強烈な話です。強調したい部分こそ、伝聞形に推測表現を重ねて、見た目は弱く弱くなるようにしていただいてるわけですが(苦笑)
(3) 申立代理人がつく場合
次に当事者に代理人が付く割合についてです。ここ3年間でみると申立人に代理人が付く割合は5割弱という状態で、相手方に付く割合は2割弱です。
これが多いのか少ないのかということですが、この保護命令の手続きというのは本人が裁判所に1回か2回来る程度なので、そういうことから考えると、意外に多いのではないかという評価もあろうかと思います。<後略>
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単に「弁護士がついている割合が高い」だけなら、わざわざ章立てしてしゃべる必要もないわけです。
・・・じゃあ、どうしてワザワザ?と聞くのも白々しいですね(苦笑)。
さて、保護命令の発令に関するリアルな話が始まります。
このザル法のおかげで、強烈な人権侵害が生じうる、という「法に対する批判」を、「法に従うことを強制される」判事の立場から、最大限の頑張りで発言していることがわかります。
3 保護命令の仕組み
(2) 接近禁止命令
<前略>余談になりますが、先日、公務員である相手方に対して保護命令を言い渡しました。
そのとき相手方が、「命令には従います。ただ、違反行為は刑事事件になるということが非常に困るので、はいかいという言葉について説明して欲しい」ということで、具体的な例を挙げて、はいかいに当たるか当たらないかという質問がありました。
これは、簡単にイエス・ノーで答えられる質問ではなかったので、一般論として「申立人がいそうな場所にはなるべく近づかないほうが良いが、何か用事があってやむを得ず近づくという場合であれば、はいかいには当たりません」と答えたのですが、「用事があるかないかというのは、どうやって立証するのですか」と、いわれました。
それに対して「犯罪事実は警察が立証するものです」といいましたら、「そうは言っても、逮捕されたら公務員は終わりですからね」といっておられました。
申立人と相手方の生活圏が重なっている場合、散歩をしていてもはいかいになってしまいそうで困ったことだと思っています。<後略>
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この判事氏は、保護命令自体の実効性も考慮して、申立ての認容/却下を判断している、とのことです。
DV法の枠内でも、出来うる限り中立的に判断していこうとする、判事としての矜持を感じる一節です。
少なくとも、この方が担当判事であったなら、この『いんちき保護命令シリーズ』を書く必要は一切無かったでしょうね。
(3) 退去命令
<前略>ここで余談ですが、先日、同じ建物の1階と2回で家庭内別居をしているという方の、接近禁止命令の申立があったのですが、これでは相手は接近禁止命令を出しても無意味なわけです。
要するに、先ほど言った「当該配偶者とともに生活の本拠としている住居を除く」ということになっているので、接近禁止命令を出す意味がない、ということになります。
このままでは却下になるということで、取り下げていただきました。<後略>
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さすが判事さん、ありとあらゆる問題点に目配りが効いています。
年100件余りのお仕事の中で、思いっきり作為的なインチキ事例に、いったい何回出合ったのでしょうかね。
(5) 子への接近禁止命令
<前略>親族への接近禁止命令というのはあまり問題ないと思いますが、問題は子への接近禁止命令にあります。
結局これが出ると、相手方と子供との交流の機会が奪われるということになります。
そうなると、事実上、将来、離婚の判決等で親権者指定をする場合に、継続性ということを重んじて、やはり申立人の方が親権者になる可能性が高くなるということがあります。
それに対して、それでいいのかという疑問が若干あるわけです。
<中略>
子供に対する親の監護・教育の権利、あるいは義務について考えると、配偶者保護の観点からのみ、子供への接近禁止命令を発していいのだろうかという疑問があるわけです。
実際そういう質問を相手方本人から受けたことがあり、その手の質問は非常に答えにくいものです。
「配偶者に暴力を振るったのだから、それくらいの不利益は仕方ないでしょう」とか、「面接交渉に関する申立てを家裁にしてみてください」などと言って済む問題ではなく、とにかくDV法というのは、少し乱暴な感じがするかも知れません。 |
あと、注意して読んでいただきたいのは、この判事氏が、基本的に冤罪の可能性を捨象して話しているということです。すなわち、これらの大半が真っ当な(?)加害者を念頭に置いた発言だということです。もちろん、「シリアスなDVについては刑法の範疇のはずだ」という当然の認識が土台にある発言でしょうね。
4 保護命令の要件
(1) 配偶者
<前略>そういう場合に、暴力だけをとらえて咎めるというのは気の毒ではないかと思います。
夫婦というのは、相手がああいえばこういう、相手がこうすればああするというような相互関係があるはずなので、一方的にどちらかが悪いというケースというのはあまり多くないのではないかと思います。
裁判所も含めて第三者が、そういう関係を、本当に理解するというのは非常に難しいことです。
けれども、この保護命令の制度というのは、暴力だけを取り出して、効果に結びつけるという制度になっています。 |
ガンガン行きます。もう、端から端まで現DV法に対する問題提起ばっかりです。
(4) 証明責任
<前略>その中で出てくる証拠というのは極めてわずかであり、それでも結局、申立人保護の要請から発令してしまうことが多いのですが、これでいいのだろうかと非常に悩ましいわけです。
<中略>
何度も申しますが、家裁調査官に当事者から聞き取り調査でもしてもらうなどして、もう少し証拠を補充してもらえれば、自信をもって判断できるのではないかと思います。
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よく知られた事実ですが、リアル判事・リアル従事者の口から出ている発言だというのが重いですね。
当方は、裁判官の人事ローテーションが1年なのか2年なのかは存じませんが、この判事さんは、H21ごろに東京地裁本部でDV案件を所轄する部署において、5人中1人の判事として、確かに仕事をしておられました。(現在は別の地裁に異動しておられます)
事実上、どれだけの方を冤罪被害から救ったのか、ということを考えると、最大級の感謝を申し上げたく思うほどです。
(6) 否認の態様
<前略>それと、最近いくつかあったのが、自傷行為だという主張です。
これらに対して「暴力を振るったのは、相手方がどうしようもなく悪いことをするので、それをやめさせるために殴ったので、やむを得なかったのです」とか、「日頃、自分よりも申立人に殴られることのほうが多かった」、あるいは、「そのときも申立人が自分のことを殴っていた」、それから端的に正当防衛だという主張もあります。
<中略>
なぜこんな話をするかというと、また観点が違うかもしれませんが、暴力を振るった相手方の事情を聞いてみると、気持ちは分かるという話が非常に多いからなのです。
例えば夫婦関係が悪くなっていく過程で、申立人のほうが隠れて不貞をやっていたという話、それからパチンコに狂って子供のお年玉を盗んだり、サラ金からの借金を繰り返したりということで、もうどうしようもなかったという話、子供や自分の両親の面倒を見なくて、挙句は虐待までしていたという話。それから、相手方の自尊心を徹底的に痛めつけるようなことを言ったりする、という話が出てくるわけです。
「なぜ別れなかったのですか」と聞くと、だいたい「子供がいるので別れられない」とか「ひどい人だとは思うけど、愛していたんです」というようなことをいう場合もあるわけです。
以上のような、いわば相手方にも相当の落ち度があるというケースを、ある裁判官は「挑発型」と一括りにして読んでいます。先ほどの双方で暴力を振るいあうというケースについては、「もみ合い型」というようなネーミングをしております。
しかし、いずれにしても、裁判官としては、「暴力は絶対悪だ」と、立場上言わざるを得ないので同じことなのですが<後略>
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このタイトルで一章を設けた事実から、この判事氏の並みならぬ決意が伺えます。
下記引用部分に関しては、当方による解説など不要でしょう。
なお、「本当に夫を恐れる妻は~」以降に誤認と思しき発言がありますが、これは同判事氏の経験した事例限定の話を一般的なもののように語ってしまったというケアレスミス的なものだと思われます。
ただ、この部分で注目すべきは、そのような誤認の有無なんかではなく、現職判事のコメントとして、『救うべき者を救えなかったことが2回ある』と明言されている、という事実です。
6 保護命令のラベリング効果
保護命令が出されると、相手方に暴力夫というラベリングがされてしまわないか、ということが良く話題になります。離婚訴訟などで親権者指定や慰謝料算定、あるいはそもそも離婚が認められるかどうかというところで、保護命令が出たという事実が、影響することはないのだろうかということが議論になります。
保護命令を出している立場からするとラベリング効果というのは無いはずで、あってはならないと思っているわけです。つまり、親権者としての適格性とか婚姻破綻の有責性というのは、別途事実を認定し直して、その上で判断すべきものであるというふうに思うからです。
そうはいっても、どうもラベリングを狙ったのでは、と思うような申立てというのもあります。
ただ、子への接近禁止命令については、前述のように、実際に親権者指定の判断に影響を与えるということは間違いないわけです。
また、ラベリング効果はないといっても、相手方としてはやっぱり名誉に関わるところがあると思うわけで、どうしても保護命令の申立てに対しては、争う、ということになってしまいます。
<中略>
相手方の暴力を認定しなければ保護命令が出ない、という仕組みには少し問題があるのではと思ったりもします。
本当に夫を恐れる妻は、我慢を重ねているために夫から暴力を受けたことがないのです。そういうケースが2件あり、私はこころならずもどちらも取り下げてもらいました。
また、暴力を要件とするから暴力の存否について非常に熾烈な争いになって、こちらも事実認定に困るということになるわけで<中略>
これに対して、子への接近禁止命令というのは、子供への福祉について全然考えていないということで、もう少し慎重なものにする必要があると思います。
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奥歯にモノの挟まったような口調のまま、ようやく結びの言葉となりました。
マトモな判事氏、ここまで本当にお疲れ様でした。
なお、この「DV法の目的に異論があるわけではなく~」以降のセリフは、DV法の内容を理解したヒト全てが異口同音に言うものだったりしますね。
終わりに
本日は、正直に思っていることをお話しさせていただきました。
いろいろご批判を受けるのも覚悟でお話しをさせていただきましたが、誤解のないようお願いしたいのは、私は、DV法の目的に異論がある訳ではなく、DV法による成果が上がっているということは、評価すべきことと考えています。
しかし、この保護命令の制度については、何度も申しますが、使い勝手が悪い部分が多いということで、本日のお話しは終わりにさせていただきます。 |
以上、引用ばかりのエントリとなりました。
なぜ、「いんちき保護命令(中間報告)」を書き始める前に、このような本の紹介を長々としたのかと申しますと、今回のいんちき保護命令が、このマトモな某判事氏と同じ東京地裁に属し、同様の環境の中に置かれ、同じ程度の能力を持ち、同じような問題点を感じているはずの、同じくらいの件数をこなしている某判事によって発令された、という事実を、まずはじめに念押ししておきたかったからです。
すなわち、次エントリ以降において、今回のいんちき保護命令の発令により明らかとなった、その某判事がどれほどまでにいい加減な仕事をしているかという事実、そして、その某判事がどれほどの案件をこなしているか=DV冤罪を量産しているのか、という事実を、確固たる証拠資料に基づき示していくことになる、ということです。
→「いんちき保護命令」中間報告(その1)につづく
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