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2016年05月23日 14時45分51秒

インド旅行記 7話続き

テーマ: インド旅行記
ナマステー

HOWL GUITARSのhiroggyです。

インド旅行記のブログまとめ続きです。

本日、5/23、最高気温は30度を超えています。ぴーかん。

今年のHOWL GUITARSハーブ菜園は、去年からのメンバーであるバジル、ローズマリーに加え、新たにルッコラ、パセリ、コリアンダーが加わりました!(イタリアンパセリのイ・パセ子は越冬はしたんですが、遂に先月枯れてしまいました。。。)

さすがルッコラは発芽がとても早く、種をまいて数日で可愛い芽がひょこっと出てきました♪

まだ肥料土がたくさん余っているのであと一種類くらい育てようかなぁ。

ミニトマト、枝豆、きゅうり、の三者で悩み中。

それではブログまとめます。



インド旅行記 (7)ゴア・ビーチ編 


< Vindaloo Sunset >

ビーチチェア使用料があるようで先払いで100ルピー払いビーチパラソルで日陰を作って僕は横になった。真夏に長時間日向に当たっていた車のシートみたいに激熱だ。僕はゴア産の地ビールKings Beerを一本頼んだ。例のごとくビールが冷えてるかソムリエの様にビールを手渡され、同じ様に 「いいね、最高だ」 と応える。暑い日に飲む冷えたビールはなんと美味しいのだろう。喉が痺れるほど冷たく、味はボディがしっかりとしていて美味しい。昨晩飲んだKing FisherはのどごしGoodでKingsは味の深みGood。日本でいうアサヒとキリンみたいな感じだ。ビールの味がなににせよ、目の前のビーチは傾きかけた太陽光でコントラストが絵の様にくっきりしていて、人影も少なく、波の音と店内に流れているBGMがいいバランスで聴こえていた。これは完璧じゃないか?僕は第一の目的を達成した。ちなみにビーチボーイズは流していない。二時間歩いている途中で聞き飽きてしまった。

ひどく痩せた一人の中年男が近寄ってきてマッサージはどうかと聞いてきた。僕は全くもってマッサージをしてもらいたくなかったので断った。もちろん一度断ったくらいではインド人は引き下がるわけがない。ちょっと目を離すと僕の足に手を触れてマッサージを始めようとする。
「ミスター、きっと旅で足疲れている。マッサージ必要」 彼はニコニコしながら言う。
「やめてくれないか。僕はそもそもマッサージされるのが苦手なんだ」 僕は心底迷惑そうな顔をして強めに言った。
彼は諦めて引き上げて行った。と思うのもつかの間今度は別の男が来て同じようなことを繰り返す。同じように断り続けて、気づいたら僕の隣のビーチチェアに3人くらい自称マッサージ師が座りこんで談話を始めていた。やれやれ、暇インド人が集まってしまった。
「その太鼓はいくらで買ったんだ?え? 580ルピー?まぁまぁだね。おれなら300ルピーで売ってあげたのに」
「そのサンダルはあそこで買ったやつだろ、いくらした?」
とか値段のことばかりを聞いて、僕がどれだけぼったくられたか教えたいらしかった。そしてなんだかんだ僕もその頃にはビールを3本くらい飲んでいたからいくらか陽気になって暇インド人談話に含まれてしまった。
一人目の男が息子を連れてきた。まだ5歳くらいの男の子は非常にシャイで僕が名前を聞いてもはにかみ笑いだけで答えてくれなかった。その後も、太鼓の叩き方を教えてよ、と男の子に太鼓を渡したりしたが結局他のおっさんたちがあーじゃないこーじゃない言いながら太鼓をかわりばんこしながら叩くことになった。なんだよあんたら全然叩けないじゃないか。これには笑ってしまった。
その後1時間くらいして彼らは気が済んだのか散り散りに自分の仕事に戻って行った。

気づくと辺りは日が落ち始めていた。僕はビーチチェアで寝そべりながらゆっくりとそして幾分かセンチメンタルにあたりを見回した。景色は徐々に白熱球で照らしたような橙色と濃い灰色に覆われて行った。アラビア海にゆっくりと太陽が沈んでいく様は凄まじかった。いままでに見たことのない、毒々しく赤い太陽。僕の知っている白い球体でオレンジの後光をまとう太陽はそこに存在しなかった。まるでザクロがコールタールの海に落ちていくような異様な景色だった。僕はしばらくその非現実的な光景に目を奪われていた。眼球を通り越して脳裏に景色が焼付くまで、オジー・オズボーンみたいに目を大きく開けて。僕は自分の体の、血や肉の重さを忘れてしまい、もしくは太陽に全部吸い込まれてしまったような感じがして、まばたきをして我に返った。大丈夫。僕は今ビーチチェアの上だ。まぶたの裏の灰色のスクリーンにはブラックライトのような緑の球体がいつまでも浮かんでいる。
アラビア海の水面に浸かる前に太陽は靄の中に消えてしまった。おそらく空気中のスモッグとかで見えなくなってしまうのだろう。特撮的なサンセットを見たことだし、ビーチハウスを出た。薄暗いビーチには昼間よりも人がいて、むしろ日没後がゴアのビーチライフの本番。という感じが人々から伝わってきた。僕はそんな人たちの隙間を縫って歩き、キンクスの 『ウォータルー・サンセット』 をハミングしながらビーチを後にした。ここはインドのゴアだから、ヴィンダルー・サンセットって感じだろうか。


<ワイルドサンダルで行け>

ビーチから煉瓦造りの見晴台に登る斜面で、右足に違和感を感じた。足にかかるはずの感覚が急になくなったので僕は斜面で転びそうになった。右足を見てみるとサンダルが壊れていた。土踏まずあたりに結われているはずのストラップが見事に外れている。
やれやれ、僕はメイドインインディアを過信していたようだ。買ったその日に壊れるなんて、思いもしない。しかたないので右足を引きずりながら斜面を登りきって、石が少ない道に出た。そこらへんに落ちているポテトチップスの小さな空袋を拾って、ストラップと一緒にサンダルに突っ込んで固定しようとしてみたがうまくはまらない。すぐにストラップが外れてしまう。ゴミ袋とサンダルをこねくりまわして身をかがめている僕を、石垣に腰を下ろした (海を眺めていたのだろう) 老婆が瞬きもせず驚くほど無表情な顔で凝視していた。まるでヨーロッパの街によくいる銅像になりきったパントマイマーのように動きがない。ジョジョの奇妙な冒険に出てくるエンヤ婆のモノマネをさせたら右に出るものなしってくらい似ていた。僕だってこんなヌケサクなことをやりたくてやっているわけじゃないんだ。あのサンダル屋め、絶対明日交換してもらうからな。僕はやはり右足を引きずりながら歩き始めた。

日は完全に落ち、あたりは暗くなっていた。とりあえずは宿に戻ろう。車やバイクが通るたびに土埃が舞い上がる道路を、やはりジョン・メリックさながら右足を引きずりながら歩き続けた。僕は20歳かそこらの頃の自分をちょっと思い出して自嘲気味に笑った。その頃イギリスに住んでいて当時流行りだしたYouTubeでデヴィッド・ボウイのエレファントマンの舞台動画を見て以来、わりと熱心にボウイ風のエレファントマンの仕草や喋りかた真似をして大学の授業の合間やバンドリハーサル途中で遊んでいた (全く褒められるようなことでは無い) 。でも僕の練習が足らなかったのか、みんなエレファントマンを知らないのか、結局誰にも理解されることはなかった。

これでは歩きにくすぎて宿に着く頃には体が変形してそうだ。何か紐でもあればいいのだけれど、もちろんそんなものは落ちていなかった。それで僕は道端に生えている草の茎を力任せに引っこ抜き、蔦のようにして右足とサンダルを結んでみた。葉が飾りのようになって、これはワイルドだ。
どうやら僕はもし無人島に置き去りにされてもとがった岩肌で足を怪我することなく、そして足を怪我しなかったことによって血の匂いを嗅ぎつけたサメに襲われることもなくなるタイプの人間かもしれない。などと出口の無い想像をしながら葉をカサカサ揺らして歩いた。

しばらく歩いていると今度は左足のサンダルも同じようにストラップが外れて壊れた。いよいよ僕はメイドインインディアに腹を立てはじめた。その場でサンダルを地面に叩きつけ 「ガッダムィッ!◯ァック・ジ・インディアン・クオリティ!」 と映画の中のアメリカ兵みたいに文句を叫びたかった (もちろん我慢した) けど、暗闇の中で錯乱している哀れなアメリカ兵風日本人なんかには絶対なりたくはなかった。右足と同じように道端の草の茎で左足とサンダルを縛った。これで仲良くおそろいだ。そしてよりワイルドだ。でも植物の汁と葉でチクチクして痒いし、はっきりいって歩くと痛い。まだ宿までは遠い。ビーチを二時間近く歩いてきたのだから、帰るのもそれなりに時間がかかる。当たり前のように僕はiPhoneを取りだしてルー・リードの 『ウォーク・オン・ザ・ワイルドサイド』 を聴き始めた。 ルーが歌う。

「ヘイ、ベイブ。ヤバい方で行こうぜ」


<ドラ息子のボリウッド映画シーン>

時折バイクがすごいスピードで横を通り過ぎる時以外には全く灯りのない道をひたすら北に向かい、ようやく街の光が見える入り口までやってきた。僕はそろそろワイルドサンダルで歩くのも辛かったし、どこかに腰を降ろしたかった。ほったて小屋のような店で水を買い、ついでにいま僕はどこにいるのか聞いてみた。どうやらカンドリムタウンの南端までは来たようだ。ゲストハウスは街の北のほうにあるので大体あと40分くらい歩けば着くだろう。街の中を進むと大通りの左右にレストランが数軒見えてきた。どうやらカンドリムの街は南に行けば行くほど高級度が増すようで、エアコン完備で重たいドアのついたリゾートホテル風のレストランが同じところに4軒くらいあった。ちょっとメニューを流し目で見てみるとどこも結構お高い。その度にウェイストコートを着たドアマンがまるでカメムシを触ってしまった時のような顔で僕の足元を見ている。
いいんだ。歩くよ、おれはまだ歩くよ。

とても入りやすい店 (ドアが無く、駐車場に机と椅子を置いたような露店) を見つけて、僕は挨拶を忘れずに一言言って席に着いた。どれだけ疲れていてもメニューを選ぶ元気はあった。キングフィッシャービールが来てお疲れ様のビールの優しさと刺激にうっとりしながら、ほうれん草ベースのマッシュルームカレーを頼んだが、5分後に作れないと言われた。仕方ない。食材が無いのだ。どれなら作れるんだと聞くとほうれん草とマッシュルーム以外だと言う。どうだろう。また5分後に作れないと言われるのも面倒なので、オーソドックスなチキンマサラカレーとレモンライス (日本のインドレストランで普段目にするターメリックライスにレモン汁のフレーバーが加わったもの) にした。どうしてこうもインドで食べるカレーは美味いのか。別に高級な素材など使っていない。ただ唯一言えるのは、口の中でスターマイン花火が爆発したみたいにスパイスの香味が弾けるほど新鮮だってことだ。

食事が終わり一服しているとユニオンジャックのプリントが無秩序に貼り付けられたタンクトップを着た痩せた二枚目の若者が僕の目の前に腰を降ろして一方的に話を始めた。自分にガールフレンドが何人いるか、いま3万預けてくれれば明日には6万で返す、マリファナとLSD欲しいか、だとかインドではそこらへんのクソと同じ割合で転がっている話だ。彼はどうやらその店の支配人の息子なようで、他のテーブルに座った家来にマリファナを巻かせて吸っていた。僕がゴアの物価事情やどんな観光客がよく来るのだとかジェネラルな質問をしていた時、80年代のアメリカのウェストコーストの映画に出てくるようなネオンが張り巡らされたピンク色のでかいオープンカーがサブウーファーの音を地鳴りのように轟かせて店の前に停まった。8人くらいの若者が降りてきてドラ息子とハグして楽しそうに話を始めた。きっとインドの暴走族ってかんじなんだろうな。世界中どこでも似たような連中がいるもんだ。と僕は新しいタバコに火をつけながら思った。

「なあ、ジャパニ、今夜は日曜日だぜ?イカしたパーティーが北にあるアンジュナビーチであるから来いよ」
ドラ息子は陽気に言う。
「まいったね。今日が日曜日だと完璧に忘れてた。お祈りもしなかったし、それに僕は今日は歩き疲れちゃったんだ。悪いけど君たちだけでその "イカした" パーティーを楽しんできてくれよ」
カニの手みたいにクオーテーションマークを作って彼に言った。もちろん僕は日曜日にお祈りをしないタイプの人間だ。
ドラ息子はそれじゃあ仕方ないねという風に両手のひらを空に向け
「11時にこの店で集合だから、気が変わったら遊びに来いよ!パーティーは朝までやってっからよ!じゃあな!」 と言ってインディアン族車に飛び乗ってそれが合図で車は発進した。
これはなんだかボリウッド映画でも見てるんじゃ無いか?と思って可笑しくなった。やれやれ、本当に退屈しない国だ。

僕は勘定を済まして店を出た。ここ二日連続で美味しいご飯にありつけている。それはとても幸せなことだ。旅行中の限定された食事回数の中で一度でもハズレをひくと、晴れた日曜日の朝に悪いニュースを聞いた時のように、とても暗い気分になる。

夕飯を食べたその店は昼間にスパイスミックスを買ったスーパーマーケットから100メートルと離れていなかった。ようやく見覚えのある道までたどりついて僕はちょっとほっとした。もしカンドリムの道がもっと複雑だったら僕は深夜まで壊れたサンダルで彷徨い歩くはめになっていたと思う。
サンダル屋はまだ営業していた。よろしい。営業熱心なことは大変よろしい。

「やあ。僕だよ。昼にサンダルを買ったんだけど、見事に半日で壊れたよ」
サンダル屋は何も答えない。葉っぱだらけの僕が履いているサンダルを凝視したまま固まっている。
「オーケー、わかりやすく言うと今すぐ交換してほしいんだ。同じ色のサンダルにね」
馬鹿らしいけれど僕はまだこのサンダルが気に入っていた。もちろん耐久性ではなく、デザインと色だ。彼は小声で 「わかったよ」 と言って別の同色のサンダルを手渡してくれた。しかもワンサイズ上のだ。昼間買いに来た時にはダンボールひっくり返してもなかったのに、ちゃあんとあるじゃないか。
「サンダル履いて海入ったか?」
「もちろん、これはビーチサンダルなんだろ?もしかして水に濡れるとすぐに壊れるのかい?」
彼は無表情にそれ以上は喋ろうとしなかった。彼の沈黙が肯定を意味していた。ストラップを止めた糊が水に溶け出してしまうのだろう。
「ダンニャワード」
僕は新しいサンダルを履いて右手にワイルドサンダルをぶら下げてゲストハウスまで帰った。サイズがぴったりだから歩きやすい。やっぱりイングリッシュ・ブレックファストにブラックプディングが付いているか付いていないかは大きな違いだ。
僕はホットシャワーを思う存分浴び、インディアンウィスキーをちびちび飲みながらガイドブックのメモ欄にこれまでの出来事や食べたものを箇条書きして、寝た。


<カラングートビーチ>

日曜日の次は月曜日。月曜日。インドに来て2回目の朝を僕はベッドの上でぼんやりと曜日確認しながら迎えた。蚊除けのスプレーを塗って寝たので顔に一ヶ所刺されているのを除けば無事だった。例のように虫刺されクリームを塗り、歯磨きの後にウィスキーでうがいをして、バルコニーに出て一服した。今日はパン売りがアイス男に負けないくらいオンボロのリアカーを引いて、ヒンディー語で何かを叫びながら通りを歩いていた。おそらくパンパンパンパン叫んでいるのだろう。
冷蔵庫でキンキンに冷やしたスミノフブラックヴォッカをスキットルに入れて外に出かけた。相変わらずの海日和で、歩きながらひとくちヴォッカを飲んだ。冷たくトロリとした口当たりと、胃にじわじわとアルコールの暖かさが広がるコントラスト。
ピューターで作られたハンマーストーンシルヴァーのスキットル。このスキットルは父親が僕の20歳の誕生日にプレゼントしてくれた物で、いままで何度か旅行した時や野外音楽フェスティバルに行った時などにこのスキットルを使ったが、僕はまだ若く、ウィスキーやヴォッカなどのハードリカーをそこまで愛飲していなかった。今以上にこのスキットルをありがたく思ったことはない。僕にとってこの鈍銀の小さな水筒と旅をするのはまるで十年来の友人と何年かぶりに再会して遊んでいるような感じだ。こんな粋なプレゼントをくれた父親に深く感謝する。

僕はまたココナッツ売りの老婆がいる通りを歩いてカンドリムのビーチに出た。全くプランがないことに気づいて、しばらく右にも左にもいかずその場に座り込んで海を眺めた。脂の乗った鯖の背中模様のような色合いをしたアラビア海は相変わらず静かに波を立て中東から生暖かい風を運んでいる。
昨日はビーチを南に歩いた。今日は北に歩こう。もうそこに疑問は微塵もない。僕はまたひとくちヴォッカを飲んでジェームズ・イハのファーストアルバムを頭から聴きながら歩き始めた。ユー ガッタ ビー ストロング ナアアウ。

カンドリムビーチから北に向かえばゴアの数あるビーチの中でも最も有名なカラングートビーチがある。昨夜食堂で会ったドラ息子が "イカしたパーティー" に向かったアンジュナビーチは更に北に位置する。僕は頭の中でもやもやとおおまかな地図を作って今日歩くルートに赤線を引いたが、思い直して消した。歩けるところまで歩いてみよう。
気温が35度くらいの炎天下で照り返しのきつい砂浜を30分も歩いていると、すぐに疲れてしまって、ちょっとこれは気をつけないと日射病になってしまう。ちょうど暇そうなビーチハウスがあったので休憩がてらブランチをとる事にした。こんな時でも店内には入らずやはりビーチチェアを選んでしまう。人気のないビーチに4つくらいビーチチェアとパラソルがぽつんとおいてあるだけの小さな海の家。なかなか素敵だ。まだ15歳くらいの若い店員にチェア代はいくらか聞くと無料だという。その少年はまるで覚えたての言葉のようにたどたどしい英語で 「そのかわり何かオーダーしてね」 と無垢な笑顔で言った。僕はすぐにキングビールをオーダーしてチェアの上の砂を手で払ってから体を横にした。パラタというチャパティに似た生地の中にスパイスの効いたスマッシュドエッグが入った料理を食べた。ヘヴィーな味付けじゃないから朝飯としてはベストチョイスだった。ピッツァみたいに食べられるのでビーチチェアに最適だ。

珍しく誰にも話しかけられないで静かに海を眺めていられた。のもつかの間で、6歳くらいの男の子が近寄ってきてナマステーと言いながら、小さな人差し指で僕の額に赤い粉をつけた。とても自然な動きだった。
「200ルピー」 潮風で荒んだ木造小屋の壁のように枯れた声で少年は英語で言った。
ああ、そういうことか。この時僕は気付いた。彼はここでは立派な商売人だ。 "額に赤い装飾を付け与える" という行為を通してディールを既成事実にしていた。額をハンカチで拭いて文句を言ってもよかったのだけど僕はあの自然な動きと手腕に敬意を払って、持っている限りの小銭 (60ルピーくらい) を手渡した。その男の子は無言でコインを受け取り、足らない。と短く言って次は黄色の粉を親指に付けて僕の額にペイントしようとした。
「もうペイントは要らないよ、大丈夫だ」 僕は彼の手を避けながら言った。そのかわりミネラルウォーターを一本買ってあげた。それほど彼の声は悲惨だったからだ。
それからしばらく少年は僕の隣のビーチチェアに座っていたが、店員に野良犬のように追い払われて去って行った。

会計をすまして僕はまたビーチを歩き始めた。すると数キロメートル先に人だかりが見えてきた。あそこがカラングートビーチなのだろう。混み具合はなかなかのもので、オンシーズンの新潟石地海岸くらいだ。次第に人の群れの中に入って気づいたのは、ほとんどが地元のインド人の家族連れで、外人観光客が少なかったことだ。ジェットスキーをすごい速さで走らせて遊んでいたり、沖の方にはバナナボートに乗った人達が見事に海に落ちて飛沫をあげているのが見えた。地元の人間に一番愛されているビーチ、カラングートビーチ。人が多ければ多いほど客引きも多い。僕は何度も客引きにつかまるのも面倒なのでそそくさとビーチを出て街の方へと向かった。ビーチから街を眺めると、ちょっとした石造りの階段の上にあって、古いレンガで建てられた大きな建物には様々な店の宣伝用ペイントが目に付いた。さすがにカラングートビーチ商店街は忙しいようだ。ケバケバしい洋服店、雑貨屋、ビーチショップ、食堂、様々な店がメインストリートにあった。人々は忙しく動き回り、ある物は道の真ん中に座り込み簡易露店を開いて、警察に注意されていた。わりと世界中どこのビーチタウンでも見られる光景だ。僕は大通りから腐敗した魚の臭いが漂う細い路地まで歩き回った。出会った牛の数は15頭ほど。彼らは細い路地だろうとお構いなく寝そべって涼んでいた。




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