大正デモクラシーの影響を深く受けた津田は、自然主義の小説家と同じような人生観をもっていたように思われる。

それは凡人主義というべきものである。

人間というものはすべて、まあ、あまり大したこともない平凡な人間であり、そのような平凡な人生がもっともよいとする人生観である。

こういう人生観が歴史観となり、凡人主義が凡人史観になる時、歴史の中で語りつがれてきた偉大な事績というもに懐疑を投げざるをえないのである。

梅原猛著作集10p15-6