和の会能楽師インタビューVol3.宝生 流シテ方 藪克徳さん
能にかける思いから、舞台裏やプライベー トの話まで。 宝生流期待の若手能楽師5人の生の声を週 替わりでお届けします。
Vol3.宝生流シテ方 藪克徳さん
Q1.能楽師になったきっかけを教えてください
A1.父親が能楽師だったからというのがまずあります。 実はうちの父親は30歳まで小学校の教師だったんです。学生の頃から稽古をしていて、舞台に立ってもいたんですけ どね。教師と二足のわらじだったのを、30歳にして能楽師一足にしたいと母に言ったそうです。 そう父が決断したことで、僕は自然と子方(子供の演者)になりました。子方の頃は頑張ったらごほうびがもらえる とか、立ち回りがかっこいいなーとか、そんなことしか考えてなかったので、仕事をしている意識はなかったです。 子方は変声期と共に終わるんですが、僕はそれが中学1年生くらい。その頃になると学校の勉強や部活があって、舞 台に立つのは年一回程度になっていきました。 能楽師になろうという人は高校生くらいから芸大に入る準備を始めたりするんですけど、入った高校が進学校でつい ていくのに必死だったので勉強ばっかりしてました。 僕は男3兄弟の長男なんですが、父は長男がダメなら次男か三男に継がせればいいか、くらいの気持ちだったみたいで す(笑)。まだ自分の将来についてちゃんと考えてられてなかった。 結局能楽とは関係のない大学に入学したのですが、そこで能や演劇をとにかくたくさん観た時期があったんです。そ のときに能の面白さと素晴らしさをあらためて感じました。 それで大学2年が終わる頃「能楽師になりたい」と初めて言ったわけです。それからが大変でした。大学に入ったから には卒業しなさいと言われて、薬学部の卒業実験をやりながら芸大受験の準備をしていました。だから僕は他の能楽師 たちより5年遅れてのスタートだったんです。
Q2.休みはどう過ごしていますか?
A2.…休みがないんですよ(苦笑)。去年はとにかく一年中忙しくて何もできなかったんです。 もし休みが取れるなら、ダイビングに行きたいです。内弟子の頃は半年に1度くらいまとまった休みが取れたので、 沖縄に潜りに行ったりしていました。今年こそは絶対行きたいです! 映画を見たり、本を読んだりもしたいんですが、たまに半日休みがあったりしても、そういうときに洗濯とか掃除し たりしないと、人としての生活が保てなくなりますから。なかなか趣味にまわす時間がなくて(笑)。 去年は忙しい忙しいばかり言っていた気がします。そしたら友人に言われたんです。「忙しいは心を亡くすって書く んだよ」って。まさに!と思いました。なので今年は「忙しい」という言葉は使わない!きちんと休みを取ると決めて るんです。
Q3.今後の抱負を聞かせてください。
A3.稽古をします!としか言えないんですよね。いただいた役を良くしたいという気持ちはあるんですが、どの役を演 じたいというのも本当にないですし。向いている役というのはあるかもしれませんが、僕自身はどの役も好きでもな く、嫌いでもない。すべては役をいただいてからですね。 あえて抱負を言うなら、能の素敵なところをみなさんに伝えたいということに尽きます。だからそのために、とにか く稽古をします。 プライベートでの抱負は、毎年言ってますけど結婚して家庭を持ちたい、かな(笑)?でも、どう考えても一緒にい られる時間が少なすぎるので無理かも。それもすべて今年一年かけて心を取り戻してからですね(笑)。頑張ります。
プロフィール 1974年金沢市生まれ。父は宝生流能楽師 藪俊彦氏。 東京大学薬学部卒業後、東京藝術大学音楽学部邦楽科能楽宝生流 に入学。宝生流宗家のもと内弟子修行の後、2010年9月に独立。
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Vol3.宝生流シテ方 藪克徳さん
Q1.能楽師になったきっかけを教えてください
A1.父親が能楽師だったからというのがまずあります。 実はうちの父親は30歳まで小学校の教師だったんです。学生の頃から稽古をしていて、舞台に立ってもいたんですけ どね。教師と二足のわらじだったのを、30歳にして能楽師一足にしたいと母に言ったそうです。 そう父が決断したことで、僕は自然と子方(子供の演者)になりました。子方の頃は頑張ったらごほうびがもらえる とか、立ち回りがかっこいいなーとか、そんなことしか考えてなかったので、仕事をしている意識はなかったです。 子方は変声期と共に終わるんですが、僕はそれが中学1年生くらい。その頃になると学校の勉強や部活があって、舞 台に立つのは年一回程度になっていきました。 能楽師になろうという人は高校生くらいから芸大に入る準備を始めたりするんですけど、入った高校が進学校でつい ていくのに必死だったので勉強ばっかりしてました。 僕は男3兄弟の長男なんですが、父は長男がダメなら次男か三男に継がせればいいか、くらいの気持ちだったみたいで す(笑)。まだ自分の将来についてちゃんと考えてられてなかった。 結局能楽とは関係のない大学に入学したのですが、そこで能や演劇をとにかくたくさん観た時期があったんです。そ のときに能の面白さと素晴らしさをあらためて感じました。 それで大学2年が終わる頃「能楽師になりたい」と初めて言ったわけです。それからが大変でした。大学に入ったから には卒業しなさいと言われて、薬学部の卒業実験をやりながら芸大受験の準備をしていました。だから僕は他の能楽師 たちより5年遅れてのスタートだったんです。
Q2.休みはどう過ごしていますか?
A2.…休みがないんですよ(苦笑)。去年はとにかく一年中忙しくて何もできなかったんです。 もし休みが取れるなら、ダイビングに行きたいです。内弟子の頃は半年に1度くらいまとまった休みが取れたので、 沖縄に潜りに行ったりしていました。今年こそは絶対行きたいです! 映画を見たり、本を読んだりもしたいんですが、たまに半日休みがあったりしても、そういうときに洗濯とか掃除し たりしないと、人としての生活が保てなくなりますから。なかなか趣味にまわす時間がなくて(笑)。 去年は忙しい忙しいばかり言っていた気がします。そしたら友人に言われたんです。「忙しいは心を亡くすって書く んだよ」って。まさに!と思いました。なので今年は「忙しい」という言葉は使わない!きちんと休みを取ると決めて るんです。
Q3.今後の抱負を聞かせてください。
A3.稽古をします!としか言えないんですよね。いただいた役を良くしたいという気持ちはあるんですが、どの役を演 じたいというのも本当にないですし。向いている役というのはあるかもしれませんが、僕自身はどの役も好きでもな く、嫌いでもない。すべては役をいただいてからですね。 あえて抱負を言うなら、能の素敵なところをみなさんに伝えたいということに尽きます。だからそのために、とにか く稽古をします。 プライベートでの抱負は、毎年言ってますけど結婚して家庭を持ちたい、かな(笑)?でも、どう考えても一緒にい られる時間が少なすぎるので無理かも。それもすべて今年一年かけて心を取り戻してからですね(笑)。頑張ります。
プロフィール 1974年金沢市生まれ。父は宝生流能楽師 藪俊彦氏。 東京大学薬学部卒業後、東京藝術大学音楽学部邦楽科能楽宝生流 に入学。宝生流宗家のもと内弟子修行の後、2010年9月に独立。
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