ペタしてね

いよいよ明日交付される秘密保護法、まったがかかり廃案になるなんて

奇跡は起こりません。


軍事部門に詳しいこの方、実際に今まで行われてきたことが興味深いの

資料として一応記事に。

長いですので興味のある方だけどうぞ。




軍事評論家田岡さんの記事から☆



多くの国民がこの法律に対して、不安、疑問、怒りを抱くのは当然だが、

実はこれまで存在した秘密保護法制でも、何でも秘密にできると

いうのが実態だ。


加えて特定秘密を扱う人たちに対する「適性評価」によって、

人権侵害や公安警察権力の肥大化が懸念される。

防衛庁記者クラブの電話が盗聴電話

安倍総理がおそらく支持率の低下を覚悟の上で強行採決を連発し、

早期成立を図ったのは、時間が経てば経つほど各方面に反対論が拡がり、

さらに傷を深めると判断したものと考えられる。


この法律を読めば不安、疑問、怒りを抱く人が多いのは当然だが、

実はこれまで存在した秘密保護法制にも同様な問題がある。


それを含めて秘密指定の妥当性を審査したり、開示する制

度をどうするかなどこの不人気な法律をめぐる紛議は来年も続きそうだ。

 私は1968年に朝日新聞の防衛庁担当記者となり、すでに45年も軍事記者

、評論家をつとめてきたから、秘密漏洩事件の危ない橋を渡り続けてきた。


1985年に「スパイ防止法案」が議員立法で提出された当時、

それを提唱した自民党議員の1人は「田岡を捕まえる法律だ」と言っている

とも聞いた。


防衛庁記者クラブの電話が盗聴されていることは常識だったし、

他紙が知らない重要な記事「特ダネ」を出せば、そのニュースソースを

探ろうと警務隊(憲兵)や調査隊(防諜部隊)が動いていることを

、別のソースから教えられることもよくあった。



 盗聴に最初に気付いたのは記者クラブから国際法学者だった

父に電話して国際法上の疑問を尋ねた際だった。


数日後に防衛庁の高官と話していると彼が

「父上もそう仰言っている」と言う。私が「その見解はどこでお知りに

なったか」と聞くと相手は一瞬うろたえ「どこかの新聞で読みました

」と言ったが、そんな記事は見たことがない。


盗聴記録を読んでいたため、新聞記事と混同し、つい口を滑らせたことが

丸見えだった。

 とっくに時効だが滑稽な話もあって、ある朝制服の幹部が私の自宅

に電話して来て、「いま公衆電話からかけています

(庁内の電話は聴かれているから、の意味)。


今朝の貴方の記事に大臣(防衛庁長官)が、おれも聞いてないことが

新聞に出ている、と怒っている。すでに終わったことで出しても構わない

話なんですがね。


洩らしたのは誰か調べろ、と言うので、さっき調査を命じました。


ついてはしばらく私の部屋には来ないでいただきたい」との話だった。


1ヵ月以上経って会合で会ったから「調査は終わりましたか」とささやくと、

相手は「田岡記者は米軍士官に友人が多く、米軍から出た模様、

との報告でした。うちの調査もダメですな」と苦笑した。


「それは最も無難な結論ですな。本当の事が分かっても、それを貴方

に報告するわけには行かないでしょう」と2人で密かに笑い合った。

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友好国の士官、大使館員も自衛隊ウォッチャーの一面が

あるから、交際を求めて来ることはよくあり、夕食の席で

「次の幕僚長は誰々に決まった」と私が言うと、相手は

目の色を変えて「スペルを教えてくれ、経歴は」とメモを取る。


社に戻ると電話が来て「いまから行くから、会ってくれ」と言う。


車の中で彼は「これは秘密電で打つ。内容を確認してほしい」と

ピンクの紙を出した。


「最も信頼すべき情報筋によれば……」との電文で秘密電報は

ピンクの紙にタイプすることをそのとき知った。


実はその人事は秘密でもなく、防衛庁で内定したが閣議で

了承後報道する事、として配布されており、部内ではそれを見て

お祝いの電話をしたり「よろしく」とあいさつを交わすのが普通だった。


それでも気になるから、翌日広報課長に「あの内容は人に話しても構

わないんでしょう」と確認すると「閣議終了までは新聞に書いてもらって

は困るだけで、話されるのは構いません」と言う。


「これはしめた」と時折人事情報、それも全部出せば有難味がない

から主要な分だけ、を教えると相手は大喜び。


公表の1週間も前に常に正確な人事情報を本国に送るから

評判になっている、との話だった。


だからこちらが「次の貴国との協議のテーマは何だろう」と聞くと、

調べ回って「決まった議題はこれこれ、これは議題にするか否か未定」

などと正式協議前の水面下の駆け引きの状況も伝えてくれたし、

「ロシア人がさっき亡命を求めて来た。


名はこれこれ……」と注進してくる程で、情報は「ギブ・アンド・テイク」

だとは言え、海老で鯛を釣る様な形だった。


のち彼は勲章を授けられ、その伝達の席に私も招かれたが

「日本における傑出した情報活動に対し」と賞詞が読み上げら

れときには笑いを抑えるのに苦労した。


情報源隠しに一苦労

防衛庁(当時)と自衛隊は当然秘密の多い社会だが

、一部で「秘」に指定してある事項が他では秘密ではなかったり、

外国の軍事雑誌に出ていたりすることはよくある


くだらない秘密もあって、演習計画は秘だから、その訂正

も秘になる。計画の中に幕僚長が視察に行き昼食を取る予定

も載っていて「御昼食は12:00からとあるのを12:30に変更」と

の電文を秘で打ったため、受けた部隊は「秘密で食事をされるのか」

と思い「別の部屋を用意すべきか」と問い合わせた、との話もあった。


スパイ防止法案が国会に掛かっていたころ、幕僚監部で

「こんな笑話も聞いた」と私が言うと相手は「もう田岡さんに伝わったんですか」と驚いた。


「昔の話ですよ」と言うと「実は一昨日同じ事がありました。

ひとつも変わっていませんな」と大笑いしたこともある。


 決定までは形式上は秘になっている事項も、防衛庁担当記者

に説明して理解、支援してほしいから、防衛庁・自衛隊幹部が

財務省主計局や族議員などへの説明資料として作り「秘」の

印を捺したようなものを私にも渡すことはよくあった。


ただそのまま新聞に出すと情報源探しが始まるから、

記事では箇条書きの順番を入れ替えたり、表現を変えたりした。


文章を変えるのは楽だが、新組織の構成図を変えるのには

ひと苦労したものだ。



新聞に出て「文書が洩れたか」と騒ぎになると、役人も士官たち

も新聞と本物の文書を見比べ「ここが違う。あそこも違う」

と言って、文書の漏洩はなかったことにしたがるから、

それを言いやすくする気配りが大事で、もちろん文書は焼却する


。自分が罰せられる可能性は低くても、情報源を守らないと

取材はできない。


いわゆる沖縄返還時の「密約」事件(VOA放送局の移転経費

も日本が負担する米軍施設の移転経費の枠内で賄う、

という瑣末な内容で1本の記事にはなりえないようなものだった)

のように外務審議官の女性秘書から入手した文書を後任の

外務省担当記者に渡し、それが野党に伝わるというのは論外で

、情報源を守る気がなかったのか、と思わざるをえない。


「日本には秘密保護法がない」は嘘

 今回成立した特定秘密保護法は、その法案だけを読めば

とんでもない法律のように思えるだろうし、

「公務員が恣意的に秘密を指定する」「何が秘密かも秘密」

「永久に開示しないのはよくない」などの反対論はもっともだが、

日本には秘密の漏洩、入手を処罰する法律がすでにあり、

いま言われている問題点は従来からあったから、長年それと向き

合ってきた者にとっては屋上に屋を重ねるような法律は不必要と

うと同時に、それを廃案にしたところで、従来の法律が残るのだから、

あまり変わらないではないか、と考えざるをえなかった。


 以前、10月31日の配信の本欄 でも述べたが、秘密漏洩を罰する

法律としては――

①「国家公務員法」「地方公務員法」(1年以下の懲役)、これには

何を秘密に指定するか制限がなく、指定権者もその手続きも決めていない。

出先機関の課長程度が「秘」の判を捺すだけで秘密になる。教唆も

処罰されうる。

②「自衛隊法」(元は1年以下の懲役だったが、2001年の改正で

「防衛秘密」を漏らせば5年以下、共謀、教唆、煽動は3年以下となった)、

防衛秘密となる事項は別表で定めているが

「防衛の用に供する物の種類又は数量」など、国民が

政策を論じるのに知るべきことも含まれている。


自衛隊法のこの部分は特定秘密保護法に吸収される。

③「特別秘密保護法」(漏洩や不当な方法による探知、収集は

10年以下の懲役。共謀、教唆、煽動は5年以下)、

米国から導入した装備、技術、取扱いなどに関するもの

④「刑事特別法」(漏洩、不当な方法による探知、収集は

10年以下の懲役、陰謀、教唆、煽動は5年以下)、

在日米軍に関し、公表されていないことのほぼすべてが機密


 ――がある。

「日本には秘密保護法がない。スパイ天国だから、

この法律が必要」との説は嘘で「汚職防止法」が無くても刑法

に賄賂罪の規定があり、汚職が野放しではないのと同様だ。


一方、この法律に対して、例えば「沖縄の米軍基地についての取材

がこの法律でできなくなる」という類の論も変だ。


現行の刑事特別法は1952年に対日平和条約と第1次安保条約

の発効とほぼ同時に作られたから占領軍臭が濃く、

米軍に関してはほぼすべてが機密で「不当な方法」で探知した

、とされれば10年以下の懲役になりうる


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特定秘密保護法が発効しても、これらの法律は

(自衛隊法の一部は別として)残る。


「国家公務員法」のように単に「職員は秘密を漏してはならない」

とだけ定め、何でも秘密にできる仕組みは変わらない。


安倍総理は9日の記者会見で「従来は秘密指定のルールがなかった。

この法律で責任もルールも明確になる」旨の説明をしたが、

それは特定秘密に関する部分だけの話で、国家公務員法など

による他の秘密には今後もルールが無い状態が続くのだ。


 今回の法律で取材行為は「法令違反または著しく不当な

方法によると認められない限りは正当な業務による行為とする」

との修正が行われたのは、2001年の自衛隊法改正で秘密漏洩

の共謀、教唆、煽動を罰することを明記していたのに比べれば

進歩と言えよう。


取材に教唆は付き物で、こちらが求めないのに情報を

向こうから出すことは稀だ。


現行法では秘密漏洩の教唆は全て罰せるから、判例に照らして

裁判では結局無罪になるとしても、逮捕されるおそれはあった。


今回の法律だと令状を取るにも「教唆があった」というだけでは

不十分で「著しく不当な方法」、すなわち従来の慣行でも許容されが

たい取材方法だったとする根拠を示す必要があるから、

かなり報道規制に対する歯止めになるだろう。


ドクロ公安警察が公務員に対する絶大な権力を握る

 現行法と大きく異なるのは、特定秘密を取り扱う公務員、

それを委託、発注された企業職員の「適性評価」をする点で、

従来は防衛省・自衛隊と企業で米国から導入した装備に

関する秘密を扱う者だけに身上、素行などを調べる「適性評価」

が行われた。


米国側が「これを売るについては、米国と同様の秘密保全をしてほしい」

と言うのは当然だからアメリカの制度を取り入れたのだ。


だが今回の法律では特定秘密を扱う全員にこれを行うのだから、

公務員全員が自衛隊員になるようなかっこうだ。



外務省、防衛省、警察庁だけでなく、防衛予算と各種の計画を

扱う財務省、装備の生産を扱う経済産業省、技術を扱う文部科学省、

防疫を扱う厚生労働省、空港・港湾や輸送を扱う国土交通省など、

ほとんどすべての省庁や地方の警察官、企業の職員まで、

どんどん網を拡げなければ理屈が合わなくなる。


すでに日本国籍になっている配偶者の元の国籍も評価対象

にするから、配偶者の出身国によって秘密に触れる機会の

多い要職につけないとなると「人種差別撤廃条約」に触れるとし

て人権問題が生じる可能性もある


自衛隊は警務隊、調査隊があるから自分で調べているが、

他の省庁は警察に依頼することになると公安警察は公務員

に対する絶大な権力を握りうる。


自衛隊では「なお調査中」との回答があって、重要な配置

に付けられないこともあるという。

「不適格」とすれば証拠を示さねばならないが、「調査中」だと

反論もできないまま昇進が止まることになる。


法案は通ったものの適性評価の実施や、秘密指定の検証と

監察を行う機関などを巡って紛議は来年も続くだろう。


不人気な法律だけに世間の目は厳しく、安倍政権は自ら厄介

な重荷を負うことになったようだ。


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