神宮寺三郎を振り返る(3)

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今日も続きです。

 

第8作

『Innocent Black』

プレイステーション2

 

 

 

データイーストの倒産を受け、版権がワークジャムに移行。そのワークジャム版『神宮寺』第1作目(累計8作目)となる作品『Innocent Black』(以下『IB』)。

シナリオにはアドベンチャーゲーム『クロス探偵物語』で実績のある神長豊氏を迎えることとなりました。

 

 

 

 

発売前は圧倒的に期待の声が強かったと記憶しています。

「雰囲気は良いが薄味な『神宮寺』に『クロス探偵物語』のストーリーテリングの面白さが加われば~」

というような感じだったと思います。

また、『神宮寺』ファンの誰もが思っていたことの1つに…

 

『神宮寺三郎』シリーズの世界観や雰囲気を理解することって何も難しくはない

 

という意識があったことと思います。事実私もそうでした…。

 

蓋を開けたら…

 

大きな物議を呼ぶシリーズ最大(?)の問題作でした。

 

シリーズも長くなると「今までのシリーズとは傾向の異なることをやって新味を出そう」というコンセプトが出てくるのは事実ですし、それは私も否定しません(次作の『KIND OF BLUE』の組織:蒼ざめた馬なんかは「そんな名前を付けた秘密結社みたいなのはシリーズの色に反する!」なんて批判も出ますが、新味として受け入れられます)

しかし、『IB』は新要素を新味として受け入れられない要素が多数あったのです。

 

 

 

問題点1:パワーバランスがおかしい

 

 

本作で登場する殺し屋李宗一(リ・ソーイー)、彼は浮きすぎるほど強いです。

 

 

暗殺者なので基本背後から忍び寄って一撃で殺害、という形態なのですが…。正面から挑んでも何も問題のない強さです。その彼がバッタバッタと死体の山を築きます。物語上名前のある人が死んだり、死んだ人にも過去や人生がそれなりに垣間見えたりすることは過去作にはあるのですが、本作では死体A、死体Bとでも言うべき死体役エキストラみたいな死に方をします

既存のシリーズの強者と言えば香港の密輸捜査官リョウ・ケイコクがいましたが、彼とて不意打ちで7~8人程度倒せるくらいですし、銃を持った相手には負傷して病院送りになります。

しかし、李はマシンガン持った人相手に戦い倒してしまうのです(相打ちではありましたが…)

いくらハードボイルド調の『神宮寺』とは言え、ここまでバイオレンスに傾倒しては違和感が半端ないのは事実です。

 

 

 

問題点2:男と女

 

 

上述の神長氏は「私は神宮寺と洋子が一組の男女であるという部分に注目せざるを得ない」と発言しました。この付かず離れずの二人に何かが起こることは想像できました。一歩進む形になるのかもしれない、と…。

そのためか、神宮寺の洋子の呼び方(心の中)が「洋子君」から「洋子」になりました。

呼び捨ては何処か落ち着かない違和感もありましたが、まあ、良しとしましょう…、と様子を窺います。

 

 

本作でやったこと…

・OPで二人のキスシーンと思しき謎の場面が流れる。

・上述の李に恐怖した神宮寺と洋子の間でギクシャクし始める。

・自分と一緒にいては危険だと判断した神宮寺が洋子君を守るため自分から離れさせようとする。

・洋子君を人質に取られたり暴行されたりして遂に洋子君を解雇する。

 

 

「何、この展開?」と我が目を疑いました。

 

過去作シリーズでも神宮寺はもちろんのこと、洋子が危険な目に遭うこともありました。

 

まあ、それでもこれは中途の展開だし、最後元通りになれば…などとも思って進みました。

そうしたら、最大の問題に出くわしたのです…。

 

 

 

問題3:「終わり良ければ総て良し」にはならなかった

 

 

神宮寺は洋子を解雇したまま物語は終了します

 

多くのプレイヤーが

「あれ?バッドエンド突入?どこかで選択肢を間違えたかな?」

と思ったことです。

上記のキスシーン(?)も説明がありませんでした。

散々とっちらかした後、何もフォローせず幕引きした感じが半端ないのです。

ボリュームもさほど無く、最後はムービーや文章をひたすら読み続ける(コマンド選択する箇所がない)ため、尻切れトンボ感が極めて強いことも拍車を掛けました。

 

シリーズものには自己破壊がつきものですが、その破壊とペアで再構築が必要です。その再構築がまるでなされていないままの終了…。

 

明らかに次回作があるような終わり方でしたが、ゲームの場合、一週間後には放送のあるテレビドラマとは違って次回作が発売されるかは不明ですから余計に心配です。

映画だと公開前から「前編・後編」とアナウンスすることも多いですが、本作はそれもありませんでした。

 

この時のファンの大バッシングは想像に難くないでしょう。

 

しかも、神長氏はインタビュー等で「自分はどんな作品のシナリオだって書ける」「旧作からのスタッフも自分のシナリオを快く受け入れてくれた」などと発言していたことが余計に火に油を注ぐ形となりました。

 

抑えることができない不満は、やがてあらゆる細かな部分へと繋がります。

「サブタイトルが『Innocent Black』だなんて横文字なのがいかにもかっこいいだろ?といい気になったガキみたいでムカつく!」

なんてものもありました。そんなこと気にする方がガキだと思うのですが…。

 

 

結果として神長氏は本シリーズから外れ、果ては業界からも姿を消しました…。

当時、『クロス探偵物語』の続編も鋭意製作中だったはずなのですが、それも立ち消えになりました…。

 

この顛末は、次の作品『KIND OF BLUE』で明らかになります。

その結果『IB』『KB』は2つで1つなどと称されたりします。

 

 

着地点をもう少しマイルドにすればよかったのかもしれませんが…。

結果、シリーズファンの思考も保守的志向が強まった気がします。

 

あと、思ったのは「強さと信念を持つ男(神宮寺)が、その強さの軸を打ち砕かれる」という物語はよくあると思いますが、神宮寺の自信ってそんなに戦闘力に依存してたっけ?という思いはありました。

まるで自分より強い奴が表れてショックを受けたかのような描写なのですが、このあたりが少年マンガ的にも見受けられました。その恐怖に打ち勝つために李に戦いを挑む場面は特に…。

 

 

番外編:いいところは…

 

このままバッシングだけで終わってもつまらないのでいいところを…。

 

 

1:序盤の細やかな展開

 

序盤は色々と細やかな工夫が見られます。

間違った選択肢をすると通常「…そうではなかったな…」というような定型文な反応しかしないのですが、本作はきちんと声に出します。そのことによる愉快な会話が楽しめます。

また、アポを取る電話などの会話もとても巧みで今までにはない面白さがありました。

 

 

2:羽目を外さない程度のギャグ

 

神宮寺がカエルのスリッパを履いたりするなどのギャグがあってクスッと笑えます。

バースデープレゼントとして熊さんから肩叩き券をもらうやり取りも面白かったです。

 

 

3:伝統的な音楽の良さは変わらず

 

シリーズのBGMは素晴らしいものが多いのですが本作も相変わらず素晴らしいです。

 

 

長くなりすぎたので、今回はこの辺で。

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