※この話のお題は…更新されるのを毎回楽しみにしているブログ ~ 水琴鈴の音色 ~ のハルさんからいただいたものです ハルさんありがとうございます こんな風になりました




「もうー
またその話し、500回は聞いたもの
えっ 何って…あなたのお説教よ」

ウダルチ テジャンを前に、医仙様はぼさぼさの赤い髪に手ぐしを入れ、何度も梳いておられますが…
なかなかうまくはまとまらず…

「そうやってさ、柱にもたれて腕組んで、珍しい生き物でも見るような目つきでわたしを見るの、そろそろ止めてもらえません?」

医仙様…テジャンは珍しい生き物を見つめているのではありません 気になって仕方のない女人を見つめていらっしゃるのです
あなた様は男心というものに大変疎いお方でいらっしゃる

「サイコー、いいこと?
ここではあったりまえのことだっていわれても、わたしには理解できないって、そう言ってるの」

「……」

おっと わたしくとしたことが…テジャンの話しを聞き漏らしてしまった…

「なんで説教されたのか、その内容を覚えてないから繰り返す、ですって…?おっ覚えてるわよ…そのくらい」

医仙様、ナイスフォローです そしてこの天からいらしたという美しい女人は、自分の形勢が悪いと見て取れば、目をくるりと回して動揺を隠そうとなさいました

「たかが腕まくりで80回は固いわね あっちでは、ようしっ
やるぞっ ていう時にこうするんだから」

「着物の裾をちょっとだけたくし上げただけで、えーと60回くらいかしら 足元が…ぴらぴらして動きづらいの」

「大口開けて笑ったらはしたないって毎日言われてるから100回? まっこれはチェ尚宮からの分も足してかな…」

「一人で市井に出かけて怒られたのは…確実に30回はあった
ムガクシを撒いたのは謝ります ウダルチを撒いたのもごめんなさい…だからあの人達は叱らないで、ね」

「後は…ウダルチの兵舎で酔っ払って10回くらいかしら?
ここは娯楽ってものがないんだからこれくらい許してよ」

「それから…
あっ あった! 今よ 今!
あなたによく言われるお小言の一つ…
髪がちゃんとしてないって それよ
わたし…何回くらい叱られちゃったかしら…」

この方は、本当に天からおいでになったのでしょうか…
医仙様、わたしが知る限り、この説教が一番多いのです
テジャンは毎朝必ず医仙様のところを訪れ、チェ尚宮から叱られないようにと、髪型などもろもろをチェックなさっているのですから…その度にあなた様は「ふんっ」とか「え“~」とかおっしゃいますが、その言葉とは裏腹にいそいそと衣を直し、御髪を梳いていらっしゃる

「なっ なによ 文句でもある?
ちょっと、サイコ今度はなに?
あなたに言われて髪を解かしているだけよ…」

「そのように乱暴にされたら、きれいな髪が傷みます」

何とお優しい眼差し…そして物言い…

「きれいな髪
傷みますって…わたしの? 」

「櫛を…」

「櫛?
あなたが買ってきてくれたきれいな櫛ね これ、すっごく気に入ってるの」

「後ろを向いてください」

「あなたが梳いてくれるの?
…なんか調子狂うな…」

医仙様はそうおっしゃると、それでもたいそう素直に後ろを向かれ、テジャンに御髪を預けられました 目をつむり、口元には微笑みが浮かんでいらっしゃいます

(…なんだか気持ちいい…)
「ねえ、サイコー あなたはどんな髪型が好き?
わたしはね、こうやって自然にしているのが好きよ」

「俺も…好きです」

あ~ テジャン…後ろに立てば医仙様からは見えない…そう思っていらっしゃいますね…
ダダ漏れです 医仙様にあなた様は…べた惚れってやつですな…
けれど、お二人の、そのお姿はたいそうお似合いでございますよ

☆☆☆

「イムジャ、思い出し笑いですか?」

「フフッ ちょっと…ね 初めてあなたにこうして髪を梳いてもらったの、いつだったか覚えてる?」

「…」

「…あなた忘れちゃったんだ ふう~ん」

「いや、そうではない
あの時は、貴女の解かし方が見ておれなくて…つい」

「ねえ、不思議に思ったことがあるんですけど…
聞いてもいい? 」

「俺が答えられることなら」

「あなた、髪型にうるさいわよね」

「…」

「こだわりがあるっていうか…
見ろ! 髪がぼさぼさだ … とか、その頭をどうにか … とか、
わたしよく言われてたもの なにか特別な思い入れでもあるのかなって…」

「…」

「…ゴメン 言えない思い出、なのね…」

「そうじゃないっ
イムジャ…貴女に初めて会った時、俺の目に飛び込んできたのは貴女の瞳とその髪の色だった
燃えるような赤い髪が、貴女の目鼻立ちにとても美しく映えて…目が離せなかった…あの時の貴女の髪型が、俺は一番好きです」

「…ねえ、今の目つき、イヤラシかったんですけど…」

「…俺は、貴女の質問に答えただけです…」

なあ、イムジャ…俺はなぜこんなにも貴女に心引かれるのか…たわいないこうした日々の会話、その中で貴女が見せるふとした表情やしぐさ、その一つ一つが、今まで得たことのない平穏な、それでいて心浮き立つ時を与えてくれるからなのか…
こうして髪を梳く度に、俺は貴女に礼を言っているのですよ

チェ・ヨン…あなたは知らないでしょう?
わたしを叱ってる時、あなたのその黒い瞳に映っているのはわたしだけだった ヘンでしょう? あれもダメ、これもダメ…そう言われるのが、わたし、うれしかったわ
そうねえ…天界の言葉で言えば…愛の束縛ってやつよ


テホグン、ウンス殿、お二人がこうして縁を結ばれたのも、わたくしの働きが多少はお役に立ったからではないかと…
…まあ、それに関しましては改めて別の機会にじっくりお話しさせていただきますが…

はい? お前は一体何者か、そうおっしゃいましたか?
名前はあるのかと?

ございます…
恐れ多いのですが…わたくし

皆からは「鬼剣」と、そう呼ばれておりまする



終わり



最後が何ともアレなお話で恐縮です
でも、どうしても鬼剣を登場させたくて…という今年最後のわたしのわがままでした
ヨンでいただき本当にありがとうございます

2015年も皆様と一緒に、シンイを楽しんでゆきたいと思います