[福島第一原発/東北地方太平洋沖地震]チェルノブイリ、スリーマイルの二大事故と福島第一を比較する | honey-spider presents 『胎児が密猟する時』

[福島第一原発/東北地方太平洋沖地震]チェルノブイリ、スリーマイルの二大事故と福島第一を比較する




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(画像:アメリカ・ペンシルバニア州ハリスバーグ郊外のスリーマイル島原発 1979年)






福島原発事故、二大事故との違い

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110317001&expand#title

(Josie Garthwaite for National Geographic News March 18, 2011)




3月11日の東北地方太平洋沖地震と津波の影響で、福島第一原子力発電所で爆発事故が発生し、事態収束を図るため懸命の作業が続けられている。原発事故といえばスリーマイル島チェルノブイリが双璧だったが、福島原発は両者に匹敵する深刻な事態となる可能性があり、いずれは三大原発事故として記録に残るようになるだろう。福島第一原発の損害がどの程度深刻になるか現時点で見通しは立っていない。15日の時点で6基ある原子炉のうち3基で水素爆発が発生。さらに、2基で格納容器が損傷、4基で使用済み核燃料が過熱し、極めて危険なレベルの放射線が検出された。構内に残って作業を続ける作業員50人が被曝の危険にさらされるなど、事態は深刻化している。しかし、1979年にアメリカ、ペンシルバニア州ハリスバーグ郊外のスリーマイル島原発で起きた事故や、1986年のウクライナ北部チェルノブイリ市の原発事故とは大きく異なる点が既にいくつかわかっている。


◆原子炉の種類


1970年代に営業運転を開始した福島第一は、計6基の沸騰水型軽水炉(BWR)がある。BWRは通常の水を使用する軽水炉の一種で、H2Oの代わりに酸化重水素(D2O)を使用する重水炉と区別されている。スリーマイルの軽水炉は、加圧水型原子炉(PWR)という別のタイプだった。電力業界の非営利研究機関である米電力中央研究所(EPRI)の原子力担当副所長ニール・ウィルムシャースト氏によると、どちらの原子炉でも水が2つの役割を果たしているという。炉心で発生した熱を取り出す冷却材、そして核分裂反応で放出される中性子の速度を下げる減速材の働きである。


加圧水型では水に高い圧力をかける。炉心が加熱した冷却水を蒸気にすることなく(水の方が蒸気よりも冷却効率が高いため)、沸騰水型よりも高温で運転する。炉心の温度が高くなり、熱効率が上がるのである。一方、沸騰水型は加圧水型に比べ低温のため、原子炉の構造が簡単で、部品が少なく済む場合が多い。チェルノブイリは、黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(RBMK、ロシア語名:Reaktor Bolshoy Moshchnosty Kanalny)である。軽水炉と同様に冷却材として水を使用するが、減速材には黒鉛が使用されていた。イギリスのロンドンを拠点に活動する原子力業界の国際団体、世界原子力協会(WNA)によると、黒鉛の減速材と水の冷却材を組み合わせた原子炉は、ロシアで運転中の数台しかないという。アメリカでは原子力発電所のほとんどがBWR型かPWR型の原子炉を使用している。「安全性に大差はない」と、ウィルムシャースト氏とEPRIは同意見だ。「どちらもそれぞれ自己制御性(負の反応度フィードバック)を備え、炉内の温度が上昇すると自然に核分裂反応が弱まり、出力が減少する」とウィルムシャースト氏は説明した。「しかし、RBMK型は正の反応度フィードバック特性を持つ。温度が上昇すると出力が上がり、さらに温度が高まるため、原子炉の暴走が生じやすい」


◆事故の原因



「福島原発の事故では、津波が直接の原因となった可能性が高い」と同氏は指摘する。設計通り、地震の揺れを検知して運転を自動停止したが、 約1時間後に大津波が押し寄せ、すべての電源を喪失した。地震で冷却ポンプの動作を保つ外部電源が停止、冷却系への電力供給を担う非常用ディーゼル発電機は津波をかぶり故障した。非常用バッテリーもわずか8時間で切れたため、移動式発電機が搬入されている。アメリカの科学者団体、憂慮する科学者同盟(UCS)の原子力安全プログラム(Nuclear Safety Program)責任者を務めるデイビッド・ロッシュバウム氏(David Lochbaum)氏は、「一連の災害と事故との因果関係を判断するのは時期尚早だ」と指摘する。同氏はアメリカにおいて、福島第一と同じゼネラル・エレクトリック社(GE)製の3つの原発で技術者として働いた経験を持つ。



1979年のスリーマイル島原発事故に関する通称ケメニー委員会の最終報告書では、「機器の欠陥が事故の発端ではあるが、人為的な操作ミスが決定的要因となった」と述べられている。作業員が非常用冷却系統を誤操作により停止してしまったため、深刻な事態に進展した。もし作業員(または監督者)が事故の初期段階で非常用冷却系統を作動させていれば、あれほど重大な事故にはならなかったと同委員会は見ている。



一方、チェルノブイリでは動作試験が行われていた。「計画自体に不備があり、実施時にも複数の規則違反があった」とウィルムシャースト氏は言う。国際連合(UN)によると、予期しない運転出力の急上昇により蒸気爆発を起こし、原子炉の蓋が破損。その結果、溶融した燃料と蒸気が反応してさらに激しい爆発が起こり、炉心も溶融、建屋もろとも爆発炎上したという。



◆問題の究明


スリーマイルとチェルノブイリ以降の数十年で、何が原子炉内で起こっているのか、原子力発電に関する情報が公開されるようになった。スリーマイル事故当時に米原子力規制委員会(NRC)の委員だったピーター・ブラッドフォード氏は今週、「スリーマイルでは、事故3日目までに公開した情報のほとんどが不正確だった。燃料溶融の状況や1日目に炉内で発生した水素爆発の事実すら、何年もの間公表されず、情報がまったく闇に葬られていたのだ」と語った。


前述のケメニー報告書では、警報システムの不備を問題に挙げている。スリーマイル事故の最初の数分間、100以上の警報が鳴り響いたが、重要な信号を選択して通知するシステムは確立されていなかった。「状況が急速に変化する事故現場は混乱の極みに陥る。問題は、その状況下における人間と機械との相互作用に注意がほとんど払われていなかったことにある」。一方、ブラッドフォード氏は次のように指摘する。「コンピューター化と情報伝達の向上により、少なくとも理論的には、日本の当局者は事故の状況をはるかに詳しく把握できたはずだ。だが、スリーマイルにはない地震と津波が相次ぎ、パニックに陥ったことは間違いないだろう」。



◆放射能漏れの影響


スリーマイルと同様に、福島原発の原子炉でも、燃料被覆管、原子炉圧力容器、原子炉格納容器の3重の壁で放射能漏れを防いでいる。チェルノブイリは格納容器が無い設計だった。放射性物質が大気中に漏出すると、広大な範囲に影響を及ぼす可能性がある。「汚染の度合いは距離と関係ない。つまり、遠く離れているからといって必ずしも被曝量が少ないわけではないとロッシュバウム氏は説明する。その要因の1つである卓越風により、影響を受ける範囲が変わってくるという。チェルノブイリでは、発電所から150キロ以上離れた場所が数十キロ圏内よりも高濃度で汚染された例もある。 「チェルノブイリはまったく常軌を逸していた。放射性物質は格納容器のない原子炉構造と黒鉛の火災が原因で上空に舞い上がった」。黒鉛火災は10日間続き、長引く漏出の間に天候が変わった。放射性物質の気体と粒子は風に乗って上空まで運ばれ拡散し、現場から遠く離れたところで雨と共に地上に降り注いだという。



スリーマイルの放射能漏れは即座に健康被害が出るほどのレベルではなかった。国際原子力事象評価尺度(INES)では、最悪のレベル7より2段階低いレベル5(施設外へのリスクを伴う事故)に分類している。チェルノブイリはレベル7(深刻な事故)にランクされ、極めて多数の被曝者を出した。福島第一は当初、レベル4(施設外への大きなリスクを伴わない事故)にランクされていたが、今後どこまで影響が及ぶのかは未知数だ。300キロ近く離れた東京では15日、通常の23倍の放射線量が計測されたが、同日中に10倍程度にまで下がっている。


◆被曝に関する正しい知識を


アメリカでは、自然界のほか、医療処置や一般的な商品など人工の発生源から被曝する放射線量は、平均で年間6.2ミリシーベルト(1ミリシーベルト=100ミリレム)だという。AP通信によると、厚生労働省は15日、原発作業員の被曝量の上限を100から250ミリシーベルトに引き上げた。米国原子力エネルギー協会(NEI)の調べでは、福島第一原発の放射線量は15日午後に毎時11.9ミリシーベルトに達したが、6時間後には毎時0.6ミリシーベルトまで低下したという。 国連とNRCの調べによると、チェルノブイリでは、最初の爆発現場で800~1万6000ミリシーベルトもの放射線を被曝した作業員600人のうち、134人が急性の放射線疾患を発症したという。このグループの2人は事故時の火災と放射線被曝によって命を落とし、28人が3カ月以内に死亡している。さらにその後、4000人もの人々が被曝によってこの世を去ったとみられている。公衆衛生の観点から見ても、史上最悪の被害を巻き起こし、6000人以上の子どもたちが放射線被曝によって甲状腺癌(がん)を発症した。そのほとんどは、汚染された牛のミルクを飲んだことによる内部被曝だという。


◆情報開示の大切さ


「福島の危機を乗り越えるために、世界中の原子力業界が共同体勢を取って情報交換している。業界内で活発な情報交換が図られている点で、スリーマイルやチェルノブイリとまったく違う」とウィルムシャースト氏は語る。当然、原発事故に関する情報は業界外にも伝わる必要があるが、東京電力はこの点で厳しい批判にさらされている。15日には国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長が日本政府に対し連絡体制の強化を要請した。共同通信によると、同日に菅直人首相は東電本社を訪れ、幹部を叱責。爆発事故の連絡が首相官邸まで届くのが遅れたためで、「一体どうなっているんだ」と情報伝達の必要性を強く訴えたという。スリーマイルの事故当時は、原子炉を冷やして安定化させる作業が行き詰まっていても、当局側は国民に対して「危険は過ぎ去った」と説明するだけだった。チェルノブイリでも情報はほとんど開示されていない。世界原子力協会(WNA)は、「チェルノブイリの直接の引き金となったのは、冷戦時代の孤立状態が生んだ安全意識の欠如だ」との見解を示している。


アメリカ環境保護庁(EPA)は1986年のある論文の中で、「チェルノブイリ事故では当初、深刻な隠蔽工作が行われた」と述べている。実際、ソ連で大規模な原発事故が発生した事実が国際社会で明らかになったのは、翌日にスウェーデンの原発作業員の衣服から大量の放射性物質が検出されたことがきっかけだった。ただちに発生源の調査が行われ、ソ連は日が変わってからようやくチェルノブイリでの事故を認めた。情報不足のため、死者数から付近の原子炉での火災まで、さまざまな憶測が流れたという。日本でも状況が悪化するにつれ、高まる危険性を過小評価するような関係者の発言に非難が集中している。エネルギー環境研究所(IEER)の所長アージュン・マキジャニ氏は、原子力業界が用意した脚本をなぞるかのような日本政府の対応を批判する。「脚本のタイトルは“全然大丈夫”というところだろう」。「判明した事実と不明点。損害の大きさとそれがもたらす結果。情報を率直に伝えることが、国民からの信頼につながる」と同氏は話す。「しかし現在のところ、会見では放射線量の低さで安全を強調しているが、対照的に避難指示の範囲は広がるばかりだ」。



「Wall Street Journal」紙によると、日本政府は東電からの情報伝達の遅さを非難しているという。憂慮する科学者同盟(UCS)の世界的安全保障プログラム(Global Security Program)の物理学者で、核管理研究所(Nuclear Control Institute)の元所長エドウィン・ライマン氏は、「東電の会見は回を重ねるごとに曖昧になっている」とのコメントを寄せた。


「日本の関係者から出される情報の精度にばらつきがあるのは明らかだ。だが、それはいまだに状況把握に追われている状況を示しているのかもしれない」とライマン氏は続けた。同じくUCSの核専門家エレン・バンコ(Ellen Vancko)氏も、「現場は相当な混乱状態にあるだろう」と同意する。「アメリカや他の国々の業界で、今回の事故があいまいにされなければよいが」とライマン氏は語った。「福島第一原発事故は原子力開発の歴史上、最も深刻なレベルにあると考えている」。





管理人より。


米国スリーマイル島事故(1979年)と旧ソ連チェルノブイリ事故(1986年)と福島第一原発の事故を、当時の背景と過去の事故を教訓とし、現在に至るまでの改善点・相違点を明らかにした上で比較した引用記事を取り上げた。過去米ソで発生した事故と今回の福島第一との最大の違いは、言うまでも無くマグニチュード9.0の地震がもたらした大津波。少なくとも発生原因に関し人的要因は無い点で全く異なり、福島第一の施設の不備や人的操作ミスが事故を引き起こしたのではない点は複数の有識者の意見として一致するところであり、この点をヒステリックにあげつらい攻め立てる愚を犯すべきでは無い。


しかしながら、状況の進展の鈍さ(というより、寧ろ深刻な悪化)、健康被害の過大評価をなだめるコメントと反比例して拡大される避難区域、現場で作業に当たる人間が被る放射線量上限値のさりげない引き上げ、そして何故か日を追う毎にしどろもどろで国民の大半が知りたいことにまるで答えていない会見など、海外の目は皆一応に不可思議に思い、批判的であると考えて良いだろう。


管理人は上記に加え、海外メディアの中には、原子力・電力業界と政界の癒着と逸脱した権限の乱用を確信した者もいるように思う。


…いずれにせよ、福島第一が今後とも世界で最も危険な原発事故として忘れられることが無いのは間違い無い。しかしながら同時に、一部の海外メディアが何らかの作意をもって叫んでいるような「チェルノブイリと比肩すべき災害」という声には、上記の記事内容に倣い強く反論出来なければいけない。この事故は、断じて日本のお粗末な原発技術力が起こしたモノでも、杜撰な原発運用計画が引き起こしたモノでも無いからである。






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(ロシア通信社・ノーボスチによるウクライナ北部チェルノブイリ市の原発事故時のワンショット 1986年)