代表作「白痴」を含む7編の作品集。
安吾は戦後の文壇に新しい風を吹かせた作家、という印象を持っていた。

“男×女×戦争”
作品集として系統分類に配するとしたら、ここだろう。

戦時下の混乱の世であっても、人が悩み欲するものは男であり女である。愛情は肉体的で、精神的で、そして気まぐれに人を振り回す。安吾はそれを理解して尚、深層心理から愛情を捉えようとしている。

小説から作者は排除されているが、安吾のロマンチストぶりはにじみ出ている。熱狂的なファンがいただろうことは容易に想像できる。

窮地でこそ発揮される人間の本性に、安吾は愛を見出せたのだろうか。

ponzu

白痴 (新潮文庫)