国際医療福祉大学大学院主催の国際シンポジウム「国境を越える患者と病院」が8月29日開催され、韓国での取り組みのほか、日本の現状などが紹介された。

 日本の行政担当者や病院経営者のほか、中国・韓国からも来日、計10人以上のシンポジストによる講演とディスカッションを通じて浮き彫りになったのは、健診と観光をセットで行う「医療ツーリズム」をはじめ、国際医療交流への日本の取り組みは諸外国よりも遅れていること、これから本格化する場合でもそのハードルは相当高いことなどだ。また、日本では政府が医療通訳の育成などに着手しているものの、医療機関側にどの程度、取り組む意欲があるのか、人材的余裕があるかなどが疑問視され、行政と現場の医療機関の温度差も伺われた。

 「ハードルの高さ」を端的に表していたのが、亀田総合病院(千葉県鴨川市)などを経営する亀田メディカルセンター特命副院長のジョン・C・ウォーカー氏のコメントだ。英語などの「言葉の壁」のほか、「グローバルスタンダード」(ウォーカー氏)の病院機能評価であるJCI(Joint Commission International)の認証を取得しているのは日本ではまだ亀田総合病院しかないことなどを上げ、ウォーカー氏は、「(外国人患者の受け入れは)日本の病院にとってかなりチャレンジングなこと。韓国はアグレッシブに取り組んでいるが、日本の病院は未熟児」と称した。

韓国では2009年度から本格化、日本人も1万人強

 「基調講演」として、韓国の事情を紹介したのは、日本の厚生労働省に相当する省の外郭団体、「KHIDI」(Korea Health Industry Development Institute、韓国保健産業振興院)の国際医療事業団団長のDr.Kyug-Won Jang氏。韓国では、2005年度から「KHIDI」が主体となって準備を進め、2007年には医療機関なども含めた「韓国国際医療サービス協議会」(現:韓国国際医療協議会)を設立。2009年度から健診・観光ではなく、診断・治療をメーンにした外国人患者の受け入れを本格化させている。

 2009年度の外国人患者の受け入れ実績は、6万201人(外来93%、入院7%)。患者は、米国、日本、中国、ロシアの順で多い。日本人は1万2997人、その大半(1万2860人)が外来で、健診センター、皮膚科、内科などの利用だ。2013年には20万人の外国人患者受け入れを目指している。

 韓国でも、外国人患者の受け入れに当たっては、「国内の患者を疎かにする懸念はないか」などと、医師会の反対があったという。これに対し、「KHIDI」は、(1)病床稼働率は、2007年度は78%で、94%程度に上げても、250万人の外国人患者の受け入れが可能であり、病床には余裕がある、(2)医師も毎年約3300人新規に誕生し、「行き場を失っている」(Kyug-Won Jang氏)、(3)外国人患者の受け入れは外貨獲得、病院への再投資につながる――などと説明、雇用・産業創出につながるとし、理解を得た。

 外国人患者の受け入れに当たっては、海外でのPRや外国人患者受け入れの医療機関の登録、病院情報提供など、インフラ整備に努めた。「最初にエンジンをかけるのは国の仕事。病院に力が付いてくれば、あとは病院の役割」(Kyug-Won Jang氏)。

 一方で、ネックになった一つが通訳の養成。同時通訳ができるレベルの人であっても、医療通訳の即戦力にはならなかったため、現場に出る前に医師らが約6カ月トレーニングした。しかし、高度な能力を持つ通訳者の通訳料は高く、通訳の稼働率なども勘案すると、採算が合わなかった。現在は、看護師などの医療分野の有資格者で、国際結婚で韓国に在住している人が医療通訳の中心を担っているという。

 そのほか、紛争対応として、「医療紛争調停法律(案)」の制定準備も進めている。

 日本では、医療通訳や病院の認証制度の準備進む

 Kyug-Won Jang氏の「基調講演」の後、行政担当者やウォーカー氏らが出席してディスカッションが行われた。日本では、政府が2010年6月の「新成長戦略」で、「国際医療交流」の推進を掲げている(『「新規の市場約50兆円、雇用284万人」、医療・介護・健康で創出』を参照)。

 さらに経済産業省の「医療産業研究会」は6月30日、「医療生活産業」の振興と「国際医療交流」を柱とする報告書をまとめている(『医療周辺サービスを民間が担い“医療崩壊”を防ぐ - 経産省商務情報政策局サービス産業課課長補佐・長谷川裕也氏に聞く』を参照)。同研究会の事務局を担当した商務情報政策局サービス産業課課長の藤本康二氏は、東京外国語大学と研究を兼ねつつ、医療通訳の養成を進めている現状を紹介、「国家資格化までは想定していないが、医療通訳の能力の“見える化”し、国が何らかのスタンダードを示す必要があると考えている」と説明した。

 観光庁国際観光政策課課長の柏木隆久氏は、「訪日旅行促進事業」(ビジット・ジャパン事業)で、2013年までに訪日外国人を1500万人(2008年の実績は約835万人)という目標を立てている現状を紹介。観光庁の下に「インバウンド医療観光に関する研究会」を設置、海外動向調査、海外プロモーション、国内現況調査の三つの柱で取り組んでいくとした。

 厚労省大臣官房参事官の木村博承氏は、「国民の医療を阻害しないことを前提に、医療の国際化を通じて国民医療の向上に寄与」という考え方で外国人患者の受け入れに取り組むと説明。今後、(1)海外にアピールできる日本の医療技術等を明らかにする、(2)外国人医師・看護師による国内診療等の規制緩和の検討・実施、(3)健診・医療機関の質確保のために、「外国人患者受け入れに資する医療機関認証制度」の整備――を進めるとした。

 中国の医療ニーズは高いものの、参入障壁あり

 シンポジウムのもう一つのテーマが、「国境を越える病院」。最近、中国への進出を計画する日本の病院が出ている現状を踏まえ、「日本の病院が今、中国に進出するのはチャンスか」という視点から議論が展開された。

 中国は現在、2011年までに国民皆保険制度を整備するよう準備を進めている。前在中国日本国大使館一等書記官の若林健吾氏は、「日本の皆保険成立時と同様、『保険あって医療なし』の状態」と紹介、中国が民間間病院を増やす方針であるとし、医療ニーズ自体は高いとした。

 中国への進出事例として紹介された一つが、財団法人淳風会倉敷第一病院(岡山県倉敷市)。院長の原史人氏は、同病院で2008年10月から人間ドックの受け入れを開始するとともに、今年1月から上海での医療事業展開への準備を進めている現状を、各種の交渉の難しさを交えながら説明した。

  一方、赤穂中央病院(兵庫県赤穂市)などを展開する医療法人伯鳳会理事長の古城資久氏は、中国で病院計画を試みたものの、2008年9月のリーマン・ショックで資金調達が困難になり、頓挫した経緯を紹介。

 こうした事例紹介の後、現地の事情を良く知る立場から話したのが、日揮・メディカルプロジェクト部担当マネージャーの野々山尚毅氏と、中国華北地域で7カ所の病院を経営する、仁済生生医院管理集団(Rising Sunshine Hospitals Group)のCOO(最高執行責任者)の向田和弘氏。両者のコメントから、病院開設の準備を進めても、容易には申請が下りないなど、中国側の病院開設をめぐる法整備や行政の対応の難しさが依然として存在することが伺えた。

 野々山氏は、以前勤務していた医療法人で中国事業展開に従事、2007年12月には上海にクリニックを開設、副院長として勤務した。「都市部と地方で計画を進めた経験がある。順調にあるところまで計画が進んでも、あるところでストップしてしまう」(野々山氏)。

 向田氏も、「今は医療機関は都市部に集中して、バランスが崩れている」としながらも、「ここ数年は、中国進出を待った方がいいのでは」との見方を示した。さらに、向田氏は、「日本の医療技術は果たして高いかというと、それほどではない。にもかかわらず、中国進出を計画している日本人から相談を受けるが、過信している人が多い」とも指摘していた。






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