虹の向こう側17 | 恋愛小説 くもりのちはれ

『あの時の事は、一部のバスケ部員だけが知ってる。


少し噂が漏れ広がったけど、噂は噂であって真実ではない。


大会前の無断練習で起こった事件の真相は、ただイタイ女の虚言で始まり、


虚言で終わったって言う、嘘に振り回されたってだけのホント迷惑な事件だった。


その女が、なんの為に起こした騒ぎか、全く理解できなかった。


けど、危ぶまれていた大会への出場も心配ないと安心した矢先、事件をあっさり


嘘だと認めた女が、ホントの目的に打って出た。


〝嘘を吐いたのは顧問の和倉先生に弄ばれたから〟なんて更に酷い嘘を吐いた


んだよ。女は、和倉っちが好きだったんだろうな。その思いが、歪んだ形で和倉っち


に向けられたんだと思う。


そのせいで和倉っちは、クビもやむを得ないと言う大変な状況下に置かれた。


さらに怪しげな出版社の記者が学校にやって来て、教師の不祥事とし記事にする


と理事長に詰め寄り、金銭的な要求をしてきたらしい。


それが全て嘘なら問題は無かった。


でも、その話の中に奈津の名前が出たことで、ただの嘘ではなくなったらしい。


奈津の家に現れた記者に、奈津の叔母さんは色々と吹き込まれ、たまたま早く


帰った俺も、慌てて帰って来た奈津の叔父さんに問い詰められた。


それが嘘だろうと噂だろうと、たとえ匿名だとしても、記事になると解る人には解る。


どうであれ奈津が傷つく事に違いはない。そう考え、奈津に内緒で学校へ出向い


叔父さんは次期理事長の近藤先生を交えて和倉っちと話しをつけた。


その内容は、俺もはっきりとは解らない。


でも、和倉っちが出した辞表は近藤先生の手で破られ、そして和倉っちと奈津が、


〝今までどおりの教師と生徒という状況でいる事が、噂を噂だと示す事になる。〟


という結論に達したらしい。そして叔父さんは、真摯に頭を下げた和倉っちに、


〝奈津の事を思うならば、冷たく突き放してくれ〟と、言ったらしい。で、全てが


全くの嘘になって、近藤先生が記者を合法的な方法で撃退したみたいだ。』


涼君の話は、まるでドラマのシナリオの様で、自分に起きた真実だと理解するのに


時間が掛かった。


だってお父さんが関わってたなんて、それに先生が先生を辞めようとしたなんて・・・


言葉も出ない。


『ずっと俺も叔父さんも叔母さんも、あの日の事は、一切口にしなかった。


だけど奈津が家を出て行った日、酔った叔父さんが俺に話してくれたよ。


あの時、怒り心頭で和倉先生に詰め寄ったけど、先生の奈津に対する気持ちは


真っ直ぐで本物で圧倒されたって。彼は、良い男で、良い人間だった。


でも良い教師じゃねぇなって。だけど、奈津は、男を見る目があったなって。』


結局、先生は・・・私を守ってくれったって事?


私の為に、辞表を書いて、私の為に、教師を続けて・・・そして、私の為に


別れを告げたの?



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