無翼の天使59 | 恋愛小説 くもりのちはれ

「あっ、でも今からじゃ・・・夕飯も食べてないし・・・だから今度、今度ね?


もしかしてだけど・・・今度は無いとか言わないよね?パパがあんな話するから・・・


ホント私って面倒な相手だよね?解ってるの、今までが今までだったから。」




いざパパに動かれると、やっぱり理解してくれて、何も気にしないなんて人、


いるわけ無いと思うし・・・


全てを掛けて私を守れなんて言われると、誰であろうと重たすぎて引くはずだし・・・


それに私の事、端から諦めるような人なら、何か微妙だし・・・


ほら、やっぱりかなり面倒くさい女だよね、私って。


だけど、だけどね、慶人は違った。今までの関わった人とは、別だった・・・違ってた。


だからパパは、反対じゃなくて、なんだかんだ言って実は認めてくれたんだと思う。


慶人に守らせるって事は、私と慶人は一緒に居ても良いってことなんだと思う。


だから今此処で慶人に、さっきの言葉を訂正されちゃうと、立ち直れないよ。




あの時、慶人は真剣にお祖父さんを見据え、そして一度深く頭を下げて話し出した。


それはまるで宣誓って感じの始まりだった。


『跡目の話、正式に受けます。全て放棄って話しは、撤回します。


爺さん、貰えるものは全部、根こそぎ俺のモノにする。そうと決めたら、親父にも


渡さねぇ。そうすることが真菜を手に入れる条件みてぇだし、真菜を手に入れれば


海藤は安泰だろ?だから爺さん、イヤ会長、真菜を守る為に海藤を動かしてくれ。


次期跡目が俺だと何かとうるさい輩も、ワタライって名前を聞けば黙るはず。


こういうことなんですよね、渡会さん。さっき言ってた価値の話。


今・・・俺の価値、少しぐれぇは上がりました?』


お祖父さんに向かって言い放った慶人の覚悟の宣言は、私を驚愕させ鳥肌まで


立たせたうえに、お祖父さんの目に涙を浮かばせた。


パパは、してやったりの顔で私を見る。何だか、パパの思う壺・・・。


とは言っても結局、パパは私に甘いのかもしれない。


慶人の言葉を簡単に引き出し、私のボディガードを強固のモノにした。


でも・・・もしあの言葉が、あの場限りだとしたら・・・やっと認められた彼氏って


存在なのに・・・諦めつかない。


でも慶人の事を思えば、やっぱり私って間違いなく相当なお荷物女。


厄介者の何者でもない慶人の表情を伺う事が出来ず、俯く私。


『観覧車ねぇ・・・飯は後にして、急いで行くか?』


と、思いがけない慶人の声。


だから不意に顔を上げて慶人に視線を送ると、誰しもが瞬殺の最上級スマイル。


『真菜らしいな、観覧車なんて。今まで男と二人きりなんて乗れなかったんだろ?


あの監視下の中、男なんて作れるワケないよな。じゃ、俺が最初の男だな?』


「最初の男?えっ・・・えっっ・・・まだ・・・ソレは・・・ちょっと・・・」


『はははっ・・・まさかさっき親父さんと話したばかりなのに、いくら俺でもそんな


速攻で手はだせねぇ。期待はずれで悪いけど、今のは観覧車の話。


夜も10時頃まで営業してるはずだから、行ってみるか?



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