無翼の天使52 | 恋愛小説 くもりのちはれ

『連れて来たから、慶人の・・・言ってた女・・・』


奥の離れの襖を勢い良く開け、ズカズカと部屋の中に入っていく彼女


「こんばんは・・・お邪魔します。」


今から何を言われ、されるのか解らないけど、慶人のお祖父さんだから、印象良く


思われたい。


畳が敷き詰められた大きなお座敷の様な部屋。


部屋の奥の今にも動き出しそうな鎧と兜、それは幼い頃の記憶とシンクロする。


私、ここに来た事がある。さっき感じた懐かしさは、間違ってなかった。


その傍に座る一見、普通のお年寄り。でも、やっぱり言葉を発せずも何かしらの


オーラがあって、元は海藤の頂点に座っていた人だと私でも解るほどの存在感。


お祖父さんの前に、待ってましたと言わんばかりに座布団が2枚。


彼女がそこに当たり前の様に座るから、私も隣に正座する。


『お嬢さん、人のものに手を出しちゃいけないよ。』


私が座ったと同時にお祖父さんが口を開く。


「えっ?人のものですか?それは・・・慶人のことですか?」


その私の質問に答えたのは、隣の彼女。


『慶人は、海藤の跡を継ぐって立場だけど、愛人の子供なの。


だから海藤としては、従兄妹の私と結婚させれば下の者達も納得するだろう


って話、既に決まってる事なのよ。


慶人が何をアンタに言ってるかは知らないけど、今更それを変える事はないの。


いくらアンタが高宮のお嬢だからって、お金持ちだからって、変えられないの。』


『高宮?!


お祖父さんが、高宮の名前に驚きの声を上げる。


『お嬢さん、名前は?』


私の顔をじっと見つめるお祖父さん。


「あのぉ・・・私、渡会真菜って言います。たぶん、きっと・・・私、お祖父さんと初対面


じゃないと思います。ワタライのお祖父ちゃんと一緒に此方に来た事があります。


覚えてますか?」


そう聞いた瞬間、私への視線が暖かなモノに変わる。


『おぉ・・・どこかで見たお嬢さんだと思ったら、ワタライのお孫さんじゃないか。


そうか・・・慶人は、ワタライの孫娘と・・・アイツは、やっぱり只者じゃないな。』


そうか、そうか・・・ワタライか・・・ワタライだからな・・・ほぉ・・・


次第に嬉しそうな表情に変わるお祖父さんの顔を見て、逆に彼女は困惑顔。


『ワタライ?どういう事?お祖父さんもアンタも、何言ってるの?』


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