無翼の天使5 | 恋愛小説 くもりのちはれ

『とにかくお前は、俯いて黙ってろ。駅に着くまで顔を上げるな。』


何が起こるのか聞けないまま、すぐに次の駅に電車が着いて、前のドアが開く。


言われたように俯く前に、駅のホームに視線を向けると、見覚えある制服を着た


城北高校の不良たち数人。


ちょっと、どうして城北?城北からこの駅って、かなり距離があるのに・・・なぜ?


それに、それに、アレは・・・どう見ても奴だ!


シルバーの髪の色は、私からしたら白髪?って感じだけど、奴の自慢の一つ。


隣に座る彼と同等の顔レベルの奴は私の幼馴染。


それより奴が居るって事は・・・まさか、居ないよね?うんうん、きっと城南は逆方向


だから居るはずない。だけど此処で奴に会うなんて、想定外だよぉ・・・


この電車の駅付近には、高校も中学も無い。だから、誰にも会うことは無いって


思ってたのに、失敗だ。彼の忠告を素直に聞いて、別車両に行けばよかった。


俯いてドキドキと胸打つ心臓の音は、電車が動き出しても周りに聴こえちゃうんじゃ


ないか?って程。


『オトメじゃん!!えっー、また女変えた?』


『はっ?』


『隣、オトメの女じゃないの?』


乙女って、この私の隣に座る彼が?そりゃ美形ではあるけど・・・どう見ても麗しい


乙女には見えない・・・なぜに乙女?


『ばぁーか、ミッキー。オトメは改名したんだよ。で、なんて名前だった?』


『海藤(カイドウ)』


かなり不機嫌な声で、名乗る隣の席の彼は、どうやら乙女改めの海藤君らしい。


『知り合い?』


ボソリと話す声は・・・夏樹(ナツキ)の声だ。たぶん私に気が付いた。


『イヤ、知らねぇ。』


『そっか。』


『ナオトは?』


『あぁ・・・先に行ってんだろ、たぶん。』


どうやら夏樹と海藤君は、同じ仲間らしい。そういう世界の事、良くは解らないけど


私が一番触れられたくない名前を、海藤君が口にした事で確信する。


海藤君は、やっぱり夢ちゃんが言った通り、関わっちゃいけない恐い人。


彼は・・・ナオト・・・そう私のお兄ちゃんが統括するグループの幹部らしい。



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