気がつけば星空6 | 恋愛小説 くもりのちはれ

壱&佐和7~


『佐和、佐和・・・雨止んでるみてぇだから、今の内に帰るぞ』


少し眠っていた私の頬を、撫でる様に優しく触れる壱。


ゆっくりと瞼を開けると薄明かりの中、壱の微笑む顔が目の前に・・・


『悪い、明日ちょっと用事あってさ、朝までココにいると間にあわねぇから』


目をこすり近くで光るデジタル時計の数字を見る・・・AM1:48・・・


「うわっ、私・・・知らないうちに寝ちゃった。ごめんね」と、慌てて起き上がる。


『どうして謝る?俺が無理させたからな・・・大丈夫か?動けんの?』


ニヤリと笑う壱。私は、数時間前の行為を思い出し、恥ずかしさで頬が熱くなる。


「からかわないでよ。そんな事言うなら、もう壱とはしないんだか・・・んっ・・・」


突然、後頭部に壱の手がまわり・・・そのまま唇が塞がれ身動きできない。


息も間々なら無い激しいキスが終わると、壱は真剣な表情で私に忠告する。


『俺以外の奴に身体触らせるような真似してみろ、ソイツの命は無いから』


本気で言ったセリフじゃ無いのに・・・冗談も通じないんだから。


「分かってるよ・・・私、好きな人としかできない・・・あんな事・・・」


近くに置いてた服をベッドの中でゴソゴソと着ながら、ソファに座った壱を見る。


既に着替えも済ませ私を待つ壱は、携帯に目を落としている・・・何気ないしぐさが


この場に慣れている様に映る。


きっと私と付きあうまでは、当たり前の様に色んな女の子と来てたのだろう・・・


と考えると、今の私は壱を独り占めしてるはずなのに・・・胸の奥がモヤモヤと


複雑な心境になる。そう、なぜか抱かれた後は、壱の過去に嫉妬する。


こんな風に壱に愛されたのは、私だけじゃないんだと思うと・・・分かってるけど・・・


許せない気分になる。


『佐和、どうした?本気で立てないとかじゃねぇよな?』


着替え終わった私が一向に動こうとしないから、壱は携帯を閉じて立ち上がり


私に近付くと顔を覗き込む。


「立てるよ・・・ほらっ」ってベッドから降りた私は、モヤモヤを振り払う為に、振り向き


目の前の壱に不意打ちのキスをする。


触れた唇から、気持ちが伝わったのかもしれない・・・


『佐和だけだから。こんな風に女を抱くのも、キスすんのも佐和だけだ。


何も口にしなくても、全て通じるのかもしれない。


『時間まで一緒に居るだろ。』私の返事も待たず、壱の家に向かうバイク。


バイクの後で壱の身体に抱きつき、壱の温もりと匂いを独り占めする。


付き合い始めの頃、バイクに乗せてもらった時の言葉を思い出す。


『コイツに女を乗せるのは、お前が初めてだ』


壱の家の前、バイクを降りメットを脱いで見上げた空・・・無数の輝く星


雨が降ったとは思えない、綺麗な星空。


「壱、見て・・・凄く綺麗。」壱を引き止めて二人で、少しの時間黙って星を見上げる。


こんな広い宇宙の中で、私は壱に出会って恋をした。とても奇跡的な素敵な事。


そう考えれば、壱の過去なんて些細なことだ。今と未来を大切にしよう。


気がつけば・・・私の中の不快な嫉妬のモヤモヤは消えていた。


ポチッ↓としてくれると嬉しいです♪

 にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ

にほんブログ村


目次 /右矢印