天使の悪戯13 | 恋愛小説 くもりのちはれ

『それで、遅刻?』


隣の席のミキは、階段での事を小声で説明をすると怪訝そうな顔。


「うん。怪我はしてないけど、ちょっと座ってた。」


あの後、しばらくベンチに黙って座っていると、突然・・・


スーツ姿の人が、歩君に近づいてきた。


『奈緒・・・俺、ちょい行くとこあるから、誰かに送らせる。ごめんな。』


歩君は、俯く私の頭を優しくポンポンと撫でると、立ち上がる。


「あ・・・歩君・・・」不安そうに顔をあげた私に、少し微笑んだ歩君は


『改札で帰り待ってるから、前みたいに時間メールして』


そう言うと、スーツの人とバスターミナルの方へと歩き出した。


『奈緒ちゃん、どこも怪我してない?』


成君が声を掛けてきたけれど、歩君の背中を目で追いかける。


『奈緒ちゃん、学校まで送ってくよ』


私の視線を妨げるように前に立つミッキー・・・でも、私は見てしまった。


バスターミナルの向こう側・・・止まっている車・・・黒のベンツ。


別のスーツの人が助手席から降りてきて、頭を下げ後部座席のドアを開ける。


そして・・・乗り込む・・・黄色い髪・・・歩君。



ミキには階段での事は説明しても、歩君の事は言えなかった・・・


『警察は行かなかったの?もう完全にそれって犯罪じゃないっ!』


ミキの声が大きくなる。


『オイッそこ、うるせぇぞ』先生の怒声。


ばつが悪そうに舌を出すミキ・・・私も苦笑い。


そして、ミキは”後でちゃんと説明しなさいよっ”と、小さな手紙を渡してきた。




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