挑発 | 恋愛小説 くもりのちはれ

『加奈、本当に変わったな。あんな場面見て・・・俺の時は考えられなかったよな』


部室に向かう渡り廊下。ユニフォームを着たアキラに声を掛けられた。


すっかり元の私達に戻った事で、部員達も


『あの数日間は何?』と疑問に思ったみたいだけど・・・


「あの時はゴメンね。」謝る私に『うぉっ』と声をあげたアキラ。


「どうしたの?」アキラの視線は私を素通りして・・・私の背後に・・・


そして小さな声で呟く。


『むちゃくちゃ、怖ぇーんだけど・・・お前の彼氏・・・やばくねぇか・・・』


「えっ?」振り向こうとした私を『振り向くなよ!』制止するアキラ。


『ハハッ・・・俺もさ、ただで引くのも面白くないからさ、ちょっと楽しませて。』


あー・・・私って結局・・・過去も今も、似たようなタイプを選んでたんだ・・・


まさに今、私を挟んで、見えない戦いが繰り広げられようとしてるって事?


駄目だ・・・このままじゃ後が怖いよ・・・私だけじゃなくて・・・


これから始まる練習がどれだけハードな物になるか、考えただけで吐き気がする。


「アキラ・・・ちょっと私・・・


耐えられないからもう行く『駄目だって・・・この前の仕返ししてやんなって。』


俯く私の顔を覗き込み、アキラはそのまま顔を近づかせてニヤリと笑った。


まさか・・・まさかだよね・・・この状況は・・・


『クスッ・・・ほら、まんまと引っかかった。』


背後から只ならぬ気配・・・逃げ出そう・・・そう片足を踏み出そうとした瞬間


決して押しちゃいけないスイッチが入ったであろう先輩の声・・・


『加奈、何してんの?』掴まれた腕。


掴んでる手から伝わる先輩の体温は、かなりの熱。


向かい合った先輩とアキラ・・・一瞬だけ視線がぶつかり合う。


怒りの先輩に負けず劣らずのアキラは、私に微笑みかけ・・・


『加奈、今度はクチビルもらうから。』と先輩に対して再度の挑発。


そして最大のダメージを私に与え、颯爽と何も無かったように手を振りグランドに


走っていった。


『で、どこにされた?』


掴んでた腕を引っ張り、引きずられるように連れて来られた、部室の一角。


壁に押し付けられ、両肩には先輩の手。


「えっ?」逃げられない・・・完全に掴まった。


『だから、どこにされたって聞いてんだけど。』


誰しもが、やばいって言う先輩のオーラ・・・まさに今、感じるよ。


「どこにも、何もされてない・・・そう見えるようにアキラが・・・んっ!」


その先のセリフは言葉にできない・・・いきなり先輩の唇にふさがれる。


繰り返される息もできない程の激しいキスから、解放されたのは・・・


部室に来るであろう数人の足音が聞こえた時・・・そして・・・


離れた唇から吐き出された言葉


『俺以外の男・・・呼び捨てすんじゃねぇよ』


私はそこで知る・・・本当に先輩を挑発したのは・・・私?




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