後悔3 | 恋愛小説 くもりのちはれ

結局・・・俺は斉藤を泣かした・・・走り去る斉藤を追うことができなかった。


あのサッカー部の野郎が、斉藤の名前を呼び捨てにした瞬間・・・


湧き上がる独占欲。


「ざまぁねぇな・・・フッ」


このまま部屋に連れ込んで・・・という横暴な感情を抑える事だけで必死だった。


泣いてたよな・・・。


連絡しようと考えながら手にした携帯。


何て言ったら良いか・・・何を言ってもかっこ悪いだけ・・・。


すると突然、手の中の携帯に着信。


『ワタルっ!颯兄が事故った!意識が無いって・・・』


施設の仲間の中でも、兄の様な存在の颯兄・・・帰宅途中の事故


車道に飛び出した猫を避け、バイクが横転、ガードレールに激突したという。


慌てて病院に駆けつけると、意識不明の重体。


駆けつけた仲間も皆、一言二言、言葉を交わすだけ・・・


静かに、固唾を呑んで容態の報告を待つ。


そんな状況の中、俺は斉藤のことを・・・すっかり忘れていた。


夜中に気がつき「余計な心配は掛けたくない」と言う思いから、


この状況の説明は一切せずに、短い謝りのメールを打つ。


斉藤が涙して、眠れぬ夜を過ごしていることも知らずに・・・


部活後は病院に直接向かうため、斉藤にしばらく一緒に帰れないと告げた。


不安そうな表情・・・昨日、泣いたとわかる瞼、でも結局、今までどおりに


俺の思うとおりの言葉を返してくれる。


颯兄の意識は2日経っても戻らない。


授業も部活も休めない俺は、殆んど睡眠が取れずにいた。


部活の休憩中に、仮眠するような状況。


約束を実行できなかった小夜は、休憩時間だけ俺のそばに寄ってくる。


眼を瞑り休む俺の横で、一方的に話をしてくる小夜。


適当に聞き流しながら、過ごす時間。そして、3日後の昼休みに連絡が入る。


颯兄は二度と意識を戻すことは無い。


クロに続き、颯兄までも・・・ショックで言葉も出なかった。


『ワタル、今日はもういいから・・・このままだとお前が倒れる・・・』


俺は頭の中がごちゃごちゃで整理が付かず、無意識の内に時が過ぎ、


気がつけば、授業も部活も終っていた。


帰り道、小夜が声を掛けてくる・・・隣を歩き、何かを話しているが耳に入らない。


寝ていなかった事もあるが、周囲だけが時を刻んでるような・・・


自分ひとりが・・・取り残されてるような・・・そんな心境で朦朧と歩いていた。


突然、小夜が俺にキスをしたのも、どういう経緯でそうなったのかも・・・


わからない・・・。3日間の約束の代償らしい・・・。


もう、どうでも良いと言う思いで、拒否もせずに佇む俺。


全ては簡単に約束などを交わした俺の過ち。


そして、振り返ると斉藤と眼が合う・・・身を翻して背を向け走る彼女。


呼び止める事も、追いかける事もできない。


それほど、俺は弱っていた。



どうか・・・クリックをお願いします。(#⌒∇⌒#)

にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ  

にほんブログ村

右矢印