彼女 | 恋愛小説 くもりのちはれ

俺の彼女は、今どきめずらしい程の素直さと健気さを持つ。


自分では全く気が付いてないが彼女の良さを知っていたのは、俺だけではない。


周りの奴らの中では、かなりの好感度、好印象。


未だに俺達に隙あらばと狙っている奴も、数人はいるだろう。


隙など作る気は無いが・・・。


『瀬尾君、顔色悪いよ・・・休んでたほうが良いよ。はい、タオル』


ほら、こんな風に周りの事を良く見ていて、自分でも気が付かない内に行動を起こし


プラスいつも笑顔で、彼氏の欲目でもなく可愛いから、男はクラッと嵌る。


気が利く可愛いマネージャー。


俺の彼女は部員達の中でも、かなり評判が高い。


特待生の俺は、部活も勉強も手を抜くわけにはいかず、デートらしいデートも全然

 

できないし、学年が違うと話せる時間なんて、部活の休憩の時か帰りだけ。


それでも彼女は、部活後、俺が声を掛けると嬉しそうに笑顔をみせる。


俺自身、彼女に会うまでは、誰も好きにはなれない人間なんだと思っていた。


血の繋がりある人間に捨てられた自分は、誰かを好きになっても良いことはない、


いずれ離れていくのなら、最初から孤独で良い・・・そう思っていた。


孤独だからこそ求めるのに・・・孤独だからこそ恐れる。


諦めてた・・・


恋愛感情たる物が俺には無い物なのだと・・・彼女に会うまで。


こんな風に考えるようになった俺は、きっと・・・かなり彼女に惚れてる。


そして、この気持ちに気が付いてない俺の彼女・・・


自分の気持ちの方がずっと重いと勘違いしている。


本当に・・・俺が始めて恋した彼女は、そいう面では、かなり鈍感だ。


だから、俺に嫌われないように振舞う・・・文句も言わない。


優しいのにも程がある・・・我慢もいつかは限界が来るだろう・・・


分かっていて、甘えていた・・・


小夜に相談を持ち掛けられて、いつも仕方なく彼女を一人にする。


いつも笑顔の彼女の顔を曇らせてるのが、自分だと分かっていて


小夜を突き放せない。


小夜の事情を知りすぎているから。


小夜の家庭は一見普通の家。ただ両親二人ともが壊れている・・・


一流企業に勤めてはいるが、家の中では暴力を振るう父親。


男を作っては何ヶ月も家出をするという事を、何度も繰り返す母親。


幼いときから、母親がいなくなるたびに、施設に預けられた小夜。


そんな小夜の孤独を理解できるから・・・


いつかは強く突き放さなきゃいけないと考えつつ、それが出来ないでいた。


『ワタル・・・ちょっと良い?』小夜の言葉・・・横にいる彼女の表情が曇る。


天秤に掛けると傾くのは、確実に彼女側なのに・・・俺は、また・・・


「なんだよ・・・しょうがねぇなぁ・・・」彼女を置いて歩き出す。


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