リコⅦ4 | 恋愛小説 くもりのちはれ

ポツ・・・と冷たい水滴が空から落ちてくる・・・


大きく叫んだ私の言葉が、優に届いたかどうかは、わからない。


ポツポツと降り始めた雨が、少しずつ辺りを濡らしだす。


優は、幅狭い手摺の上に片足を上げ、こちら向きに体勢を変える。


雨が降り注ぐ天を仰ぎ、はぁーと大きく息を吐き、こちらに目線を向け


『俺、別に、ここで死ぬって一言も言ってないぜ。


ただ、今か2週間後かって聞いただけだ。』


そう言って、軽々と舞い降りるかのように、高い手摺から飛び降りた。


そして優は、私を見つめて・・・フラフラと歩き出す


『麻井・・・お前って・・・ホント・・・何なんだ?』


搾り出すような震える悲しげな声・・・


『お前は卑怯だ・・・真っ直ぐすぎて・・・


よろけながら・・・少しずつ、近づいてくる・・・


『お前っ・・・ホント・・・眩しすぎんだよ・・・』


あと数歩で触れられる距離・・・


『やっぱ届かねぇ・・・』


そして私の方に手を伸ばしたまま、膝から崩れ落ちる様に優は倒れた。


それからの事は、まるでコマ送りの映像を見てるようだった。


あまり記憶が確かではない。


優のそばに駆け寄り「優っ・・・優っ・・・優っ・・・」と名前を呼び続けてる私。


『大丈夫、救急車来たから』とコウ君は、私を抱き起こす。


コウ君の先輩が救急車を既に呼んでいて、優が担架に乗せられていく様を


私は、雨に濡れながら、コウ君の腕の中で呆然と見ていた。





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