「銀行のもうけは貸出金利と預金金利の差額分」と
「世界一わかりやすい金利の本」のP.34に書かれています。
確かにそうなんです。
「私たちが銀行からお金を借りるときは、常に預金金利などの資金調達コストに銀行の利益がプラスされた高い金利で借りることになるのです。」
とも書いてあります。
これをみずほ銀行のHP(平成23年12月現在)で確認してみましょう。
預金金利: 6か月定期:0.055%(インターネット支店での新規お預かり時)
住宅ローン: 変動金利:0875%(優遇適用時)
確かに正しいことが確認できますね。
これは商売で言うところの粗利であり、儲けではありません。
粗利:0.875%-0.055%=0.82%
では、儲けは見てみましょう。
営業経費と団信保険料がコストとしては主なものと思われます。
●営業経費
銀行の大きさや店舗数などにより異なりますが、人件費、広告宣伝費、システム費用などが考えられますね。
住宅ローンの場合、銀行はそれ専用のシステムを保有し、住宅ローンセンターを作ったりしているので、他の業務よりはコストがかかっていると推測されます。
ただ、それを検証できるほどの情報もデータもないため、公表されているみずほ銀行の決算書で確かめてみましょう。
財務諸表(平成23年3月期)から営業経費(0.65兆円)を総資産(74.7兆円)でわった値で計算するとおよそ、0.878%となります。
●団体信用生命保険料
銀行は団体信用生命保険料をお客様の代わりに負担しています。
その統計は発表されていないので、発表されている機構団信を参考にしましょう。
HP上では、1000万円あたり35,800円(0.358%)となっています。
そうすると、儲けどころか赤字となってしまうことがわかります。
0.82%-(0.358%+0.878%)=▲0.416%
このように、銀行は自分の利鞘(リザヤ)が赤字になるのにもかかわらず、貸していることがわかる。
本書に書かれているように、調達コストに利益をのっけて貸出していないという事実が判明するのだ。
ただ、現場ではそのような認識がないようだ。
何人かヒアリングしてみたが、数字の検証をしても「そんなことはない」の一点張りだった。
本部セクションの人にヒアリングしてみると、「それは聞かないで」と、苦しそうにいうのだ。
また、どうして赤字金利にするのか、と理由を聞くと、回答は以下のようなものでした。
・競争上、金利を下げざるを得ない
・融資先がない
・BIS規制上、住宅ローンは有利だから
つまり、本来は変動金利は2.475%でなければ採算がとりにくいが、資金運用(貸出や投資)を、安全性と採算性を同時に追求しようとすると、住宅ローンを低金利で貸すという決断をせざるを得ない、ということだ。
最近の金利動向を見ても、変動金利の変化幅がもっとも小さく、優遇金利幅は年々拡大する傾向になることから、変動金利が相対的にもっとも金利が抑えられていることがわかる。
ちなみに、全員に0.875%で貸しているわけではない、という。
それは、借入希望者の個人属性や取引条件などにより総合的に判断しているからだそうだ。
優遇金利がないとみずほ銀行の変動金利の基準金利は、2.475%だ。
2.475%-(0.055%+0.358%+0.878%)=1.184%
大幅な黒字となるので、このような貸出なら是非、伸ばしたいと願っているようだ。
ここで気をつけなければいけないのが、この優遇がいつまで継続するか、という点である。
まずは、銀行がこの制度をどこまで継続する予定かどうかだ。
本部の人間もここまでは答えてくれないので、推測するしかない。
現状をみると、フラット35の優良住宅支援制度(いわゆるS)が復活したこともあり、その対抗上、銀行は変動金利または比較的短期の固定金利を低い水準に維持する政策に、当面大きな変更はなさそうだ。
これも一種の我慢比べなのだろう。
現状の低金利の継続が見込まれるため、運用金利が上昇しない限り、大きな変化は期待できないかもしれない。
ただ、ツイッターで野村證券が破綻だと炎上していて、野村證券が事実無根だ、訴えてやるなどといっているらしい。
一昔前なら、野村證券の破綻なんていう噂は、出た瞬間に無視されるくらいだったと思うが、時代はどんどん変化しているのを感じる。
次に、利用者にとってこの優遇がいつまで継続するかどうかだが、これについては気になる点がある。
ホームページ上は、全期間優遇を適用すると記載されていますが、そのページの最後の方に以下のような記載もあります。
●金利プラン適用の中止について
全期間重視プラン」をお選びいただき、金利プラン適用期間中にご返済の滞りなどが発生した場合には、金利引き下げの適用を中止いたします。
つまり、返済遅延があるといきなり、2.475%になってしまうのだ!!
実際に返済を遅延すると、通常は1年以上は借換などができなくなってしまい、毎月返済額が2万円くらい上がったという相談がいくつか来ています。
情報を正確に理解した上で、決断をすることが重要だと痛感する。